オペアン プの音質比較

          
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オペアンプとは
 オペアンプ (op-amp[ɒpamp]: operational amplifier) は増幅回路(アンプ)としてだけでなく、 様々な用途に使える汎用のモジュール IC ですが(ここでは ICオペアンプの意味に限定しています)、オーディオ機器のアナログ信号に影響を与える部分にも色々な形で使われており、これを取り替えることで音質を変 化させることができます。専用のソ ケット台をあらかじめ基板に取り付けておくと、ただ差すだけで簡単に本体交換ができるようになるので、ヘッドフォン アンプのマニアたちの間でここ をいじることが流行ったりしていますが、コ ンデンサーや抵抗などと同様、どんなオーディオ回路でも部品を換えれば音が変わります。いくつかのメーカーからたくさんの種類が出ていますので、オペアン プ 交換はひとつの楽しい遊びたり得るところです。
 また、アナログのアンプとしての使用例は前述したヘッドフォンアンプ、プリアンプ、CD プレーヤーや DA コンバータの出力調整部などに見られますが、パワーアンプのように大きな増幅率が必要とされるところには使えません。
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  オ ペアンプを簡単に差し替えられるようにするソケット(ボディ左側の半円の切り欠きがある側の手前端が1番ピン)

オペアン プの規格
 オペアンプの規格としては、回路の違いで大きく分けて2種類あります。1回路入りと、2回路入りです。同じものが 一つのパッケージに2つ入って いるか、1個だけかの 違いですが、ピンの互換性はありません。そして厳密に言えば、たとえ同じ1回路入りのものであっても個々のオペアンプには特性の違いがあり、回路の電圧・ 電流などの規格によって適用できる範囲に制限と相性があります が、おおむね1回路入りの回路には1回路入りのオペアンプをどれでも差すことができ、2回路入りは2回路入りで同じように互換性があります。さらに、1回 路入りのタイプも二つ横に並べて(あるいは裏表にして)専用の変換基板に取り付けると、2回路 用として使うことができます。いじくり屋が考案したアダプターのようなもので、基板の方にピンが出ていて、2回路用のソケットが付けてあるところに そのまま差し 込めばいいのです。
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  1回路入りのオペアンプを2回路入りとして使うための変換基板/右側は裏表にSOPタイプのオペ アンプを取り付けるもの

オペアンプは音が悪い?
 アンプの歴史を振り返ると、真空管の時代があり、トランジスタの時代が来て、そしてアポロの月着陸のおかげでこう した小さな IC パッケージの中に詰め込まれた既製品のオペアンプを使う時代が来たわけですが、オーディオ・ファイルの間では IC オペアンプは音が悪いという人がいます。オペ アンプを使わず、昔ながらに真空管で組んであったり、基板の上にトランジスタや抵抗、コンデンサーなどを並べて作る 回路を「ディスクリート
(個別の、の意)」と言 いますが、ディスクリートでないとだめだといって、オペアンプが付いていたところにそのまま差し替えられるようにした数センチ四方の交換基板を 売っているところもあります。ただ、個人的な意見ですが、よく選んで使えばオペアンプの音が明らかに悪いとは感じま せん。ハイエンドの商品にもオ ペアンプは使われていますし、ハイエンドが音がいいかどうかはともかくとして、マーク・レヴィンソンが100万を超えるようなプリアンプを出して 驚かれたときも、蓋を開けると中は IC がいくつか入ったモジュールがポンポンと並んでいるだけで、ほとんどがらんどうに近い様子だったという逸話もあります。

今回の実験に使った回路

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 ここでは、私が愛用している80年代のCDプレーヤーで積分型DACを積んだONKYOの名機、C-700 のアナログ基板に使われているオペアンプを取り替えてみることで音の違いを検分してみたいと思います。

 C-700 のオペアンプはアナログ基板上で信号系に三種類、ステレオで合計6個使われています。まず JRC の 082D という2回路のものが最初にサンプルホールド回路用に使われ、次に同じく JRC の NJM5534DD (1回路)がディエンファシス回路用に、最後に NJM4558DX (2回路)がラインアンプ部分に使用されています。最初の2つは MUSE を使ったりオリジナルのままにしたりでいい結果が得られますが、4558 の付いているところは色々差し替えて試してみるのに最適です。どの回路も、たとえディジタル部分であってさえ、部品というものは等しく音質に影響を与えま すが、とりわけ終段のラインアンプの部分は帰還回路として使われており、ここのオペアンプを抜いても音が出なくなる わけではないながら、音質には 大きな影響を与えます。また、この回路の一部には電源のバイパス・コンデンサーとして片側 440μF (220×2)の ニチコンの電解コンデンサーが使われており、これがオペアンプに勝るとも劣らず音質に関係しています。そしてそれを オリジナルのままかブラックゲートの 両極性のものにすると、オペアンプもオリジナルの 4558DX が良いバランスになりますが、例えばFKタイプのブラックゲートにしたりするとまた違ってくるわけです。今回は 470μF の FK を片側2つずつにして実験に臨みました。以下に聞いてみた感じをレポートしますが、部品単体でこういう音、ということは常に言い難いものです。どんな回路 に使うかでガラッと性質が変わるからです。くどいようですが、たとえば近くにある電解コンデンサー、フィルムコンデ ンサーひとつを換えただけで今までA のオペアンプが良かったものが、Bの方がバランス良くなったりするのです。したがってここでの評価はあくまでもここでのものでしかないことをお断 りしておきます。同じ回路上で比較しているので相対的には個々の傾向が出ているかもしれないですが、もちろん主観的 なものでしかありません。ま た、個人的にはスペックと音質が直結するとは思っていないので、スルーレイトやセトリング・タイムがどのくらい、残留雑音が何 dB というようなことはメーカーの出しているデータシートか詳しいサイトを参照してください。



