『ロング・ラブレター〜漂流教室』
〜「お前らどーせシンプルに生きてんだろ」〜
 (2002/01-03)

 2002年初頭にフジテレビで放映された『ロング・ラブレター〜漂流教室』は、楳図かずおの原作に遠く及ばない、誰もが認める失敗作として終わった。しかし出来の悪い息子みたいに憎めない、不思議な魅力がある作品でもあった。最後まで下がらなかった視聴率がそれを証明している。とはいえ失敗は失敗、ひょっとしたらDVDは発売されないかもしれないので、『ロング・ラブレター〜漂流教室』を見て毎週リアルタイムで書きつづけていたストーリー紹介と感想をここにまとめておくことにする。いつの日か『漂流教室』の完全映像化に挑戦するかもしれない未来のクリエイター達のために・・・。





第1話 (2002/01/09)

『ロング・ラブレター 漂流教室』(フジ 21:00)を見る。

 面白かった。あの『漂流教室』なのにラブストーリーとして一応成立していたのでビックリ。原作マンガだと今後はとんでもないことになるんだけど、今日の演出を見る限りはそんなに悲惨な展開にはならなさそう。

 僕が思うに、スタッフはドラマ版『あいのり』を作ろうとしてるんじゃないだろうか。隔離された状況(=携帯のつながらない世界)での葛藤を通してドラマチックな愛を描く、という。今後は『バトルロワイヤル』的な展開もあるはずだし、ひょっとしたらこれはいい意味で期待を裏切る意欲作か?

■視聴率:17.2%


第2話 (2002/01/16)

『ロング・ラブレター漂流教室』第2話

 ネット上では酷評する人が多いみたいだけど、みんなもっと人にやさしく。僕は堂々と支持派であることを宣言したい。皮肉でなしに、こんなに見所満載のドラマは見なくちゃ損だ。

 原作があるのに先が全く読めない展開、緊張と弛緩が交差する変幻自在の演出、関谷役の中島宏海の怪演、トミーフェブラリーばりのメガネで機械オタクの女子高生、風が吹いても飛ばない窪塚のヅラの頑張り、等々。

 なんたって、いまどきゴールデンタイムにこんなNHK少年ドラマシリーズみたいなSFを見られるってだけでも奇跡なんだから。これが傑作になるかどうかはまだわからないけど、確実に記憶に残る作品になるね。

 ちなみに山下達郎の『ラブランド・アイランド』を主題歌にしたのは、歌詞の「頬にこぼれる汗が/渇いた道の上に落ちると/突然こんな砂漠の町が/南のオアシスに変わる」ってところをドラマの伏線にしたいからじゃないの?

■視聴率:17.2%


第3話 (2002/01/23)

■支持派の僕ですら面白いんだかなんなんだかよく分からなくなってきた『ロング・ラブレター漂流教室』。世界観が原作マンガと違いすぎるからエンドロール表記は「原作」ではなく「原案」に変えろ、という原作ファンのシュプレヒコールが巻き起こっているけれど、「原作」と表記しているのは楳図かずお本人の強い希望らしい。

 とりあえず今日第3話の展開は「サバイバー featuring 新八先生」といったところ。先週のメガネ娘に続き、「ビッチ」と「脊髄損傷」という注目の新キャラが登場。

■視聴率:%


第4話 (2002/01/30)

■視聴率:15.3%


第5話 (2002/02/06)

『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』第5話のあらすじ

 ファーザー浅海(窪塚洋介)はマザー三崎(常盤貴子)に対し、自分たちは未来にタイムスリップしてきたという仮説を台本棒読みで説明。しかしそんな大事な話の最中も三崎は浅見との淫らな行為を妄想して身悶えるばかりで埒があかない。

 その頃、貴重な食料を保管した貯蔵庫に3人のホームレスが侵入し、フードバトルクラブのプリンス小林並みの行儀悪さで大食いに挑戦していた。そして食欲の次は性欲だといわんばかりに女生徒をレイプ未遂(ただし今回はブラ見せ無し)。

 男子生徒たちに発見されたホームレスたちは平和ボケしたボンクラ生徒たちにカンフーアクションで喝をいれ、浅見にも刃物で重症を追わせたが、一人が生徒たちに捕獲される。

 捕虜となったホームレスは豪華な個室ウサギ小屋を与えられるという厚遇をうけながら何が気に入らなかったのか脱出。懲りずにヤンキー女生徒2人をレイプしようとするも、美雪(小泉絵美子)による顔面蹴撃一発で失神。浅海と三崎はホームルームを開き、皆の前で一方的に美雪を防衛大臣に任命する。

