B&W

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 B&W  DM4,  DM2  1972   セレッションの名ツイーター、HF1300を使った初期のスピーカー。BBCモニターの系統に似た構成だが、この頃のゆったりした音の方を好む人もいるようだ。

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 DM70  1970(左) B&Wの初期を代表する独創的なスピーカー。ツイーター部はコンデンサー型で、低音のダイナミック型ユニットとの組み合わせである。一方、右は DM6  1976 で、 このメーカーが初めてケブラーを振動板に用いたスピーカーだ。ケブラー繊維を編み込んだコーンは振動の伝播速度にバラつきがあるため、定在波が出にくいとされる。最近の高度な技術を売りにしているメーカーのイメージにからすると、真円でない振動伝播というのはなんだか面白い。以後この材料は B&W社の特徴の一つとなった。またこの頃、同社にはデザイナーのケネス・グランジが迎え入れられ、この DM6 が彼の最初の作品となった。

 創業者のジョン・バウワースがロイ・ウィルキンスと営む電気店のバックヤードでお客さんのためにスピーカーを組み立てていたのが始まりで、その製品をある老婦人がたいそう気に入り、亡くなるときに遺産として1万ポンドを寄付したために起業できたというエピソードがあるそうです。そしてそのバウワースが87年に亡くなった後、普通は個性が失われて衰退することが多いなかで、ビジネスとしてより成功をおさめた会社でもあります。昨今のシステムはコンピューター技術を積極的に導入し、操業当時の手作り品という方向から180度転回してハイテク技術の塊のようなスピーカー・システムを世に送り出しています。音楽好きというよりもオーディオファイル に特に人気があり、新製品はいつも話題になります。

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      B&W 801  1979                            B&W Nautilus 801  1998 
          ヨーロッパの録音スタジオを
          総な
めにしたモニタースピーカー。

 
どういう人脈があったのか、79年に登場した801というシステムは当時のクラシックのレコード会社のほとんど、ドイツ・グラモフォンやEMI、デッカ、フィリップスなどでモニター用として採用されました。801 はその後ローレンス・ディッキーが開発を担当したノーチラス801を含む独自のN800シリーズへと発展し、オーディオに興味のある人で知らない人はいないというほどになりました。アラミド繊維 (ケブラー)で編み込まれたミッドレンジ・ユニットはバッフル反射を抑えた理想的な半円形のFRP製キャビネットに入れられ、背圧を長い逆ホーンのチューブで徐々に消して行くという手法も独特で、特にその尻尾の生えた高域ドームユニットはちょんまげと言う人もいて視覚的なインパクトがあります。

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 音は
どちらかというとクールで無機的になりやすく、特定の色付けを嫌ったチューニングだと思わせます。個人的には初期モデルのアルミドームはわずかに金属的な癖を感じさせて好きではありませんが、その後年々改良が 加えられ、末尾にSが付く時代になって嫌な癖がほとんど感じられなくなりました。ネットワークもドイツ・ムンドルフのシルバー・ゴールド・コンデンサーと空芯コイルを一つずつ持つだけのシンプルな6dB/oct のものになり、特にそのコンデンサの音色がナチュラルさに貢献しているのではないかと想像します(シルバー・オイルのタイプに限ってはしっとりとも言える音で、自分のネットワークにも使用しています)。6dB/oct のファースト・ オーダーの回路は位相の乱れがなく、くぐり抜ける素子の数も最低になることから理想的なのですが、広いレンジであばれが少ない優秀なユニットが要求されます。そのあたりを恐らく規模の大きなメーカーでこそ成し得るハイテクで実現しているのでしょう。他に大きなメーカーのシステムでこうしたシンプルなネットワークを持つものはあまりないので、バッフル反射のない定位の良さ(後で触れます)と、惜しげなく高価なコンデンサーを使っていることと合わせて、現代の B&W の魅力的な点だと思います。ダイヤモンド振動板のDシリーズになってその輝かしい音に私はまたついて行けなくなりましたが、S世代に関しては、組み合わせる機器によってはある種別次元のリアリティを感じさせるスピーカーシステムとして印象に残ります。