音の印象(各社別)

テキサ ス・インスツルメンツ


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OPA604 / 2604 

 バーブラウン時代に開発された、内部がすべてFET(通常はバイポーラ[トランジスタ])で構成されたオペアンプ で、1回路用が 604、2回路用が 2604 です。音質の傾向はどちらも似ているような気がしますが、このオペアンプ・シリーズのみ他のものと比べてちょっと違っているようです。帯域バランスでいう とかなり低域寄りであり、高い方の音は質は良いながら量的に少ないように感じます。どっしりとした低音に張りと圧力 感のある中域が乗っているよう に聞こえることが多く、ハイ上がりになってしまった回路でバランスを取るときに重宝します。


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OPA627AP 

 高級オーディオのマーク・レヴィンソンが使ったということで神話にすらなった FET 入力(入力部のみ FET)の有名なオペアンプで、604 同様バーブラウン時代の代表的なものです。これだけが価格的に非常に高く、1回路用しかないために、2回路用としてステレオで使うには4つ必要になってお いそれとは導入できないですが、信頼性が求められる医療機器にも使われるのだそうです。格が違うという意見もありま すが、コスト・パフォーマンス を度外視すれば、スペックの良さに惑わされずに音だけ聞いた場合でも確かに優れたところはあると思います。低音は 604 同様どっしりとしており、中域の厚みもあります。バランス的には高級アンプにはめずらしくあまりハイ上がりにならないもので、それでいて高域の繊細さ、情 報量の多さは 604 よりあります。その高域の表情は過度に艶がつくところがなく、かといってサラサラ、シャラシャラした傾向もなく、MUSE01 などと比べるとややソリッドな、カチッとした芯を感じるときがあります。褒めたいわけでもないのですが、ひとことで 言えば解像度がありながら奥行きを感じ る、とすることもできるかもしれません。しかしそれこそが、子音が強調されて細かな音が全部前へ拾い出されてくるようなクッキリサウンドを良い音 の指標だと考えるオーディオ愛好家の間では「クセのある引っ込んだ音」あるいは「バーブラウン臭」などと表現される 原因になっているのではないか と推測します。今回は2回路変換基板上で2個とも 627 にするとキツい音に感じました。このオペアンプは一見ちょっと引っ込んだ音に聞こえていながら、実は結構中域にエネルギーの張った、しかもちょっと硬いと ころを隠し持っているのではないでしょうか。「引っ込んだ」と「硬くてキツい」は同じことをどっちから見るかの違い であって、物腰がやわらかで頑固な紳士同様、敵味方が分かれます。それは独特な個性ではありますが、ブラックゲート のコンデンサーにも同じようにエネルギー を強く感じさせるところがあるためか、今回ここではあまり良い結果になりませんでした。つまり、いつでも品格のある音だとは言えないということでしょう。

 末尾がAPとなっているものは標準品で、BPは選別品のため高価です。さらにプラスチック封入のボディではなく、 金属の缶の中に入れられたミリ タリー・グレードの究極 バージョンもあります。通常の DIP タイプではなく、小型で表面実装基盤用の SOP タイプもあり、熱の点では不利ながら変換用の両面基盤に裏表で 取り付けて使えば2回路用としても狭い基板上で交換可能です。また、BP の DIP だったか、一時期中国製の偽物が出回ったようですが、最近は AP に限っては値段もこなれてきたようで、変なものをつかむ危険性も少なくなっていると思います。本社機能が中国にはない大手のディストリビューターから新品 で買えば安心です。


 そしてもう一つの特徴としては、音が安定するまでに大変時間がかかるということがあります。どんな機器でもそうで すが、新品で取り付けた最初は 寝ぼけた音、それがこのオペアンプの場合は中域が張らずに高域の硬さもなく、雄大な低音とハイエンドの繊細な感じがありながら艶のない音に変わ り、それから三番目に高域が 固まってきてハイ上がりのうるさく感じる時期を経過して、やっと本来のバランスになる四段ロケットのようでした。その間、毎日長時間鳴らして数週 間かかりました。高かったからここまでがんばれた、のかもしれません。



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OPA211
 これも非常にスペックの良いバイポーラ入力の新しいオペアンプです。音質はちょっと個性があり、自分の試した回路 では中域に張り出しとエネル ギー感があって、音が前へ出てくるダイナミックな感じになりました。高域もよく出ているながらちょっとキツめな色があり、繊細で細やかというのと は方向が違うようです。低音はバランス的には出ていますが、OPA627 ほどピラミッド型ではない感じです。全体に線の細い音になり過ぎた回路ではバランスを取る際に有用です。また、ポップスやある種のジャズなどで明るい元気 な音を好む人には好まれるかもしれません。表面実装用の小型SOPタイプしかありません。1回路です。


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OPA827

 FET 入力で 627 より後発の改良型、かつ安価というものです。音は 627 ほどどっしりした低音ではではなく、帯域バランス的には若干上寄り、高域の表情は 627 より少しはっきりしているように聞こえました。中域はむしろ 627 の方が張り出しており、ときに圧力感を感じます。表面実装用の小型SOPタイプで1回路入りです。


