アルト特集・その4


約半年ぶりの特集です。 最近、スポールディングの新譜を聴いてみて、ふとキャノンボール関係のアルバムに興味が涌きました。 ちょうどネタ切れの折り、渡りに船とばかりに採り上げてみましたが...しかし、何のヒネリもありませんなあ...。


Julian "Cannonball" Adderley

Nippon Soul
Riverside (Recorded July 14 - 15, 1963)
- Julian "Cannonball" Adderley(as) Nat Adderley(cor) Yusef Lateef(fl,ts,oboe) Joe Zawinul(p)
Sam Jones(b) Louis Hayes -
1.Nippon Soul(Nihon no Soul) 2.Easy to Love 3.The Weaver 4.Tengo Tango 5.Come Sunday
6.Brother John 7.Work Song

まずは素晴らしい(?)オリエンタルなジャケに見惚れてしまうアルバムです。 さて、ファンキー路線で持ち味を発揮する兄ですが、O・ペティフォードの度肝を抜いた有名な武勇伝からも想像できるように、ハードな演奏もお手の物です。 さすが恐怖の乱入野朗。 当盤では(2)でその片鱗を垣間見ることができますね。 この演奏を聴くと当時の情景が目に浮かぶようです。 しかも単なる垂れ流しに終わらない、良く唄うソロが圧巻! 高音域でのザラついた音色などは彼独特のもので、ファンキーな節回しと共に強烈な個性を主張しています。 この時代のアダレイ兄弟ユニットは、若き日のザヴィヌルやラティーフ参加でかなり意欲的なサウンドの曲が多いのですが、アダレイ兄弟だけはマイ・ペースなソロ。 微笑ましいですね。 ちなみに(7)はCD追加トラックで、同時期の日本ツアー中の音源。


Vincent Herring

The Old Country / Nat Adderley Quintet
Alfa (Recorded December 5-6, 1990)
- Vincent Herring(as) Nat Adderley(cor) Rob Bargad(p) James Genus(b) Billy Drummond(ds) -
1.The Old Country 2.Bohemia After Dark 3.Jeannie 4.Almost Always 5.Love for Sale 6.One for Daddy O
7.Stella by Starlight 8.The Chant 9.Nippon Soul

自ら「キャノンボールがアイドル」と主張し、ナットのクインテットにまで参加した、ヴィンセント・ハーリング。 さすがキャノンボールのレパートリーを全てマスターしただけあって、節回しなんかはニヤリとするような所が多々ありますね。 しかし、ファンキー度を押さえた知的なフレーズや、グロー・トーンを使った様なザラついた表現に個性が見られます。 さて、当盤はナットのレギュラー・クインテットということもあって、キャノンボール・トゥリビュート的な選曲ですが、ヴィンセントの熱気溢れるソロが随所で楽しめます。 (7)などのバラードでも、表現はかなりハードで好感が持てます。 楽曲面でも名バラード(4)を残すなど、これからが楽しみな逸材ですね。 今後密かに大化けするのではないか、と期待しているアルティストなのですが...。


James Spaulding

Escapade
High Note (Recorded April 28, 1999)
- James Spaulding(as,fl,bfl) Don Sickler(tp,fh) John Hicks(p) Ray Dorummond(b) Kenny Washington(ds) -
1.Escapade 2.Cheesecake 3.Warm Valley 4.Madeline 5.Just One of Those Things 6.Grant's Tune 7.High Modes
8.Break Through 9.It Could Happen to You 10.La Mesha

2000年に入って、いきなり発売されたこの新譜には驚きました。 まだ現役で演奏していたのですね。 この新作はスタンダード集的なアルバムなのですが、モブレイやデックスなどの渋いジャズメン・オリジナル中心なのが泣かせます。 このアルバムの(個人的な)ハイライトは、キャノンボール物真似大会のような(5)です。 節回しや音色などかなり細かいディテールまでアダレイ兄に似ており、この歳で他人そっくりにブローしまくる姿は、鬼気迫るものがありますね。 何が彼をそうさせたのでしょうか。 (1)(4)(6)(7)(10)はフルートの持ち替えで、益々フルートの比重が大きくなっていますが、もしかしてアルトは余興でフルートで勝負しようとしているのでしょうか。 そう言えばバップ・イディオムのアルトより、フルートの表現の方がより深いものになっていますね。 新主流派の生証人として、これからも活躍して欲しいものです。


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ジャケット写真は、アルバム紹介を目的に掲載しております。 何とぞご理解下さい。

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