 では外務大臣は田中真紀子に、と三崎が言い終わらないうちに捕虜ホームレスは三度目の脱出。天才めがね少女・我猛(鈴木えみ)の謎言語による説得も振り切り、捕虜は元・馬軍団だったという脚力をいかして大きな荷物を抱えつつ逃走に成功。その荷物の中身はなんと、自ら学校を出ようと希望したいじめられっ子の脊髄損傷娘・西あゆみ(赤咲怜奈)だった。

 一連の騒動で途方に暮れる生徒たち。その空ろな目にうつるのは、相変わらずチューすることしか考えていない浅海と三崎のいちゃつく姿だった・・・。

■視聴率:16.0%

■緊迫感ゼロ。僕の当初の期待をマイナス方向に大きく上回るドラマだと確信をもって言える。昨日の朝日新聞の夕刊にも「恋愛や友情が主題だとしても極限状態に放り出される怖さがなければドラマとして成立しない」「漂流教室こそこんな(木更津キャッツアイのような)カメラで異次元的雰囲気を出すべき」と酷評されていた。

 でも、じゃあつまらないかというと、やっぱり面白いから始末が悪い。山口プロデューサーは本気で大人のハイセンスSFドラマを作ろうとしているみたいで、その過剰な「本気」が他のドラマには無い歪を生み出していて、いろんな意味でこれまで見たことの無い天下の怪作に仕上がっている。当初の期待とは違う意味で目が離せなくなってきた。


第6話 (2002/02/13)

『ロング・ラブレター〜漂流教室』第6話のあらすじ

 ちょっと小池栄子に似てきた三崎(常盤貴子)にチューしておきながら逆ギレする浅海(窪塚洋介)。でも結局はお約束の恋愛モードに突入し、深夜にストロベリートークをかましたり生徒のチューを盗み見て欲情したりとラブラブ・サイケデリコ。

 メガネ娘(鈴木えみ)による日中韓国語講座と防衛大臣(小泉絵美子)による防衛訓練が終わると、ロッカーに7日間閉じ込められていたクイーン関谷様(中島宏海)がボロボロになって降臨。

 そこへもう一人ボロボロのホームレスが校舎に迷い込んだ、と思ったらそれは行方知れずになっていた悪い先生・若原だった。彼は「遠くまで行って見てきた。人間は恐ろしい生き物になってしまっていた」と、今後の真・未来人(非人間形態)の登場を予感させる嬉しい遺言を残して憤死。

 その頃、浅海は先週受けた傷が原因で破傷風に苦しみ、瀕死の状態でウ〜ウ〜唸っていた。医学部志望のガリベン3年生は「もう助からない」と冷たく言い放つが、「生きるためのあらゆる努力をしろ!」と年下の若ゾウに説教されてすぐに改心。

 ガリベンは「おまえら素人に何が出来る。僕にまかせろ」と2年男子に言い放ち、「お前だってただの受験生だろ?」という視聴者のハテナマークを振り払うかのように学校の図書館にあった『家庭の医学』を夢中で斜め読み。そして医者のコスプレをしていっぱしの開業医気取りで診察ごっこをした結果、「抗破傷風なんとか」という薬さえあれば助かると宣告。

 三崎は虫の息の浅海に二度目のチューをして、その「抗破傷風なんとか」という薬を探す旅に出発する。妻夫木くんは結局このドラマに必要ないんじゃないの?という視聴者の不安を置き去りにして・・・。

■視聴率:15.9%

■どうしようねほんとに。漂流教室。最終回が気になるから見続けるけど、僕も何ていったらいいかよくわかんないのよ。今回なんて全然話が進んでないし。

 で、山口プロデューサーの掲示板「山口雅俊の会議室」を覗いてみたら、ひとつだけ気の利いた意見があったので紹介しておきたい。


「このドラマは未来に蒔かれた種なのかもしれない」

毎週楽しく拝見しております。
TVブロス誌の楳図かずお氏のインタビュー記事を
読んでいて、Subjectのようなことを思いつきました。
この番組を見て、原作に興味を持った人の中からいつか
完全映像化(ビジュアル的なものだけではなく、
特に物語の思想性に関して)を実現してくれる人が
現れることを、
楳図氏は期待されているようですね。
氏の目論見通り、原作の売れ行きは好調のようですし、
この番組は「未来に蒔かれた種」になれるのかも
しれません。