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THS4631D

 1回路の、これもハイ・スペックなオペアンプで、SOP タイプです。エネルギッシュでキツい感じがほとんどなく、硬くもないながらややハイ上がり、それもガラスのような艶と金属的な鳴きに関係する5〜7KHz 帯域よりは上の高域がやや強調されたような音がします。結果的に繊細で、若干線が細いながらときに滑らかに感じる瞬 間もあります。回路と使い方次 第で大変有用になるオペアンプだと思います。ただ、発熱は大きく、2回路用の両面基板に 乗せたりすると大変なのではないかと思います。発振を抑え るために出力側に 390pFや1000pF のスチロールコンデンサと 10〜11Ωの抵抗を入れてアース側に落とすフィルターを追加しましたが、発熱が大きいことには変わりがないようです。回路と合わないのか、初めに発振対 策をせ ずに発熱させたためか、ノイズが出るようになってしまった個体もあり、ちょっと使いにくいところもあるようです。


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NE5534 / 5532

 元は80年代にシグネティクス社で開発されたもので、このテキサス・インスツルメンツ (TI) 社製のもの以外にも日本の JRC からも同じ回路のものが出ています。5534 が1回路、5532 が2回路用です。音は個々に違いがあるようで、 TI のものは JRC のものよりも高域がはっきりしていて若干カチッとした表情を持っているように感じます。帯域バランスの観点ではオペアンプ全体の分布の中で割と平均的であ り、大きなクセは感じられません。スタンダードとして今もよく使われます。たとえば手元にある ESS9018 の DAC を使ったイースタン・エレクトリックの Minimax も真空管ステージにしないように切り替えるとこのオペアンプになってました。開発者が気に入ってるのだそうです。


新日本 無線(JRC)


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NJM4558DX

 2回路入です。ミサイルで有名なレイセオン社で開発されたオペアンプ元祖のような 4558 ですが、これは新日本無線製です。末尾が DX となっているのは選別品です。 今回試したのはボディ表面の樹脂に艶のある古いタイプで、世間では「艶有り」と言われるものです。艶有りと新しい艶なしとでは土台となるシリコン ウェハーチップ(ダイ)が異なるのだそうで、5534 などでは音が違いました。この艶有り選別品についてのみコメントするならば、帯域バランス的には高域をあまり欲張らず、柔らかくて余裕のある音がします。 新しいものがみなクッキリハッキリになりがちなので、こういう性質は大変有用です。高い方の音もときにちょっとだけ 弦にサラッとした色を感じることがあるものの大変素直で繊細であり、寝ぼけた高域というのとは違い、量的にはともか く質的にはしっかりしています。結果的にやわらかい音からエッジの立った高域の輪郭まで振幅が大きく、その意味では 最高のオペアンプと言えます。時代遅れで使い道がないというのは、歴史に詳しい人のバイアスのかかった意見ではない でしょうか。自分の C-700 では、電源のバイパスコンデンサーを少なくともあるもの(具体的にはブラックゲートの両極製)にしたときにはこれが一番良いバランスに聞こえました。C- 700 にオリジナルで付いていたのがこの 4558DX 艶有りなのですが、オリジナルのバイパスコンデンサーはニチコンの MUSE(両極性ではない緑色のパッケージの旧タイプ)で、その場合も 4558 はほど良いバランスでした。いかなる場合もこれが一番、という結果になるのが怖いです。ともかく、使い方次第でこれでなければならないという場合があり、 古いながら他には代え難い個性です。傑作なのではないでしょうか。


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MUSE01

 バーブラウン(TI) の OPA627 と並んで「高価かつ高性能」なオペアンプの代表です。スペックがどうこういうよりも、JRCが音を聞いて作ったとされる力作で、脚が無酸素銅だったりとい う構 造上の特徴もあります。01 は FET 入力、02 はバイポーラ入力ですが、今回は音の当たりがやわらか いと言われる 01 のみ比較してみました。価格の面で 627 とどうしても比べてしまうわけですが、こちらは2回路用であり、試聴では 627 の方を2回路用変換基盤に二つ差して臨むことになります。

 帯域バランス上では OPA627 同様あまりハイ上がりにはならず、どの帯域も特別に強調されるような感じがありません。しかし情報量は多く、はっきりもしています。この性格をひとことで 表現すれば「おとなしいけど高性能」といったところでしょうか。一番の特徴は 高域の表情の自然さかもしれません。繊細で細部をよく拾うながら、キツくなったり固まったり、変な艶が乗ったりしないようです。
OP42 との比較では甲乙つけがたいですが、42 の方が中域がやや厚く、響きがつくように感じることがあり、MUSE01 の方が高域がサラッと延びているように聞こえる場合があります。627 と比べてもどちらが良いかという結論は出しにくいですが、627 の方が弦の音が少し冷たくはっきりしているように感じるときがあり(「透明感」と表現する人もいるでしょう)、中域の張り(エネルギーの強い感じの中に ちょっと硬いところ)があります。一方今回の回路に 限って言えば、MUSE01の方が弦が固まらずに若干サラッとしているというか、シャンペンの泡のようにシュワーン とした感じが出やすいところが あります。一聴して自然に感じるのは MUSE01 の方ですが、OPA627 の方がオーディオ愛好家好みというのか、ハイファイなのかなと思わせるところはあります。それが最もよく現れるのは 今言った通りオーケストラなどで複数の ヴァイオリンが重なるところですが、その艶の出方は機器によっていつも違うところです。