 D については、定価が上がった分だけアンプとC
Dプレーヤーも値段の高いものを組合せないから本来の音が出ないんだという売り手側の声をよく聞きますが、コンデンサがオイル・タイプになったにもかかわらずあの音の傾向です。ダイヤモンドはアルミよりも硬いので分割振動域をさらに上へと持って行くことを狙っているようですが、ツイーターにとって少ないことが最も大切な質量は増えています。旧モデルでも振動板の共振点は
すでに可聴帯域の上まで十分に追いやることができていたので、材質的にはアルミ合金の方が相応しいのではないかと個人的には思ってしまいます。地中深くで大きな圧力と熱によって作られるダイヤモンドをその結晶を保って薄く蒸着できるのかどうかは分かりませんが、開発にお金がかかった分だけ価格にも反映されているのではないでしょうか。あるいは特別ということが高額商品のマーケットには必要なのかもしれません。一人のリーダーが音決めをして行くという体制ではない大きな企業体としては仕方ありません。社員を食べさせて行くのも会社の大きな社会的役割です。ただアルミ・ドームもそうでしたので、今後音が調整されて行く可能性はあるかとは思います。

 旧の S に話を戻しますと、特に定位が良いのは価格は高いながらスコーカーも砲弾型になっているものかと思います。最小の805については大変バランスが良く、どのモデルもいろんな音を細かく拾いますが、そういうモニター的、分析的な音としては自然で滑らかな方向へも持って行けるぎりぎりのところにいると思います。好みかどうか、
生の楽器っぽいのかどうかと言われると何とも言えないのですが。

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 B&W Nautilus 805S   いずれにしても、大変良くできたスピーカーだと思う。

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 B&W Nautilus 1995(左)ロー レンス・ディッキーが設計したオリジナルのノーチラス。オーム貝を意味するその渦巻き構造は、ウーファーユニットから後ろに出る音がキャビネットに反射し て自分に戻ってくると音を濁すため、ぐるぐる巻きにして目をくらましてやろうというもの。同じく高域ユニットの後ろに生えた尾というか角のような突起も、だんだんチューブを細くしてだましてやろうというユニークな消音構造。価格は発売時に6万ドル、現在は 1100万円。しかしこの形の創造性には驚いた。右は同じ設計者が南アフリカで立ち上げた新ブランド、Vivid Audio の G3 GIYA。どちらもバッフル反射の起こりにくい、幅の狭い流体力学的な形をしている。

   B&Wで特に興味を引かれる点は、楽器の定位です。バッフル反射のない高音ユニットの構造から、CDプ レーヤーとアンプを適切に選ぶと(大切です)音像がスピーカよりぐっと後ろから出てくるという現象が起こります。これは他のスピーカーシステムではあまり聞いたことがない種類の音の出方ですので、このメーカーの音が好きかどうかは横へ置いておくにしても興味あるところです。私は透明な空気感を伝えるインフィニティのEMITの音が好きですので、EMITをB&Wのようにバッフルなしでユニット剥き出しの消音器付き構造にしたらどうなるのかと想像したりします。インフィニティのアーニー・ヌデールは自身の最高機種でEMITを縦一列に複数並べ、後面にも同じだけ配置して音場型の出し方をしていますので、B&Wの点音源という考えに対して、部屋の反射を積極的に利用するという点で正反対のアプローチです。そしてインフィニティのこの1000万円プレイヤーの話をするならば、シュールレアリスティック・デザインのノーチラス・オリジナルモデルも契約金の高い選手ですので、この対決、仮想的には(経済的に現実たり得ません)面白いテーマを含んでいると思います。いっそノーチラスを2ペア買って1ペアを後ろ向きに設置し、壁に反射させるか、あるいは録音するときに後ろの壁から反射してくる音にもマイクを立ててミックスダウンした音源を使うかすれば、インフィニティのあのコンサートホールのような音の出方に対抗できるのではないかと言っている人がいました。普通の録音でもすでに後ろに反射した音は含まれていますので理屈の上では重複しており、ハイファイ再生という意味ではB&Wや日本のメーカーにもあるような砲弾型のスピーカーの方が理論的には正しいアプローチだと思います。そしてインフィニティのユニットでB&W式の点音源を目指すというのが自分にとっての夢の構想ですから正反対になるながら、その人の考えも桁外れで面白いと思います。結局そのときは、そんなにお金をかけるならヨーロッパへコンサートを聞きに行った方がよっぽど楽しんじゃない、ということで意見の一致をみたのですが。



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