ZRX <2002年02月13日(水) 11時22分>


第7話 (2002/02/20)

『ロング・ラブレター〜漂流教室』 第7話のあらすじ

 校庭でピストルを拾った関谷様(中島宏海)が生徒たちを脅して食料を独り占めしていた頃、破傷風におかされた浅海(窪塚洋介)は漂流してから10日以上たつのにまだ髭が生えないままだった。

 熱にうなされ朦朧とした浅海は、三崎(常盤貴子)と幸せで平凡な日々を送るという妄想を見る。初めて学校に赴任した日に先輩である三崎をデートに誘う浅海。生徒たちに「今を生きろ」と説く三崎を愛しそうに見る浅海。花屋で痴話げんかして仲直りする二人。ファックザシステム!と叫びながら国会議事堂に小便をひっかける二人。そんな普通の恋愛の妄想が続く。

 やっと妄想が終わると、「普通だ。もっと普通の恋愛ドラマだってありえたはずだ」という浅海のモノローグ。「そうですね」と、いいともの観客ばりに合いの手を入れる声が日本中の茶の間から聞こえてきた瞬間だった。

 一方、破傷風の薬を探して遠征していた三崎、防衛大臣(小泉絵美子)、キムタク似(山下智久)の三人は、アジトで全滅したホームレス達を発見。生き残った唯一のホームレスは「おまえたちがしていることは無駄だ、無駄ばかりだ!」と三崎たちを糾弾。しかし三崎が巨乳を近づけて「生きて!」とホームレスを介抱すると彼は急に機嫌が良くなり「生きろ!無駄な人間たちよ!」と激励して絶命。

 眠っていた西(赤咲怜奈)は全滅したホームレスを見て「私を守ってくれるために、みんなあいつらに殺された」とつぶやき、来週こそは真・未来人(非人間形態)が出ることを期待させる。西を救助し、一連のイベントをクリアした三人は破傷風の薬を手に入れた(注:これはドラクエではありません)。

 竜巻が迫って大荒れの学校では、「芽がカワイイんだ!」と芽フェチであることをカムアウトした農林大臣(松本伸夫)が自らの命を投げ出して芽を守るために畑にビニールをかける。芽を教室に入れちゃったほうが早かったのでは?という疑問は残るが、なにはともあれ農林大臣は今を生きた。さようなら農林大臣。

 そうこうしているうちに輸血も空しく容態が悪化した浅海は「殺して!いっそのこと殺して!」とマカロニほうれん荘のクマ先生の名セリフを絶叫。その後は脈も呼吸もほとんどなくなってしまう。車で来た道を薬を持ってダッシュで戻る三崎。果たして間に合うのか?ていうかなんで今回はあのメガネ娘は一度も登場しないんだ?

■視聴率:16.2%

■相変わらずツッコミ所は満載だけど、第7話は普通に面白かった。妄想シーンが続くところなんてエバンゲリヨンかと思ったよ。

 今回のタイトルが「もっと普通の恋愛ドラマ」となっていることからも分かるように、制作者たちは明らかに「普通の恋愛ドラマ」を挑発している。浅海も三崎も「ただぼんやりと、なんとなく生きていた」ことを反省するんだけど、それはまるで、安易になんとなく恋愛ドラマを作っている昨今のドラマ制作者達に対して反省を促しているかのようでもある。

 そうしたチャレンジャー精神というか志って、僕は好きだ。でもその志が空回りしている感はやっぱり否めない。「今を生きろ」というメッセージが全然リアルに伝わってこないんだもん。あと、マクドナルドとか空き缶とかを安易に否定して現代社会に警鐘を鳴らされてもねえ(そういうシーンがあったのさ)。


第8話 (2002/02/27)


『ロング・ラブレター〜漂流教室』第8話のあらすじ

 破傷風にかかって脈も呼吸もほとんど無くなったのに薬打って化膿部を切除しただけで何事も無かったかのように歩きだす浅海(窪塚洋介)。皆で農林大臣の死を悲しむ場面が体感時間で20時間ほど続いた後、なんだかんだあって雨乞いのミュージカルが始まり、めでたく雨が降ってくる。以上。あのー、真・未来人(非人間形態)はいつになったら・・・・・いや、なんでもないです。

■視聴率:14.2%

■このドラマがもはや完全に長編コントと化したことを思い知らされた。物語的には窪塚の病気が治っただけで相変わらず全く進展なし。かといって登場人物たちの感情がじっくり描けているわけでもなし。死とか環境破壊とかっていうものに説得力が無いんだよね。窪塚洋介は演技の幅が狭すぎることを露呈しちゃった感じだし。そんなワケで今後の展開よりも制作スタッフの今後の去就のほうが気になりはじめた第8話。本当にあと3回で決着がつくのか?