 艶とは何でしょうか。通常楽器の音は基音とその整数倍の波 長を持つ倍音とから成る合成音なわけですが、倍音の部分がどういう割合で出ているかによって音色が変わり、艶と感じる部分もその成分のあり方に左 右されて出てくるわけです。そして多くの場合、我々がヴァイオリンの艶として聞いている音は、ある特定周波数の倍 音の部分が他よりも目立ってい る とき、言葉を換えれば、ある音域に反響があって他の周波数成分を圧倒している場合に艶と感じるようです。しかしこれはもしオーディオで言うなら ば、特定の色づけがあってある周波数のみ強調されており、その帯域で反応が悪く(容易に鳴り止まなく)なっているこ とを意味します。再生機器では 性能の悪さの指標のようなものが、楽器においては素晴らしい艶と感じる成分になるわけです。ということは、ある再生機器で艶を感じるという場合、 本来その楽器の音に艶があってそのように録音されており、それが正確に再生されるので艶を感じるケースと、オーディ オ装置の方に固有の色づけが あって、いつもその帯域に艶が乗ってしまっている場合とがあることになります。しかし問題は、録音現場を知らない我々としては、今聞 いている音の艶がどちらなのかわからないということです。その意味で、MUSE01のサラっと分解されたような優し い高域の艶と、OPA627 のややカチっとしたところのあるシャープな艶との間でどちらが原音に近いのか判断できないのです。個人的には MUSE ですが、要は回路との相性や好みで決めて行けば良いということでしょう。



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NJM5534DD

 1回路用です。2回路用は 5532 です。
4558 に対してこちらはシグネティクス社で開発された、これも古典的なオペアンプですが、テキサス・インスツルメンツも同じ型番を出しています。しかしこの新日 本無線の 5534 はハイ上がりにならず、硬くもならないおとなしい音で TI のものよりも個性があります。

 
今回は C-700 のディエンファシス回路にオリジナルで付いてきた古いダイの「艶有り」と呼ばれるタイプ(プラスチック・モールドの表面に艶がある/写真左)と、現在も売 られている新しい「艶なし」(表 面が梨地仕上げ/写真右)の両方を比べてみました。結果は艶有りの方が柔らかく、高域が強調されておらず、おとなしいながら繊細さがありました。艶なしの 方は回路によってはそちらの方が良い場合もあると思いますが、今回の実験ではわずかに高域にシャランとした強調倍音 を感じ、少々やかましく感じま した。硬質さという点では TI ほどではないのですが。時間が経つと違うかもしれませんが、C-700 のこの部分(3つ並んだ真ん中)は OP42 が唯一代替し得るものだったぐらいで、他はどのオペアンプに換えてもうるさくなり、結局この NJM5534DD 艶有りの方を継続使用することに決定しました。ハイスピード、などという言葉を好む人には情報量が少ないとかカマボコとか言われて嫌わ れるかもしれませ んが、決して情報量が少ないわけではなく、キラキラした音になり過ぎた回路には特効薬でしょう。4558DX 艶有りと並んで他にないやさしい個性です。その 4558 との関連で言うなら、2回路の 5532 が 4558 の改良版にあたるようですが、DD ではない 5534D 艶有りを変換基盤で2個遣いした場合との比較では、4558DX 艶有りの高域の方が若干シャープに感じました。インターネットでこの古い艶有りを高く売っている人もいるようで、一個売りのところをみると、どうやらギ ターアンプ関係の同好会があるようです。

 末尾の DD は選別品を表し、音が違うのだという人がいるので確認してみると、確かに若干違いがあるようです(艶 有りタイプの場合)。
DD の方が細部はよく拾うながらおとなし目に感じます。 D はややラフに聞こえる場合と、そこがかえって艶に感じられて DD よりも好ましく感じる場合があり、回路との相性によってその差が逆転吸収されてしまう範囲かもしれません。ディエンファシス回路では圧倒的に DD の方が良く、落ち着きと深みがあって細部が聞こえましたが、ラインアンプの部分では組み合わせるコンデンサーとの関係で、D の方が心地よい艶と弾力を感じる場合もありました。

ナ ショナル・セミコンダクター


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LME49710

 新しくて性能の良い1回路のオペアンプ。2回路用は 49720 です。クセのない音という世間の評価で期待したのですが、確かに帯域バランス的にどこかが強調されるということはありません。ただ、最近の高性能オペアン プに共通していますが、高域はかなりはっきりしています。リニア・テクノロジーの LT1028 ほどソリッドにカチッと固まる感じはなく、サラッとはしているのですが、輪郭が強く出ます。弦の艶の出方とキツさが好みではなかったので採用はしませんで したが、これがハマる回路もあることでしょう。


