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まずはこの2人を論じたい。
もう20年以上前の事。テレビ東京の金子アナウンサが、ダイヤモンドサッカーでシュートを外しまくる名手について、
「岡野さん、まさに『Not His Day』ですね」
と語った。画面が物語る意味は明確で、我々の世代の人間は、英熟語を一つ学ぶ事ができた。
まさにこの日は、「Not Morishima's Day」。
開始早々から、森島のシュートは外れまくった。エースがあれだけ外すと、いつしか敵にペースが移る。
ただし、森島は並みのタレントではなかった。0−2の状況下で、まずは追撃のゴールを決める。通常、「Not
His Day」の選手は、最後の最後まで決められない事がほとんどだ。しかし、森島は決めた。私は素直に感動した。やはり森島は「唯の好選手」に留まらない何かを持っている。
そして、あの終盤の猛攻時の、運動量と技巧の素晴らしさ。エスパルスDFがかろうじてクリアしたボールをセレッソが拾うと、すぐに森島がそのパスを受けられる位置に入り、猛攻を再開。しかも、ボールを受けた後の森島の展開は多岐に渡る。ボールが尹晶煥に届けば鋭いスルーパス、大久保に渡れば強引なドリブル、後方につなげば制空権を握った岡山への好クロス。そして、それらを経由したラストパスを受けるべく、ここしかないスペースに飛び込む森島。エスパルスのDFたちは、かろうじてクリアし、それが拾われて森島が受ける度に戦慄を覚えた事だろう。まさに日本の宝である。
どうせならあのPKも森島が蹴るべきだったのではないか。そうすれば、サッカーの神様も「うむ、森島にハットトリックをさせて初春の栄冠を渡そう」と思ったのではないか。
しかし、森島は全く別な意味で試合を決めてしまった。延長前半、Vゴールの起点は森島のミスだったのである。まあ、あれだけ終盤にもう一踏ん張りすれば、疲労も出るよな。誰が疲労で腰がよれてしまった森島を責められようか。
しかし、ボールが渡ったのが、よりによって三都主だったのである。
この日の三都主もまた素晴らしかった。
決勝Vゴールのアシスト。左サイドを突破した後の三都主独特のもう一歩の縦への前進。立ち足をよく踏み込んだセンタリングはコースといい強さといい絶品。
さらに先制ゴールの技巧と冷静さには舌を巻くばかり。田坂を外した後に、セレッソDF(確か3人いたはず)とGKの位置取り全てを改めて観察し、冷静にチップショットを決めた。凡人のプレイは、敵陣前で敵を抜く前にシュートのイメージを固め、抜いた後も(もっとも三都主でなければ、あそこで田坂を外す事自体も難しかろうが)そのイメージのままシュートまで持ち込もうとするはず。しかし、ここでは三都主は見事な技巧を披露した後、再度周囲をルックアップして新たなイメージを作り、そのイメージどおりのゴールを決めたのである。
このようなビッグゲームで、このような技巧と知性あふれるゴール。「6月」に向けて期待は高まる。
とは言え、私には三都主のプレイ参加頻度の低さがとても気になった。この試合はセレッソペースだった時間帯が非常に長かったが、三都主はこの苦しい時間帯に、ほとんどプレイに参加していなかった。エースであれば苦境時に、工夫して自分がボールを触る頻度を増やし、その苦境から脱する算段をすべきだろう。しかし、残念ながら、三都主にはそのような工夫は見られなかった。むしろ、反対サイドの平松の方が、押し込まれた時間帯に、再三工夫してボールをもらい、独特のキープから突破を狙い苦境の脱出を試みていた。
三都主は、この日ベストの体調ではなかったと言うが、この参加頻度の少なさは現状のプレイスタイルから来るものと考えた方がよいようだ。過去のエスパルスでの活躍を思い起こしてみても、三都主は90分間フル出場して、味方がよいリズムの時間帯に良好なボールを貰い、そこから技巧をこらした突破を狙うスタイルを持つ。つまり、スタメンから起用しないと、その有用性が十分に発揮できない選手なのだ。
一部報道で、三都主を代表チームのスーパーサブに起用する事が推奨されているが、それでは三都主は十二分に活躍できないのではないかと思う。
一方、森島は正反対で、短い時間でも、長時間でも絶えず自らの能力を発揮しようとする。ただし、絶えずフルパワーなので、体力の限界まで来ると、この日のように三都主にアシストしてしまうリスクもある。森島こそは、勝負所でスーパーサブとして使われるプレイヤなのである。
チュニジア戦の後半20分、1億2千万国民の期待を一身に集め、森島がタッチライン際に立つ。横で口泡を飛ばすトルシェ氏。必ずや、我らが日本の宝は、期待に応えてくれるに違いない。 |