● フィリップ、こう来なくっちゃ
   −カナダ戦−
2001.06.01

1.壮大な組み立て2本

     

 思えば、両方とも中田浩のクリアが起点になったのだ。

 中田浩がルーズボールクリア − 小野がヘッド − 中田がヘッドでリターン − 小野が丁寧な胸トラップ後、左オープンへの短いドリブルをはさんで再びリターン − 中田がワントラップはさんで後方にさばく − 中田浩がダイレクトで中央に − 稲本がダイレクトでリターン − 中田浩がワントラップはさんで中央に戻ってきた中田に柔らかくつなぐ −  かくして自陣内とは言えフリーになった中田が余裕を持って反転、左オープンの中山へ高精度のロングフィード − 余裕を持って抜け出した中山が巧みにDFを外し逆サイドへクロス − 森島の冷静なラストパス − 西沢のヘディング。
 西沢のヘディングまでに、実に11本のパスをつないだ美しいゴールだった。

 中田浩がルーズボールクリア − 前線から引いてきた森島が確実にキープして左へ展開 − 小野が左オープンに進出後、中央へ − 西沢がポストとしてダイレクトで後方へ戻す − 三浦がワントラップ後中央へ − 稲本がスワーブして右へ展開 − オープンに開いていた森島がワントラップ後後方へ − 明神が少しためて中央へ − 稲本がダイレクトで後方へ − 森岡がワントラップ後左へ − 中田がダイレクトで前方へ − 三浦がタッチ側に回転してから中央に走りこむ小野へ(つまり小野は三浦の動きとは逆に動いてフリーに) − 小野はボールを流しながら(ボールには触らずに)ゆったりと反転し最後に反転速度を上げて右オープンにラストパス − フリーの森島が冷静にGKの逆をつく。
 実に13本のパスをつないだ、これまた美しいゴールだった。

 これらのビューティフルゴール、加えてそれに至るまでの壮大な組み立ての成功を2本見せてもらえれば、一切文句はありません。本当に素晴らしい見世物だった。
 偶然なのか、中田浩が立派なのかは定かではないが、どちらの組み立ても、起点は中田浩のクリアからである。しかも、中田や小野の優雅な舞の直前にも再び展開に加わっている。昨年来、完全に守備の要として機能していた服部が起用されず、中田浩が登場した理由は、確かに不明だ。しかし、何はともあれ、ボール扱いのよさ、フィードの巧さと言う特長をこれだけ発揮できたのだから、中田浩としては大変に自信をつける事ができた試合となったはず。
 それにしても、これだけの壮大な組み立てを1試合で2度も拝めるとは。この日スタンドで観戦された方々に、心底羨望を覚える。テレビで見ていても、中田がフリーで前方に向き直した時と、小野が巧みにボールを流して前方を伺った時には、鳥肌がたった。ああ、生で見たかった!


2.小野の一発

     

 カナダは悪くないチームだった。結果的に3点差がついたが、川口の再三のファインセーブがなければ、試合はどうなっていたかわからない。後半の立ち上がりまで、両チームがよく押し上げ、プレスを見事に掛け合う、互角の非常に見ごたえのある試合だった。
 このような試合を決めるのは、やはり飛び道具である。ゴール前で、小野と中田が構えたとき、何となく「行けるのではないか」と思ったのは私だけだったろうか。何かしら、「入るような」予感がしたのだ。
 カナダの壁の作りがやや拙く、GKが完全にブラインドになってしまったようだったが、だからと言って、このゴールの見事さが差し引かれる訳ではない。
 この日、小野は全てのゴールに絡んだ訳だが、名波、中村不在時に、このように結果を出せた意義は計り知れない。特にポジションが完全にバッティングする中村にとっては、トルシェ氏が錯乱してメンバから外される事以上に、この小野の復調は厳しいプレッシャになるだろう。

このような質の高い争いは、大歓迎である。


3.守備の課題 −終盤の無失点を評価したい−

     

 リードするまでは、日本は相変わらずの守備の不安定さで、再三窮地に追いまれていた。この不安定さは、フラット3がどうのこうの以前の問題で、完全に個人能力に依存するものだと思う。
現状の日本代表の、DF、特にセンタバックは、明らかに、守備そのものの能力に課題がある。対面に向かってきた敵FWに、抜かれずに応対するのはディフェンダへの基本的要請である。とにかくも、「抜かれない事」を目指したプレイをお願いしたい。特に森岡には「守備の中軸たる自覚を明確に持つ」事で、不用意なミスをなくして欲しい。アジア年間最優秀選手の候補にもなっただから。
まずはフィジカル能力が高い、カメルーン戦までに、どのような修正が可能か。注目したい。

 一方で、この日は守備面でも収穫があった。
1つは、戸田が使える目処が立ったこと。立ち上がりの守備的MFより、DFラインでのプレイ振りがよかったように思える。森岡共々、(ディフェンダとしては)決して大柄ではないが、忠実に守れるよさを伸ばしてもらいたいものだ。
 そしてもう1つは、(カナダの疲労にもやや助けられたが)終盤ゆっくりとボールを廻し、落ち着いたプレイで失点を防いで、きれいにタイムアップを迎えることができた事だ。
 これらのよかった点が、カメルーン戦、ブラジル戦、そして準決勝、決勝...と、より大きな成果を生み出す事に期待したい。


4.さらば「コルドバの幻」

       素直に信じることにしよう。フィリップは立ち直ったに違いない。再び、「アジアカップ方式」の超攻撃的サッカーが蘇ったのだ。その成果が小野の一発と、美しくも壮大な2つの組み立てだった。
繰り返すが、今後、より厳しい敵にも、2度と「コルドバの幻」を見せてくれませんように、切に望むものである。


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