● フィリップ、今日はついてたね
   −ブラジル戦−
2001.06.06

1.幸運な引き分け

       双方の相対的戦闘能力差、当方がメンバを落とした事から、この日は1次リーグでは最も厳しい戦いとなった。
 再三崩されて決定機を掴まれ、逆に当方の決定機は少なかった。先方に、ロマリオなり、エウベルなり、怪我が治ったロナウドなり、復調したアモローゾなり、やる気を出したエジムンドなりが入れば、完敗していた事だろう。ただし、結果 として幸運に恵まれたとは言え、零封して引き分け勝ち点を確保し、首位 で準決勝進出を決めた結果は高く評価されようが。
 厳しい戦いだったからこそ、若い選手たちは素晴らしい経験となったはず。ここは相棒の隣国が最終戦奮起してくれて、豪州を破ってくれた事に感謝しておこう。もし、彼らが引き分けると、ブラジルにわざと負けて準決勝の豪州戦を選択する事になり、せっかくのブラジル戦を「素晴らしい経験」にできなくする所であった(いやあ、このような尊大な表現は堪えられませんな)。


2.苦戦の要因

      左サイドの守備
 小野だろうが、中村だろうが、本山だろうが、(アレックスだろうが、)左サイドは、強力な攻撃タレントが起用される。攻めに回ったときはよいが、守りにまわった際に(その左サイドから)押し込まれる事への対策は、トルシェジャパンの永遠の課題である。五輪の合衆国戦で中村がこれに対応し素晴らしい守備を見せたものの消耗した事、フランス戦で中村がこれに対応できず日本守備陣が崩壊した事など、記憶に新しい。
 この日は、ゼ・マリア(このゼ・マリアは、78年の右サイドバックのゼ・マリアと血縁関係があるのだろうか、アトランタの時もペルージャでも気になって仕方がないのだが、誰か教えてください)が、再三小野の裏を狙ってきた。
 アジアカップでは、左DF服部、左ボランチ名波が交互に左サイドを埋め、かつ右MF明神の天才的な動きで反対サイドをカバーする事で、この問題を解決した。
 しかし、この日の前半は、稲本と戸田のイエロー対策のために、右MF(であるべき)明神が右ボランチに起用され、また左ボランチの伊東もカバーの意識が希薄だったために、再三左サイドを崩されてしまった。しかも、伊東と明神の前後関係が不明瞭で、2人ともDFラインの前に位 置取りしたため、敵のDFなりMFへのプレッシングが決まらず、比較的自由に後方からのフィードを出されたため、状況が一層悪化してしまった。
 残念だったのは、後半トルシェ氏がこの問題に対して、最も安易な解決策−服部の左MF起用−を選択してしまった事だ。ここは、準決勝、決勝、来年に備えて、中田浩をDFでなくボランチに起用して、対応可能か見てみたかった。つまり、右MFに明神、左DFに服部、左ボランチに中田浩で、小野の後方を巧く守れるかを見るべきだと思ったのだ。このテストが巧く行けば準決勝は、DFラインを右から、好調の戸田−森岡−服部、MFラインを右から、明神−稲本−今大会フィードが冴えまくっている中田浩−小野、と言う構成で戦えると思ったのだが。こうしないと、中田浩か戸田のどちらかがスタメンでプレイできないではないか。若い選手が調子に乗っているときは、どんどん使ってやりたいのだが。

明神に苦言を呈したい
 左に攻撃ミサイルを起用する以上、右サイドは明神で決まり。稲本や名波の替わりにボランチをする選手は、戦闘能力が落ちる点に目さえつぶれば、何人かいる。しかし、明神の代わりに右サイドをできる選手を探すのは、かなり難しい。波戸は右バックとしては、前後動のスピードと持続力で評価できるが、現状のフォーメーションの右MFとしてはポジショニングに問題があり過ぎる。明神のバックアップとしては、ヴェテランの名良橋か、五輪でこのポジションを巧みにこなした酒井と言う事になるのだろうか。え、広山?!  それはそれとして、私はこの日の明神には大いに不満を感じた。DFのフィードを受けて前線につなぐ際に、妙な細工をし過ぎて再三ボールを奪われていたからだ。不在の名波なり稲本の代役を演じようとでもしたのだろうか。
 上がり目ボランチを伊東に任せ、己は分相応なディフェンススクリーンに徹すべきだった。いつもシンプルなプレイしか見せない明神が、TVのコマーシャルで実に巧みなボール扱いを見せた事で多くのファンが驚いたのは有名な話。しかし、それを実戦で見せびらかす必要はない。  しかも、ミスからボールを奪われた場面で、受けなくてもよいイエローカードまで食らってしまった。このようなミスは禁物であり、猛省を促したい。フランス戦を考慮すると、豪州戦では明神も稲本も戸田もラフプレイを禁じられてしまったではないか。と言う事で、服部さん宜しく。

