■毎日新聞 2006年8月1日 東京朝刊
水戸済生会総合病院の心臓手術問題:両親ら会見「医師能力分かる基準を」
◇ロス手術で18歳死亡
水戸済生会総合病院(水戸市)で04年7月、茨城県鉾田市、プロパンガス販売業、石津洋さん(51)の長男で私立高校生、石津圭一郎さん(当時18歳)が難度の高い心臓手術(ロス手術)を受けた後、多臓器不全で亡くなった問題で両親と弁護団が31日、厚生労働省で会見し医師の能力が分かる基準づくりを訴えた。
弁護団によると、高度な技術がいるロス手術は国内で年間数十例実施。しかし、執刀した心臓外科の男性医師(44)は自ら手術するのは2例目であることを本人や家族に告げなかった。圭一郎さんは、通常の手術で対応できる状況だったという。
洋さんは「手術前の説明で『米国で20〜30人のロス手術をしてきた』と自慢げに話していた。医師は患者に経験を明らかにしてほしい」と話した。
圭一郎さんは04年7月26日、先天性大動脈弁閉鎖不全症の治療でロス手術を受けたが2日後に死亡した。茨城県警が委嘱した専門家から「執刀医の経験不足で引き起こされた」との意見書が出ており、茨城県警が業務上過失致死の疑いで調べている。【北川仁士】
◇病院側は過失否定
水戸済生会総合病院の早野信也院長ら4人が31日、同病院で会見。「手術について、インフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)は十分に行っていた。手術の操作、手順に誤りはなかったと思う」と過失を否定した。
早野院長らによると、病院側は執刀医が、本人の正常な肺動脈弁を大動脈弁に移植などする「ロス手術」と、大動脈弁に人工弁を取り付ける一般的な手術の二つを提示、それぞれの長所と短所を説明し、家族側がロス手術を希望したと主張した。ただ、執刀医が2例目の執刀であることについては「説明していないかもしれない」と言葉を濁した。【三木幸治】
■毎日新聞 2006年3月30日 12時13分
自賠責訴訟:公的基準以上でも支払い義務 最高裁初判断
交通事故の被害者が、自動車賠償責任保険(自賠責)の公的支払い基準を超える賠償額の支払いを損害保険会社に求めた訴訟の上告審判決が30日、最高裁第1小法廷(横尾和子裁判長)であった。会社側は「基準超過分の支払い義務はない」と主張したが、判決は「基準を超えていても裁判で認定された賠償額を支払う義務がある」との初判断を示し、会社側の上告を棄却した。訴訟による被害者の救済が進みそうだ。
自賠責は被害者への賠償を保険で保障する制度。国が車の保有者に加入を義務づけている。死亡事故の場合、被害者1人に付き3000万円までの保険金が支払われる。金額が不公平にならないように、01年の自賠責法改正に基づき、金融庁などの告示で逸失利益の算出法や慰謝料額などの支払い基準が定められた。
原告は03年に盛岡市内で車にはねられて亡くなった女性(当時79歳)の遺族。加害者と自賠責契約を結んでいた損保会社から、基準に従い約1800万円を受領したが、「上限の3000万円まで支払い義務を負う」と主張して約1200万円の賠償を求めた。
会社側は「既に基準額を支払い済みで、裁判所は基準を超す支払いを命じることは出来ない」と争った。しかし、第1小法廷は「支払い基準は訴訟外で保険会社が従うべき基準に過ぎず、裁判所は独自に賠償額を算定して支払いを命じることが出来る」と述べた。女性側の損害額を約2100万円と認定し、基準額との差額約300万円の支払いを命じた1、2審判決が確定した。【木戸哲】
■毎日新聞 2006年3月11日 東京朝刊
医療事故:再発防止、病院の強制調査も医師法改正、行政処分を強化−厚労省方針
繰り返される医療事故を防ぐため、厚生労働省は医師や歯科医師に対する行政処分を強化する抜本的な体制整備に乗り出す。医師法などを改正し、これまで任意で行ってきた医師への聴取やカルテなどの提出、医療機関への立ち入りを強制的にできるようにする。拒否すれば50万円以下の罰金を科す。行政処分を担当する専門職員を全国の主要都市に配置し、処分の迅速化も図る。処分を受けた医師らに行う再教育制度の対象には薬剤師も追加し、医療にかかわる6業種すべてで再発防止に取り組む。07年度以降に順次導入する。【玉木達也】
厚労省はこれまで刑事事件で有罪が確定したケースなどに限って医師らを処分してきたが、02年12月に民事裁判で過失が認められたケースも処分対象とする方針を決定。05年3月、旧富士見産婦人科病院事件で元院長の免許を取り消す処分などを行い、初適用した。
同省には医師らの処分を求める申し立てがこれまでに80件寄せられているが、処分にこぎつけたのは富士見事件を含め3件だけ。残りは調査中が20件、取り下げなど6件で、51件は手がついていない。現行法では調査に対象者の同意が必要な上、担当の職員も少ないためだ。
厚労省は今国会で医師法と歯科医師法を改正し、任意調査から強制調査に切り替える。さらに改正法の施行を予定している07年度からは厚労省本省の担当職員を増員するとともに、全国の地方厚生局(7局1支局)にも医師資格を持った担当職員を順次配置する。
一方、行政処分後の再教育については、すでに医師と歯科医師、看護師、保健師、助産師への導入が決まっていたが、さらに薬剤師法を改正して薬剤師も対象に加えることにした。現在、同省内だけで決めている薬剤師への行政処分を、医師らと同様に厚労相の諮問機関・医道審議会の答申を受けて決める方法に変更、強制調査もできるようにする。薬剤師関連の改正は08年度の実施を目指す。
さらに、厚労省は免許取り消しと医業停止の二つしかなかった行政処分に、新たに医業停止を伴わない「戒告」を追加。ミスを繰り返す「リピーター医師」などを積極的に処分して再教育を進める。同省は、処分結果の公表によって問題医師の情報公開につながるとみている。
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■ことば
◇医道審議会
1948年に設置。医師と歯科医師の処分は同審議会医道分科会が担当する。分科会は日本医師会長と日本歯科医師会長に学識経験者8人を加えた委員10人で構成される。学識経験者の任期は2年。厚生労働相は医師法と歯科医師法により、医師と歯科医師の免許取り消しや医業停止処分を決める際、委員の意見を聞くことを義務づけられている。
■共同通信 2005年11月2日11時57分更新
献血で健康被害、5万人超 治療費支払いの制度化検討
2004年度に献血した延べ約540万人のうち、めまいを起こしたり、気分が悪くなったりした人が5万6500人余りに上っていることが2日、厚生労働省の献血に関する懇談会で報告された。
治療が必要とされ医療費や交通費を受け取った人は802人いることも判明。厚労省は、これまで各地の血液センターが独自の判断で支払っていた医療費や見舞金を見直し、制度化することを検討している。
医療費や交通費を受け取った802人のうち最も多かったのは、採血時の神経損傷で29%。次いで皮下出血が17%だった。続いて、採血への不安や緊張が引き金になってめまいや意識不明に襲われる血管迷走神経反応(VVR)が12%。VVRによる転倒が15%。採血針でけがをして筋肉が委縮する難治性の反射性交感神経性委縮症(RSD)も1%あった。
入院が必要だったのは6人で、通院が780人だった。