■現代百鬼夜行
 私の小さかった頃は、近所をよく妖怪さんたちが歩いていたものだ。商店街界隈をのたのたと練り歩くだけで何もしないぬっぺ坊、木のぶら下がって人が通るとパカーンをけりあげる「さがり」、夜中に便所に行くとホトトギスの鳴きまねをして驚かす「頑張り入道」。彼等はいなくなってしまったのだろうか? いや、そんなはずはない。今も都市の生活に息づいた新種の妖怪たちが我々を驚かそうとてぐすね引いて待っているのだ。私が見つけたそんな妖怪たちを皆さんに紹介しようと思う。

@シタカ=ブーリー
 彼等は人間の中に潜んで、いかにもアナタの友人のようなフリをして近づき、まったく根拠のない話をアナタに吹き込む妖怪だ。「スターバックスっていうのは元々フィラデルフィアにある港の名前で、そこでは今でも人魚伝説が息づいているらしいよ」だの、「肉離れっていうのは肉が意思を持って勝手に体から分離してヒョコヒョコ歩き出す恐ろしい病気なんだ。治療法は今のところ発見されてないんだ」だとか、おおよそありえそうもない話をでっち上げる。あまりにも真剣な顔をして話すものだからといってこれを信じ込んで友達に話すと、手痛い目に会うのだ。それをシタカ=ブーリーは影から見ていてほくそえむ訳だ。いつもは人間に化けているが、話を流されると、尻尾を出して怒る。弱気なシタカ=ブーリーに至ってはいじけ出すので始末に終えない。

Aスカー
 スカーは電車を住処としている妖怪だ。ちょっと見人間のように見えるが、実は背中に本物の口や目がついているという。電車を住処にしてるからといって、どこかに行くあてがあるのではなく。ただ席に座っているだけのおとなしい妖怪だ。時々「スカー、スカー」とか「モウノメナイーノメナイー」と鳴く。害はないが、スカーがいる分席が減るので、通勤客などからは嫌がられている。電車が駅につくと立つ素振りを見せて前に立っている人をぬか喜びさせるのが好きなスカーもいるらしい。何故か、端っこの席が大好きなようだが、彼等なりのテリトリーがあるらしく。スカー同士はあまりくっつかないで生活している。

Bコソバー=ユイン
 いたるところに現われる妖怪で。人の体温が好きらしく、よく人が生活するところにどこからともなく現われる。どうも、大気中を舞うほこりやチリが意思を持ったいわゆる付喪神(つくもがみ) の一種らしい。真剣に仕事をしている人などの背中に接近してサワサワする。虫でも止まったかなと思って背中をなでまわしても何もいないときや、どうにもこうにも背中が痒くて勉強が身につかないなどの現象は、コソバー=ユインの仕業だ。孫の手をかざすと逃げていく。

C小人さん
 小人さんはコロボックルやゴブリン、コボルトといった小人族の末裔だ。彼等はこの頃人間のせいで住処を追われて憤慨しているそうだが、小人によっては都市の生活に溶け込んでいる者もいる。例えば、ウィリアム=ゲイツ氏(通称ビル=ゲイツ氏)はああ見えて実は偉大な魔導師で、彼の会社のパソコンには一台につき一人「小人さん」が入っている。彼等はゲイツを尊敬しているので無償でボランティア活動をしているわけだ。たまに止まっちゃうパソコンがあるが、そういった場合は「ゲイツに言いつけるぞ!」と怒鳴ると、我に返ったかのように処理速度が上がる。
 他にも漫画家や小説家が寝ている間に原稿を書いてくれる小人さん、頼んでもいないのに軟骨のから揚げにレモン汁をたらしちゃう小人さん、頼んでもいないのに歩いている人のチャックを下げてくれる小人さんなどがいる。ありがた迷惑だが、そういった小人さんにお礼を言っておけば、翌日には家の玄関の前にミミズの燻製を置いていってくれる。