問われるべきNHK報道

― 大量報道による洗脳教育 ―


 新聞など活字メディアは紙面として残ります。朝日、読売、北海道新聞などは縮刷版としても残りますし、図書館に行けば読むことができます。しかし、放送メディアはそうはいきません。ですから、NHKほか放送番組に対するチェックが甘くなってしまいます。

1 「強制連行」に血道をあげたNHK

 ニュース番組を見れば、トップを飾るのはいつも「従軍慰安婦」、こうした時期が長い間つづきました。大量報道の始まりは元朝鮮人慰安婦が東京地裁へ提訴した1991(平成3)年末頃からだったと思います。いつまで続いたか、ハッキりしたことは分かりませんが、とにかく年単位の長さなのは間違いないと思います。わけてもNHKの大量報道、そのしつこさは異様でした。
 下の2コマの写真をご覧ください。1995(平成7)年8月、ETV特集「50年目の“従軍慰安婦”問題」 が2回にわたって放送され、そのタイトルを写したものです。

 1回目は「“わかちあいの家”のハルモニたち」(左上写真)で、韓国で共同生活をいとなむ元慰安婦だったという7人の韓国人(ハルモニは「あばあさん」の意)の生活、その3人の「労苦と怒り」などの体験談を交えながら番組が進みました。

・ NHKが示した慰安婦の定義と人数
 途中、日本軍に場面が変わり、次のように解説が加えられました。

〈第2次大戦中、中国大陸や東南アジア、太平洋諸島を侵略した日本軍は、
占領地での日本軍兵士による強姦や兵士たちの性病予防などを目的に、
当時植民地であった朝鮮半島を中心に若い女性を慰安婦として前線に送りました。
その数は8万人とも20万人とも言われました。〉

 2回目は「日本はいかに償うべきか」(右上写真)で、国連人権委員会のクワラスマミ・特別報告官(スリランカ人、女性)一行が、成田空港に到着する場面から始まります。女史は韓国で慰安婦からの聞き取り調査をした後に来日したとのことでした。
 放送は「従軍慰安婦」を以下のとおり定義しました。

〈従軍慰安婦とは、各地の日本軍が拘束して、脅迫のもとに、
兵士たちに性的な奉仕をさせられた女性のことです。〉

 「強制連行」という言葉こそ使用していませんが、内容は日本軍が「8万人〜20万人」もの朝鮮人女性を「強制連行」し、兵士たちに体を売らさせたということであって、このNHK解説を、「なんて日本軍は酷いことをしたのだ。同じ日本人として恥ずかしい、申し訳ない」など、日本軍に対する嫌悪感をつのらせながら、視聴者は番組の意図するところを “正しく”受け留めたことでしょう。

・ 8万〜20万人の出所は
 この「8〜20万人」の数字の出どころですが、朝日新聞が「慰安所 軍関与示す資料」として1面トップで報じた記事(1992=平成4年1月12日付け)の右端下、「従軍慰安婦」の用語を解説したなかに出てきます。

〈1930年代、中国で日本軍兵士による強姦事件が多発したため、
反日感情を抑えるのと性病を防ぐために慰安所を設けた。
元軍人や軍医などの証言によると、開設当初から約8割が朝鮮人女性だったといわれる。
太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。
その人数は8万とも20万ともいわれる。〉(解説全文)

 朝日新聞のこの報道は「従軍慰安婦」 問題がクローズアップされる一大転機となったものでした。ハッキリ「強制連行」と書いてあります。
「8〜20万人」という数字は、平凡社大百科事典にも記載があるとのことです。どちらが元なのか調べていませんので確かなことはいえませんが、NHKの「8〜20万人」はこの朝日報道の影響を受けたものであろうことは、容易に想像できるところです。

