■82:アメリカの正義
アメリカとはつくづくおかしな国だ。いや、これは勿論アメリカに追従してヘイコラしている日本だって言えた義理ではないのだが、それを承知で敢えて言おう。アメリカはおかしい、と。そもそも、アメリカは建国からしてまともなものではなかった。アメリカ人(そんな人種はないが)の大半はヨーロッパから移住してきた人間である。いや、移住と言えば聞こえはいいのだが、つまり先住民を駆逐(「アメリカ人」に言わせればゲットー(先住民居留地)に隔離)して、他人の土地を我が物顔で開拓していったのが彼らの先祖である。だからアメリカに歴史はない。彼らは自分の歴史を本国に置いてきたからだ。彼らは自分の国を開拓者精神(フロンティアスピリット)に溢れた国、と言うが、その「開拓」は実のところインディアン(ネイティブアメリカン)を蹂躙し、自分の領地を広げていった「侵略」に他ならない。
話はそれるがインディアンという言葉も失礼な話で、昔にアメリカをインドと勘違いした開拓者が彼らを「インド人(インディアン)」と言い始めたのが始まりで、明らかな間違いだ。その為最近ではインディアンのことを「ネイティブアメリカン(アメリカ先住民)」と呼ぶようになったが、「アメリカ」という言葉も探検家のアメリゴ=ベスプッチからとったものだから結局失礼な話だ(もっとも彼らは数多くの部族に分かれていたため彼らに統一された呼び名も存在しないし、アメリカ大陸に名前を付けたりはしなかったのでこういうしかないのだが)。
そういう訳で建国の経緯からして「正当でない」アメリカは何を正義としてきたか? 彼らは勝つことを正義としてきた。それを貫くことでアメリカという国を維持してきた。貧富の差が激しい(富裕階級が全体の1%)アメリカがアレだけの大国を今まで維持できたのは、その都度「アメリカの敵」を設定し、その敵を倒すことに愛国精神を傾けさせ、アメリカがそのために存在すると国民に信じさせてきたからだ。アメリカが世界の警察と呼ばれるのはアメリカがいつも正しかったからではなく、アメリカがいつでも勝利してきたからだ。太平洋戦争では日本はアメリカと戦ったが、実際のところ勝敗は原爆を落とされる以前についていた。ついぞ日本はアメリカ本国に上陸できなかったが、日本は数多くの都市が焼け野原にされていた。日本の暗号は戦時中に新しく開発されたものを含めて全てアメリカに解読されていたし、日本は資源的にも経済的にもすでにそこをついた状態だった。日本が負けることを覚悟していた兵隊も少なくなかった。アメリカの言い分では原爆を落とさなければ日本は降伏しなかったというが、もう勝敗はすでに決していたのが歴史的な事実だ。それでも原爆を落とさなければいけなかったのは、原爆でまだ実地実験を行ったことがなかったからだ。そのため原子爆弾と水素爆弾の二種類が日本には落とされたのだ。アメリカは日本の一般民衆の命を数多く奪っておいて、それを忘れたかのように、テロで尊い犠牲が奪われました、などと言う。ワールドトレードセンターのことを「Ground-Zero」などと呼んでいるが、元々「Ground-Zero(零地点)」とは核爆弾の爆心地をさす言葉であり、つまりそれは長崎と広島のことに他ならない。
私はテロを善いことだとは思わない。当たり前だ。他に方法があるのなら、人の命を奪わない方法を選ぶべきだし、何より人命と法は守らねばならないものだ。だが、のっぴきならぬ状況というのは確かに存在する。圧政に苦しむ者に不利な法が執行され、人民の意思が全く国政に反映されていなかったら? 家族や仲間は次々と蹂躙され殺されていく中で、支配者にそれが正義だとのたまわれたら? イスラエルなどはテロをきっかけに独立、建国した国だ。おいそれとは結論しかねるが用意された状況が完全に悪ならば、正義を執行する手段は絶対に善でなくてはならないとはいえないという事だ。彼らはテロを悪だと断定するが、では彼らの正義を正義だと断定するのは誰なのか?