中山ワントップの失敗
 終盤、中山をワントップに起用したのは、明らかにトルシェ氏のミスと見た。カメルーン戦では、疲労の色が濃いカメルーンDF陣に、鈴木と並んで強烈なプレスをかける事で、相当な貢献をした隊長だったが、これは横で鈴木が持ちこたえてくれたからの事。隊長ワントップでは、最前線でのキープは期待できず、結果 日本は押し込まれてしまった。
 隊長の使い方としては、キープできる相方の横で (1) リードした試合での徹底したチェイシング要員 (2) どうしても点を取りたい時の要員 と言う使い方になろう。 ブラジルの守備  とは言え、ブラジルの守備の堅牢さは驚くばかり。日本が前線に進出し、拠点を作っても僅かなプレイの遅さから、ことごとくブロックされてしまった。 日本が無理をしなかった事、ブラジルも「負けたら帰国」のリスクを避けるために厚く守った事もあるが、ほとんど決定機を作れなかったのも事実。五輪のブラジル戦でもそうだったが、そこそこ中盤でキープできるのと、最終ラインをこじ開けるのは別 な話。これだけ固い守備を崩すには、ある時間帯相当数が押し上げて人数を攻めにかけるなり、敵DFを引き出して裏のスペースを狙うなり、スーパースターが舞うなりの大仕事が必要なことが改めて認識された。


■3.よかった点

      スーパースターの舞い
 と言う事で、この日随一の決定機、−前半、山下がニアに飛び込んだ逸機−を演出した時の、中田は凄かった。ドリブルでペナルティエリアを伺った時、鈴木が左に開きDFを引っ張ったと見るや否や、加速して強引に切れ込み、高精度クロスを山下に合わせた。
 この日のブラジルのように、DFが強ければ強いほど、中田は真価を発揮する。
 セリエAに戻るの、戻らないの、我儘フィリップが勝手なことを騒いでいるが、どうせ帰ってきたのだ、ここはコンフェデレーションカップ制覇まで、付き合っていただこう。この週末、日本は中田の好指揮の元で、世界制覇(コンフェデの優勝は世界制覇って言っていいんですよね)、一方ローマはプレッシャのために苦杯を喫する。そして最終戦、プレッシャでガタガタのトッティに替わって出場の中田の大活躍でローマが感動のセリエA初制覇、ってのはどうでしょうか。

冴え渡る鈴木
 また、この日の鈴木は冴え渡った。キープにしても、DFのウラを取る動きにせよ、あの強力なブラジルDFを振り回していた(それでも、ブラジルDFは最後のところでは完璧に守り切ったには恐れ入ったのだが)。
 カメルーン戦で、鈴木は完全に「乗った」。この勢いを維持し、一層伸ばすためにも、続けて使ってやりたい。この鈴木の充実は、負傷した高原への最大の刺激となる。


■4.豪州戦を迎えて

       ホームの有利さと、今の日本の充実振りを考えると、6−4あるいは7−3の確立で日本が勝つ確率が高いと見る。 しかし、豪州は(五輪の合衆国のように)、整然とフィジカルを前面 に立てて戦い、日本の弱点でもある左サイドをついてくるに違いない。果 たして、どう防ぐか。 また日本としては、どうしても決勝(と横浜)に残り、フランスと戦いたいところで、それがプレッシャとなる可能性は高い。それに比べると、豪州は比較的気楽に戦えるはず。
 厳しい戦いになるだろう。しかし、カメルーン戦の後半のようなプレッシングが決まれば、怖いものはないはず。堂々と戦い、決勝進出を果 たしてもらいたい。

 そして、フランスに復讐戦を挑むのだ!!!


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