マイナーな思い出はさておき、冷静に分析してみよう。無敵ベガルタではあるが、戦闘能力的にはJ1の中でも、下位にある事は認めざるを得まい。熱狂的サポータと交通の便のよい見易いスタジアムと優秀な監督だけで勝てるほど、J1は甘くない。本質は選手である。
元々のメンバで、J1を戦い抜くのが難しいのは当初から予想された。当然、補強と言う事になるが、国内屈指の人気チームとは言え、財政的には豊かとは言えない(と言うよりもチーム黎明期の経営の拙さから来る負債を抱えている立場がある)ベガルタとしては、そう大判振る舞いはできない状況だった。
シーズン前に補強した顔ぶれをみても、年齢も含めた観点から名実共に日本のトッププレイヤと言えるのは、山下のみ。森保、小村には大変失礼だが、この2人は前所属チームが順調に若手の有力選手を育成、獲得したために、構想からはみ出した感は否めない。シルビーニョはブラジルのトップチームのレギュラだったようだが、往々にして外国人選手は日本に適合するかどうかは、かなりギャンブル的な部分もある。したがって、悪くはない補強ではあるが、戦闘能力が他チームと対等となったかと言うと疑問だった。しかも、移籍組が多いとなるとチームがまとまり巧く機能するまでに時間がかかる恐れも多い。さらには即戦力となるヴェテランばかりが起用され、若手の成長が阻害される可能性もある。
リーグ戦で鍵になるのは、絶対的な強さではなく、相対的な強さ、言い換えるとライバルチームとの勝ち点勘定である。無敵ベガルタではあるが、ライヴァルと捉えるべきは、アントラーズやジュビロではなかろう。一緒にJ1に上がったサンガであり、昨シーズンJ2に落ちかけたヴェルディであり、両エースと強力な監督を失ったコンサドーレあたりと考えるのが妥当である。その他に、昨シーズンのセレッソのように、「自己崩壊」するチームがあれば、なお嬉しい。
さて開幕時のポイントとしては、それらのライヴァルの中でも、ヴェルディとコンサドーレに序盤からつまづく要素が散見された。
ヴェルディはエジムンドはカーニバルなどで忙しくシーズン当初から戦列に並ばず、相変わらず最も役に立つ北澤、出ればそれなりに役に立つ三浦淳が負傷中。中澤が直前に移籍など、チーム運営上かなり厳しい雰囲気。
コンサドーレは、監督の意気込みがマイナスになる期待。大体、もともとJ1の中でも格段の戦闘能力を持たないチームにも関わらず、エースの播戸とウィルが移籍。このようなチームは、まずは守りを固め、今シーズンは現状維持できれば御の字くらいの態度でチーム作りをすべきなのである。就任後に、雑誌などで「優勝を狙う」「一段質の高いサッカー」などのコメントを読むたびに私はほくそえんだものだった。このチームは素材は悪くない。山瀬はドリブルの切れ味がもう少しつけば(上半身がもう少し強くなればそうなるだろう)A代表の有力候補。今野(なんと東北高出身、無敵ベガルタは優秀な新人をコンサドーレに奪われたのだ)は、Jリーグの若手屈指の知性的守備者であり、身体も張れる。
従って、無敵ベガルタとしては、北澤らが戻りヴェルディがベストメンバになるまで、コンサドーレが監督を更迭し山瀬が本当のトッププレイヤになるまで、それぞれまでにいかに勝ち点差を広げておくかがカギだった。しかも、開幕戦はホームでヴェルディ、二戦目はアウェイとは言え事実上の中立地でコンサドーレと直接対決。この2試合は、無敵ベガルタにとって、この1年を左右する重要な試合となった。そして、清水氏は勝利した。
清水氏の手腕、恐るべしである。先ほど挙げた、移籍選手たちを巧く組み合わせ、短い時間で見事なチームを作り上げると言う難しい仕事を見事に成し遂げた。確かに黄善洪のPK失敗にせよ、ヴィッセル戦の主審の怪しげな判定など、満員のサポータの貢献も大きい(これほどサポータの実力が直接的に発揮された試合が続くのは日本では非常に珍しいように思える)。しかし、それらもあくまでもフィールド上の選手たちの活躍がまずあってこそ。
森保とシルビーニョのボランチコンビの見事な連携。改めて、森保は日本のサッカー史に残るボランチだったのだと感慨深い。敵の攻め込みをしっかりと読み、(意外性はないかもしれないが)確実に味方につなぐ。そのような森保の能力は、今なお明神と並び日本屈指である。
マルコスと山下の高低どちらも間口広く後方からのフィードを受ける見事なコンビネーション。トルシェ氏に「西沢よりは山下ではないの」と言いたくなるのは私だけだろうか。
そしてこれらの作品を作り上げた清水氏の手腕の見事さと言ったら。元々、「80年代優秀な選手を多数抱えながらまともな監督がいない」と定評があった日産で、清水氏は就任直後に「初めてまともな監督」が現れたと高く評価された。その後も、いくつかのチームを転々としつつ相応の成果を残してきた。そして、今回また見事なチーム作り。
「トルシェの次」の有力候補と言えよう。でも、無敵ベガルタから離れないで欲しい。
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