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LME49990

 49710 よりも後発で、このメーカーの最高スペックのように言われている1回路のオペアンプです。パッケージは基盤実装用の小型 SOP タイプしか出ていません。高性能ということで 49710 よりも鋭い音なのかと誰しも思うところですが、聞いた印象では逆で、高域にはっきり出過ぎる強調の傾向がなく、繊細でよく細部を拾うながらも自然な やわらかさすら出てきます。帯域バランスはわりとフラットに感じますが、ピラミッド型というようなどっしりしたもの ではなく、低音がちょっと軽い 感じもあります。スペック的には TI の OPA627 やリニア・テクノロジーの LT1028 あたりと比べられるところでしょうが、627 との比較では低域の量感は少なく、中域の張りも少なくて、高域の繊細さと情報量では甲乙つけがたいながら音色が大変違います。627 は一見ちょっと引っ込んだようでいてよく分解された高域を持っており、弦ではやや艶が抑えられているかのような表情 がありつつ芯にカチっとした硬質なキツさも若干感じられるという独特のバランスをしています。一方で 49990 はヴァイオリンの艶を現す高域の倍音部分(聴感的には8KHz 前後でしょうか)では、案外気持ちの良い艶が加わるように思います。しかし反響し過ぎてその帯域が固まったような痛い艶になるのではなく自然に聞こえるの で、オペアンプ固有の艶なのかソースの艶なのかがよくわかりません。合奏のフォルテではジャリッとした濁りが少なく てきれいです。単に量的に出てるか出てないかという意味では 627 よりも高域が若干張り出しているような聞こえ方なのですが、はっきりしてキツいという意味ではむしろ 627 より強いとは言えません。LT1028 との比較では、明らかに 49990 の方が高域の硬い艶が少ないように感じます。THS4631D とでは、49990 の方が量的にはハイ上がりの傾向が少なく、透明感(この表現は曖昧ですが)がある一方、
4631 の方が高い方の高域が張り出して いる分繊細に感じます(私にはうるさく聞こえます)。ただ、そんな 49990 ですが、両面基盤に裏表に取り付けて2回路用として聞いたときに艶の成分がややキツく感じる瞬間もありました。発振防止用のコンデンサーをシーメンスから フィリップスの PS に変えるとハイはやや引っ込み、いくぶん艶消しになりましたので、バランスをどう取るかが問 題のようです。

 このオペアンプは各社の高性能なものの中では OPA627 や MUSE01、OP42 などと並んでバランスが良く、魅力的でした。それぞれに個性がありますので、回路によって使い分けたり、組み合わせたりするといいと思います。今回 C-700 のアナログ基盤で試した結果としては、最終段となる2回路のラインアンプの部分で1回路アンプを2回路にする DIP 変換基盤を用い、横に二つ並べてソケットに差せるようにしておいて、入力側に NJM5534D 艶有りや OP42、出力側にLME49990 にしたときに
癖を目立たせな い、あるいはものは言いようですが、個性を引き立て合う組み合わせになりまし た。入力側と出力側のオペアンプでは、出力側の方がダイレクトにそのオペアン プの個性を出してくる傾向があるようです。回路上ではそちらの方がゲインを持ってもいます。こうして2回路用の前後ろで別のオペアンプを使うとい うのは電気特性的な相互の相性が問 題になりそうですが、結果的に音に満足できれば良いのだと思います。
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  発振を抑えるためにオペアンプ出力とGNDの間に1000pF前後のコンデンサーと10Ωの抵抗 を入 れて高周波を逃がすフィルター/ソケットの足に取り付けることで入れたり外したりが簡単にできるように工作 してみたもの(コンデンサーの銘柄違いで左からフィリップスPS、本国のシーメンス、富士通シーメンス、 シーメンスのケース入りKS)

 ただしこの 49990 も高周波での発振については気をつける必要があるかもしれません。THS4631D 同様 1000pF 前後のコンデンサと 10Ωの抵抗から成るフィルターを追加しましたが、高周波側の発振が可聴帯域まで影響し、ツイーターからまさに小鳥のさえずりのようなチュイーン というノイズが聞こえるときもあ りました。別の固体ではフィルターなしでうまく動作する場合もあるのでなんとも言えないのですが。また、そうした発振対策で使う素子も音にダイレクトに影 響しますので、さらに変数が増える厄介さがあります。コンデンサーにはドイツ本 国製のシーメンスのスチロールと、同じくシーメンスながらオレンジの四角いプラスチックケースにモールドされた KS の 390pF、富士通でライセンス生産した日本製のシーメンス、フィリップスの PS などを使ってみました が、音色ははっきり変わりました。オペアンプの性格を覆すほどに違ってしまうと言っていいでしょう。
 さて、そのコンデンサーですが、こういう用途では一般的に積層セラミックやマイカ・コンデンサーが使われるケース が多いと思います。スチロール・コンデ ンサーは現在も安定的に手に入るのは XICON ぐらいで、今回使用したのは手元にあった古いものなので参考にはならないかもしれませんが、個人的な意見としてはセラミックはうるさくなり、(シルバー ド)マイカはやや硬質なところがあって選択肢の上位には入れていません。今回使った中では最も高い方がはっきりした 感じになるのが富士通シーメンス、次にすっきり延びていながらややおとなしいのが本国のシーメンスで、両者は使う回 路の相性次第で甲乙つけられません。KS はハイエンドの延びはほどほどでややカッチリした艶が乗るため、ときにこれでなければいけないケースがあるという感じです。 フィリップスは高い方はほどほどでハイ上がり傾向にはなりにくいですが、硬質ではない艶を感じるときがあり、場合に よってはそれがうるさくなったり反対に色っぽく感じたりします。
 以上は製造中止になったスチロール・コンデンサーで すが、スチロールに変わって今主流になっている各種フィルムコンデンサーも後日色々試してみました。シーメンスの積 層フィルム、WIMA、ERO、Evox Rifa、国産のものなどの、ポリプロピレンとポリエステルです。これらフィルム・コンデンサーについてはポリエステルのものの方がバランスが良い場合が 多く、ポリプロピレンはそれよりも一桁性能がいいにもかかわらず、ハイ上がりのものもオフなものもともに、どこかの 帯域にちょっと強調を感じることが多いようです(スピーカーのネットワーク用などの箔巻きの大きいものの中には例外 もあります)。ERO の KP1830 は高域がオフでおとなしい感じ(エージングで多少減ります)のものが多いながら、容量によって中域のどこかにちょっと反響を感じる場合があります。 Evox Rifa は高い方が比較的延びていますが、やはりちょっと耳につく部分を感じます。ポリプロピレンとポリエステルの両方がラインナップされている WIMA もやはり、ポリエステルの MKS の方がバランスがとれているように聞こえます。いずれにしてもこれらポリ○○フィルム系はスチロールと比べると一段クオリティが落ちます。 バランスは個々に違いがあるものの、どこかくぐもっていながら固まってキツいところがあるのです。対してスチロー ル・コンデンサーは高域が素直に延びきって細かい音を拾うものの、反響してやかましくなる傾向が少ないと思います。 素子でこれほど音が変わるわけですから、オベアンプだけとりあげてもあまり意味がないのかもしれません。抵抗につい ても手元にあった同じ Dale の無誘導巻線抵抗ながら、厳密に言えば10Ωと11Ωでは音が違いました。1Ωばかりは設計上どうでもいいはずですが、値が問題なのではなく、同じ銘柄で も抵抗値が異 なると構造などの違いから音色が変わるのでしょう。
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リ ニア・テクノロジー