第9話 (2002/03/06)

■『ロング・ラブレター〜漂流教室』第9話は回想シーンが多く、1話〜8話までのダイジェスト的な作りだった。視聴率が期待値以下に低迷していたから新規視聴者開拓を狙っての応急処置なんだと思う。したがってストーリーの進展はほとんどなし。あら探しにももう飽きたしなあ。

 あと、とうとう真・未来人(非人間形態)がチラリズムで登場したわけなんだけど、CGではなく着ぐるみっぽいね。予告編では防衛大臣とウルトラファイト状態だった。もうそれでいいから来週こそ頼むよマジで。

■視聴率:16.2%


第10話 (2002/03/13)

■『ロング・ラブレター〜漂流教室』第10話は頑張ってた。原作どおりのデザインの真・未来人は操り人形ぽくて全然動かなかったけど幻想的に処理されてたし、今回は全編に「SFっぽさ」が上手く漂ってたと思う。

 真実一郎、普段は評論家じみたことばかり書いてるけれど、これでもモノ作りの大変さは分かっているつもり。だからこのLLLに対してはどうしても突き放した嘲笑的な態度はとれない。僕にとってこれは、こんな作品だけど、夢のある失敗作だ。

■視聴率:16.5%


第11話 (2002/03/20)

『ロング・ラブレター〜漂流教室』最終回のあらすじ

 迫り来る毒雲から逃れるために地割れを飛び越え、洞窟に身を隠す一同。彼らはその洞窟の壁画によって、地球が砂漠化と戦争によって滅び、人類は突然変異した第二人類に取ってかわられたことを知る。

 なんとか学校に戻るも、あばらが内臓に刺さったために三崎(常盤貴子)ご臨終。その瞬間に画面が変わり、三崎が何事も無かったかのように寿司屋(妻夫木)と公園で会話する。木更津キャツアイみたいに「裏」が始まったのか!?と思ったら、どうやら三崎の想念が寿司屋に妄想を見させていた模様。

 三崎の亡骸を抱えて一人たそがれる浅海(窪塚洋介)。そこに第二人類が大挙して見舞いに訪れる。しかし浅海は初対面にもかかわらず「お前らは悲しいとか嬉しいとか生きる意味とかなーんもねーんだろ!どうせシンプルに生きてんだろ!」と生き方を大否定して侮辱。ショックのあまり立ち去る第二人類たち。

 

 


 未来世界で生きることを決意した一同は、火山噴火と雷のエネルギーを利用して過去に向けて手紙を送ろうとする。皆の手紙を入れたカプセルが過去に向かって消えると、何故か漂流する前の現代の校舎に立っている浅海。生徒たちがいつも通りに活動している校内を進み、教室で三崎を見つけると、浅海は静かに歩み寄って抱きしめる。そして荒廃した未来で生きることを告げるが、これはどうやら妄想。

 カプセルは時空を越える途中で散り散りになっていた。舞台は三崎と浅海が出会った日(第一話冒頭)に戻る。浅海の手元に、時空に消えた手紙の切れ端が空から落ちてくる。彼は三崎に電話をかけて誘い出し、夜の横浜で出会って「ハッピーエンド」。未来の校舎も南のオアシスに変わりましたとさ。

■視聴率:17.9%

■というわけで「疑問符の総合商社」ロング・ラブレターは終わった。僕は山口プロデューサーのドラマってこれが初めてなんだけど、いつもこんなに空回りする人なの?メッセージを沢山詰め込みすぎて未消化のまま終わっちゃったね。感動も驚きも中途半端。たぶん「凄いドラマを作りたい!」っていう漠然とした願望ばかりが強くて、SFとか環境問題とかに対する思い入れが少ないからこうなっちゃったんだと思う。失敗したベンチャー企業みたいなもんか。例えば同じように環境問題を扱っても『恐竜家族』の最終回のほうがよっぽどSFだったし感動的だったぞ。

 とはいえ、第二人類襲来シーンはシュールで良かったし、近未来を舞台としたSFドラマをゴールデンタイムに見られたというだけで結構楽しんじゃったのも事実。夢みさせてもらった。フジテレビはこれに懲りずに意欲的なドラマをまた作って欲しい。僕の中では断然『ロング・ラブレター』>『人にやさしく』だ。




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