『太陽を盗んだ男』(1979)
〜DVD発売記念トークショー体験記〜
2001/9/02

『太陽を盗んだ男』DVD発売記念トークショー体験記

 1979年に公開された映画『太陽を盗んだ男』は、観た人の記憶に不発弾のように残留し続けるカルト映画の傑作だ。退屈な毎日を送る一人の男がプルトニウムを盗んで手製の原爆を作りだし、それでも自分が何をやりたいか分からずに、日本政府に対して滑稽なほど行き当たりばったりの要求をつきつける・・・。



 この映画を監督した長谷川和彦(通称ゴジ)は、結局2本しか映画を撮ることなく現在に至る。今回この映画のDVDが発売されるのを記念して、22年間の沈黙を破り、ゴジを招いたトークショーがシネセゾン渋谷で開催された。

 当日、館内は300人ほどの入り。立ち見も出るほどの大盛況。まずはMCが登場し、ゴジが手がけたあの幻のTVドラマ『悪魔のようなあいつ』が11月/12月にDVD化(!)されることを発表。

 その後、DVD特典映像のダイジェスト版を上映。新しい予告編がムチャクチャカッコイイ。メイキングドキュメントでは、ジュリーが女装して国会議事堂に入るシーンや渋谷に札が舞うシーンは、警察の許可無しで撮影されていたことを知る。さすが1970年代。

 そしていよいよ長谷川和彦と糸井重里が登場。ゴジ、やっぱり下駄を履いてます。なんだか機嫌よさそう。

 トークショーは予想以上に盛り上がり、結局予定されていた時間をはるかにオーバーするまで続けられた。以下は、そのトークショーから印象に残った発言やエピソードをメモから抜粋(あまり正確では無いかもしれません、念のため)。



糸井「いま上映されたDVD版の予告編、すごく面白いね。この映画ってビデオで見たんだけどこんなに面白くなかったもん。長くて。きっと時代のテンポが違うんだよね。」

糸井が沢田研二の『TOKIO』を作詞した頃に、沢田が糸井をゴジに紹介したとのこと。で、『太陽を盗んだ男』のコピーが「すごいヤツがすごいものを作った」というヒドイものだったので、ゴジが糸井に新しいコピーを依頼したらしい。それで出来たのが「僕の先生は原爆を持っている」。このコピーを使用した新しいポスターを作ったけれど、その頃にはもう映画がコケていてポスターを貼りかえてもらえなかったらしい。

糸井「この頃は原爆を持つっていうことが凄いことだったので「僕の先生は原爆を持っている」というコピーでも雰囲気が出た。でも今はネットでハッカーがペンタゴンに進入できちゃったり、個人がデカイことをできる時代だから、このコピーじゃ驚かれない」

ゴジが会場の観客に質問し、挙手で答えてもらう、というのを何回もやっていた。そのリサーチ(?)結果によると、今回『太陽〜』を始めてみる客が1/3ほど。20歳以下の観客はほとんどいない(オールナイト上映なので当然だけど)。それでも35歳以下の観客ががほとんどだった。

ゴジ「俺は子供の頃、音楽も小説もぜんぶ中途半端だった。でも中途半端な俺程度の人間でも、映画は「設計図」さえ描ければ、人の肉体とスキルを使って作れるんだ」

ゴジ「渡部篤朗? アレ、ダメだろ。役者は能書き言うな。能書きが言いたいなら論文書くか監督になるかどっちかにしろ」

ゴジ「昔、角川春樹に『人間の証明』を監督してくれと頼まれて会ったことがあって。でも彼は、二人で会ってるときは「長谷川さん」っていうくせにTVカメラがまわってると「キミ」っていうんだよね。だから頭に来てテレビに映ってるときに「お父さんの金で角川映画をつくるんじゃなく、自分の力で丸川映画とかつくったほうがよかったね」って言ったの。そうしたら「僕は丸川ではなく角川です」って言ったんだ。俺はテレビに向かって「バカだねコイツ」って言ったわけ。それ以来、俺が商業映画を撮る道は塞がれたんだけどな(笑)」

ゴジ「この22年間、何をやってたかって? 老後にやることは全部やった。陶芸なんて個展ひらけるよ」

糸井「ジュリーが原爆に向かって「お前は何がしたいんだ?」って言うセリフ、あれは「今」だね。当時は今ほどよく分からなかったと思う。エネルギーを何に使ったらいいかよくわからない時代を予感したセリフだったんだよ。あのセリフは皆に向けられているんだ」


 そう、「『太陽を盗んだ男』は要求のない時代に生きる俺自身のメッセージだ」という公開当時の長谷川和彦のメッセージは 、今の時代にこそふさわしい。もしいま自分が、あのギラギラ光る丸い球を手に入れたら、何をするだろうか?ロクな答えが思い浮かばないのだ。巨万の富?権力?2ch買収?イエローキャブ私物化?マルサン・ソフビのコンプリート?

 丸い球はいまでも不発のままだ。


□今回のDVDの目玉は、DVD用新作メイキング・ドキュメントなどを収めた収録時間約2時間36分(!)におよぶボーナス・ディスク。特に、映画公開直前にオンエアされた「11PM」での『太陽を盗んだ男』特集を特別編集版で収録してるのがスゴイ。この頃の「11PM」の司会はテレサ野田。彼女って、僕が大好きなノー・フューチャー系青春映画『八月の濡れた砂』(1971)の主演女優なんだよね。1979年にはもう彼女のオーラは消えてただろうけど。関係無いけど当時の情報TV番組ってもっとDVD化してくれないかなあ。

□長谷川和彦マメ知識
 梅図かずおの名作漫画『漂流教室』を大林宣彦が監督して世紀のトンデモ映画に仕立てたのは有名な話。あの映画、実は長谷川和彦が監督するという形で映画化の話がすすんでたんだけど、途中で某広告代理店が「監督を大林にすれば○億円出資する」みたいな感じでしゃしゃり出たために大林になっちゃったらしい。

□関連サイト
・『太陽を盗んだ男』専門サイト
・『太陽を盗んだ男』DVD発売記念サイト(アミューズ)
・VARIETY-J 『太陽を盗んだ男』特集
・長谷川和彦公認サイト「ゴジサイト」
・長谷川和彦全発言
・ほぼ日刊イトイ新聞(トークショーの回想)



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