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LT1028
 リニア・テクノロジー社の1回路高性能オペアンプ。ナショナル・セミコンダクターの LME49710 同様、ハイ・スペックのオペアンプらしい、はっきりとした輪郭の音がします。ちょっと硬めで、金属的とまでは言わないものの固体を思わせる輝きのある高音 に特徴があると思います。回路によってはこれが良いバランスに聞こえる場合もあると思いますが、今回の回路では ちょっと無機的に思われたので使い ませんでした。ただ、最初のうちは結構やわらかい音がしていて段々にそうなったので、もっと時間をかけるとどうなるかはわかりません。


アナロ グ・デバイセズ


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OP275

 2回路入りのオペアンプです。バランスがいいです。過度に高域が強調されるような傾向はあり ませんし、帯域バランスも下の方からしっかりしていて、安心して使えます。押しが強いわけではないながら中域も厚く、高域にキラキラするような色も乗りま せんが、固まった艶を感じさせない分、回路や部品との組み合わせ次第ではちょっとコクのない弦の音になる場合もある ようです。OP42 や NJM5534DD 艶有りと比べてハイがすっきり延びたように感じるときがありますが、反対にハイ落ちに聞こえる回路もあります。素直でとりたてて強い個性はないだけに、私 はどこにでもまずこれを使ってみています。今回も、2回路入りのオペアンプでオリジナルの NJM4558DX 艶有りに置き換え得るのはこの OP275 だけでした。また、昔のマッキントッシュのカーステレオの終段にも使われており、 OPA2604の I/V 変換部と相まって艶と厚みのあるマッキンらしい音を演出していたのが印象的でした。


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OP42

 1回路入りの高性能オペアンプです。出てきたのは結構昔で、あまり話題にはされてないようですが、スルーレイト等 今なおスペックは最高の部類です。 NaimAudio の初代の旗艦 CD プレーヤーである CDS にも使われており、いい味を出していました。個人的には OPA627 より気に入っています。OP275 と比較するとよりハイファイな音ですが、やわらかさと独特の雰囲気があり、回路によって違う音に聞こえる二面性というのか、柔軟性というのか、ちょっと不 思議な性質 を持っています。したがって明確にこんな音、という表現が難しいのですが、ひとつ言えるのはやはりこれ見よがしな高 域強調には縁がないということです。 中域にやや反響が付くような気がするときもありますが、他の素子との組み合わせによります。OPA627 と比べると、もう少しおとなしい表情でコクがあり、いかにも高分解能のハイエンドだぞ、というはりきった音になりません。つまり
こちらの方がナチュラルに感じるのです。しか し細かい音は OP275 よりも拾っており、情報量という点では OP627 に負けているとは思えません。ときに回路によっては高域が細くなって輪郭が強調される場合もありましたが、たいていは逆にマイルドな印象を与えます。 TDA1541を使ったマランツの DA コンバータに入れてみて良い結果を得たこともあります。今回の回路では、入力 側に OPA627、出力側にこの OP42 を入れると相互に凸が 噛み合い、ちょっと太めで中域のエネルギー感があるながら、やかましくならないなかなかのバランスになりました。ま た、入力側 に OP42、出力側にLME49990 を持ってくるとそれよりは音が前に出ますが、当座の組み合 わせの中ではベストと言えるものになり、自然な艶が心地良いながら聞きやすく、見通しの良い音になりました。


組み合わせによる印 象
 C-700 で試す人もいないでしょうし、2回路用の変換基板上で別々の銘柄を使う人も少ないでしょうが、入力側→出力側の組み合わせで最終的に良かったのは下記の通 りでした。MUSE01は素晴らしいですが、前段で使ってしまったので、同じものをダブらせて固有の音色を強調した りし ないように今回はリストから除外しています。赤色が とくに良かった組み合わせです。赤の4つに関しては、曲や CD によって評価が逆転したりして、どれを採用するか は悩むところです。

 入力側→出力側
OPA627→OP42:
 ややオフなバランスながら、細部もほどよく出ている。エネ ルギー感もある。

NJM5534D
D艶有り→
OP42:
 
上 記同様あまり前へ出てくる音ではなく輝かしさもないながら、より硬さが少ない。ただし高音弦が地味でわくわ くするような透明感はない。

NJM5534D艶有り→LME49990
: 

 発振防止のコンデンサー(49990側)をフィリップスにしたとき、若干
き れいな艶がつくような気はするもののそこが魅力的で、
刺激性は少ないながら細部も拾う状態になった。OP42との組み合わせとバ ランス的には近いようだが、やや高域に色がある(エネルギーが強いという意味ではむしろ逆)。このフィリップスのま まで選別品の 5534DD に交換すると艶が後退し、細部は同等以上に出ている分やや細身になる感じがする。

NJM5534D
D艶有り →LME49990: 
 選別品のDDについては、コンデンサーをシーメンスにしたときに繊細さと情報量がありながらしなやかさも感じ られる良いバランスになった。
OP42→LME49990 より若干線の細さ がある。シーメンス+普及品の 5534Dだとわずかに高域にラフさと強調が感じ られる。シー メンスの方がハイが延びているためだろうと思う。

OPA604
→LME49990: 
 上記同様のバランスながら中域に厚みと力がある。高域も 5534 とより前へ出る。


OPA627→LME49990: 
 604 の太さがより繊細になり、フォルテできついときもあるが、室内楽などではかえってコントラストがついてリアルに聞こえることも。発振防止のコンデンサーを フィリップスにすると硬質さが少し減ったが賑やかさが出た。

OP42
→LME49990:  
 627 とのカップリングより自然でバランスが良い。
暫定で今回 試 みた中のベストか。49990 の個性か、独特のあでやかさがある。順序を逆にした LME49990→OP42 も悪くないが、それより高域がのびやか。それでいて音の重なりが濁らない。赤で書いた組み合わせの中では最も高い方の鮮やかさがある。

OP42
→THS4631D :  
 フィリップスのコンデンサーとではハイ上がり傾向が抑えられ、本来の繊細さとやわらかさが前に出て良いのだ が、一度発熱させてし まったせいか、今回はフィルターを追加してもノイズが出てしまった。素子の値や発振対策の回路を変えてみて安定させられれば良いのだが。

OP42→OPA827 :
 細部を聞かせるながらややおとなしいバランスの OP42 の個性と、627 より中域のはっきりした主張が少なく、高域があっさりしている 827 の個性が合わさって、ほどよいバランスになった。LME49990 との組み合わせの方が高い方の細かいところを若干多く拾うようにも思うが、好みの範囲かもしれない。

 2 回路入の単品、もしくは1回路オペアンプを同じ銘柄2つで良かった のは:
NJM4558DX艶有り: 
 回路に元々ついていたもの。自然でバランスがとれている。オンとオフのコントラストも。色々聞いた結果結局元のま まがいいということになると今までの努力はいったい何だったのだろうということになるのだが、正直なところ案外この 古いオペアンプが一番いいのかもしれない。4558 と言えば IC オペアンプの歴史がここから始まったという古典的なもの、ということは、音質の面では別段たいした進歩はないということか。それとも、個々のスペックを良 くすることで引き換えに失うものがあるのか。

OP275: 
 2回路入りで唯一オリジナルの 4558 とそのまま交換可能なバランスを持っている。4558 の方がほんの少し中低域に厚みがあり、コントラストが出るようにも聞こえる。また、下記 OP42 同士の組み合わせよりわずかに高域にサラッとした色があるように感じられ、その分ほんの少しハイに重心が移ったかなという印象。


OP42
OP42: 
 発振対策も必要なく、オリジナルの 4558 同様にバランスが良い。OP275よりさらに 4558
のバランスに近く、違いを説明するのは難しいのだが、4558 より中低域が厚いのか、より太くて穏やかな当たりに感じながら、高い方の細部はほぼ同等に出ているという感じ。また、OP275 の方が高域寄りな感じだと上に書いたが、細かい音は 275 以上に拾っているようにも聞こ え、分解能が上回るのかもしれないと思わせる。この三者を評するのは体調が良くないと難しい感じ。さらに、OP42→LME49990と比べても同等の聞きやすさががある。中高域のバランスという観点 では中域側に強調点が移ってやや地味な感じもするが、これはこれで悪くない。OPA627 同士の組み合わせより明らかにキツさが減る。

LME49990→LME49990: 
 周囲の素子を少しおとなしいものにすると良い。発振防止のコンデンサーを フィリップスにしたときが最も良かった。その際
OPA627→LME49990 に多少バランスが似るが、ソリッドさが減る感じがす る。合奏ではやや艶消し気味で、良く言えばシルキーなきれいさを感じる。

NJM5534D艶有り→NJM5534D艶有り:
 非常におとなしいが、そのマイルドさが生楽器っぽい。


 結局最終的に残ったのは元々 C-700 についていた NJM4558DX 艶有りと、発振防止のコンデンサーにシーメンスのスチロールを使った OP42→LME49990 の2つと言っていいかもしれません。4558 はフォルテでうるさくならず、かといって細かい音も良く聞こえます。ただ案外サラッとした風合いで魅力的な色が感じられるという風ではありません。対して OP42→LME49990 の方は一聴してきれいな音だなと感じさせ、オーボエにもヴァイオリンにも濡れた艶のような大変魅力的な響きが加わります。オーディオ装置の音は常に原音か ら離れているので、それが 4558 に対して加わっている響きなのか元々なのかは断じがたく、ただそれを聞きたいという誘惑にかられます。弱音から大勢の合奏に入るところなど、コントラスト がついて大変よく鳴り渡り、ある意味でリアルな感じになるので、これこそ解像度が高いと一瞬思うのですが、全体に音 量が大きく感じる上にフォルテで 4558 よりやかましく感じるのも事実です。その間誰かとの会話は聞き取りにくい感じです。ということはこっちの方が分離が悪いのか...  どうもどっちを採用していいのやらで悩みます。時代錯誤的な意見ですがハイファイなのはやはり 4558 かな。これでこの終段のラインアンプの部分に MUSE01を持ってきて、元々 082D がはまっていたサンプルホールド回路の方で逆に今回の取り替えごっこをやったら、おそらく収拾のつかない事態になることでしょう。


発振防止 について
 発振 (oscillation) というのは、大雑把に言えば帰還(フィードバック)部分を持つ回路などで、環ってきた信号が元の信号と干渉し合ってハウリングのようになることを言いま す。ステージでマイクと拡声用のスピーカーが反響してキーンという音を立てる、あれと原理は同じです。オペアンプが 使ってある増幅回路にはたいてい帰還回路が用いられていますので、オペアンプの種類と回路設計とが合わないと発振を 起こすことがありま す。とくにオーディオ用途を超える高い周波数まで扱えるようなオペアンプ(そういうものの中に オーディオ帯域でも高性能なものがあったりします)を使う場合、そういう高周波での能力を想定していないオーディオ 回路で発振することが多いようです。したがって大抵は耳に聞こえない高い周波数で起きていてオシロスコープで確認で きるだけですが、その 発振に影響されてスピー カーからチーンとかチュイーンとかいうようなラジオの同期外れみたいな可聴音が漏れてくる場合もあります。また、そ の機器をつないだ先のアンプのボリュームを回すとボソボソというノイズが出たり、電源のミューティング・リ レーがつながった瞬間にバツッというノイズが出たりする場合も発振の可能性があります。そしてオペアンプが発 振すると本体が異常に発熱する現象もありますので気をつける必要があります。SOP (SOIPともいう)タイプの小型のオペアンプは元来手で触れられないほどの熱さになるものですが、発振しているともっと熱くなります。発熱のせいで本体 が壊 れたり、周囲の電解コンデンサーなどを焼いて壊したり、音をなまらせることもあります。音が正常に出ていなが ら微妙に発振している場合もあるので厄介なのですが。
  そんな発振を止める対策は何通りかあります。本来は発振 の原因を突き止めて個別的な対策を施すわけですが、原因究明には回路の知識があることに加えてそのオペアンプの特性 を把握している必要がありますので、素人(私のことです)にはなかなか難しいことです。

 一般的には入力側や出力側に抵抗を入れるという方法がまずありますが、回路に直列に素子が入るので、オペアンプを 交換するのと変わらないほど音質に影響が出ます。

 次に位相補償用の数pFから数百pFのコンデンサーを出力と−入力の間など
(専用のピン間が指定されている場合もあります)に入れるという対策があります。これは還ってくる信号の位相をずらすことで反響同期しないよう にするものです。ただし、今回少しだけ試してみたところではあまりうまく改善できませんでした。

 そして回路の使い方によらず最もよく行われる対策が、オペアンプの出力とアース(GND)の間にフィルターを入れ るというも のです。フィルターの内訳は十数pFから0.1μFぐらいまでのコンデンサーと、それと直列につなぐ10Ω前後の抵抗 ですが(順序は理論上関係ありません)、コンデンサーの方はその値にしたがって低音を通さない=ローカット(高音を 通す=ハイパス)特性がありますので、発振している周波数を選択的にアースの方へバイパスして逃がしてやることで発 振全体を抑える効果を持ちます。一方抵抗の方の働きは、コンデンサーが無制限に信号を通す周波数でも、下限を決めて 一定以上は制限して通さなくするためのものです。そして2素子から成るこのフィルター、本来なら発振している周波数 を突き止めてその値に合った大きさのコンデンサー(計算式があります:c =159,000/fc・r  [
μF, Hz, Ω])を入れるべきですが、大雑把 に入れてみて様子を見るという方法でも構わないようです。ただ、今回は定番である 0.1μF にするとかえって発振させてしまうということがあったので、手元にあった 390〜1000pF のスチロールコンデンサーを使いました。
 つなぐ位置ですが、オペアンプの出力側は1回路入りのものだと6番ピン、2回路入りのオペアンプだと7番ピンにな ります。その先にコンデンサーと抵抗を直列につないで反対の端をアースに落とすわけです。アース側はシャーシに落と しても構いませんが、配線が長くなるとまた別の発振の原因になりますので、最短を狙うならやはりオペアンプの足に落 とすということになるかと思います。適用される回路によってピンの役割は色々あり得ますから GND 側につながっているところを探すべきですが、回路図を見ると
今回は3番と5番ピンがアースとして使われていたので3番につなぎました。シャーシなり基板の GND の部分なりと各ピンの足の間を順番にテスターであたって抵抗0のピンを探してもいいでしょう。回路基板から 起こす場合 は専用のパターンを作っておいて、コンデンサが嵌るそれ用の場所を作っておくという場合もあります。


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