・ これが根拠 ?
 では、8万人〜20万人の根拠はどこにあるのでしょう。それが、なんともバカバカしい話なのです。
   毎日新聞記者出身の千田 夏光(ノンフイクション作家)が1973(昭和58)年、「声なき声 8万人の告発」として『従軍慰安婦』(双葉社。のち講談社文庫)という、慰安婦問題の草分けともいうべき本を出版しました(のちに続編も)。
 書名の「従軍慰安婦」という言葉は「従軍看護婦」などとは違って、もともと存在しない言葉でしたから千田の「造語」ということになりますが、彼が「従軍慰安婦」を最初に使用したといわれています。
 このなかで、千田は1969年の韓国の新聞(ソウル新聞)を紹介し、挺身隊として動員された数を「約20万人」、うち慰安婦数は「約5万人ないし7万人」としています。
 千田は秦 郁彦との対談で、20万人の出所について問われると、

〈出所は不明です。ただ、私も新聞記者あがりなもんですから、
ちゃんとした新聞が書いた数字ですから、ほぼ信用したわけです。〉

 と答えています(朝日の月刊誌「論座」、1999年年9月号)。
 こんなあやふやな根拠でも、朝日という「大新聞」が書いたとたんに日本では事実と認知され、やがて世界で通用してしまうという恐ろしくも腹立たしい実例でしょう。
 朝日の解説は、挺身隊=慰安婦とした誤説で、またこのお粗末な解説が日韓間に大きな誤解を与えてしまいました。挺身隊=慰安婦が韓国内で定着し、やがて少女の慰安婦像が韓国国内はもとより、アメリカにまで進出してしまったわけです。

2 NHKの正体見せた「問われる戦時性暴力」

 もう1例、お知らせします。2001(平成13)年1月29日から4回にわたって教育テレビで放送された〈ETV2001 「戦争をどう裁くか」 〉を紹介しておきましょう。
 とくに問題となったのは2回目の「問われる戦時性暴力」(左下写真)でした。このなかで、「女性国際戦犯法廷」(右下写真、中央の斜めの席が裁判官席)と称する模擬裁判を好意的に取り上げていたからです。


・ 「女性国際戦犯法廷」って何
 この法廷(模擬裁判)の主催者は、松井 やより・元朝日新聞記者を代表とするNGO「戦争と女性への暴力 日本ネットワーク」(略称、バウネット・ジャパン)で、〈日本軍性奴隷制を裁く 「女性国際戦犯法廷」 〉 という旗印のもと、2000(平成12)年12月、皇居に近いという理由から東京の九段会館などで裁判が行われました。
 裁判の目的は、東京裁判で裁かれなかった日本軍による「性奴隷制度」、つまり慰安婦問題を裁き、日本政府と昭和天皇の責任を追及しようとするものでした。法廷の最終日(12月12日)、マクドナルド裁判長(アメリカ人)が、

「天皇裕仁を婦女暴行と性奴隷制
についての責任で有罪とする」

 と言い渡したことからも、この裁判が何を意図していたのか容易に読み取れるでしょう。
 法廷は弁護人もなく、したがって証人への反対尋問もなく、“被害者”として登場した元慰安婦たちの「証言」で、一方的に審理が進むというとんだ茶番劇でした。笑わせるのが、傍聴者はこの法廷の主旨に賛同するものだけだといい、誰もが自由に傍聴できないことでした。

・ NHK教養番組部がとりあげ
 このような偏向した法廷をいち早くNHK教養番組部が題材として取りあげ、「教育番組」として放送したのです。それも慰安婦の「強制連行」が既定の事実であるかのように制作・放送されました。いかに左がかった考えの持ち主がNHKに巣くっていて、主導権を握っているかがわかります。
 昭和天皇を有罪とした下りこそカットされ放送されませんでしたが、これも放送直前、試写を見た吉岡教養番組部長が「女性国際法廷の紹介番組ではないか」「お前らにハメられた」などと怒り、大幅な修正を命じた結果とのことです。カットされたなかには中国戦犯の2人の証言(⇒ こちらを参照ください)も含まれていました。
 とはいえ、「女性国際戦犯法廷」を軸に番組が展開されているのは間違いないところです。ですが、放送番組を見て怒ったのが主催者のバウネット・ジャパン。早速、カットしたのはケシカランとNHKに対し抗議するやら、提訴するやらの騒ぎとなりました。

・ 朝日報道から政治問題化
 さらに約4年後の2005(平成17)年1月12日付けの朝日新聞が、中川 昭一(経産相、当時)、 安倍 晋三(内閣官房副長官、同)が、放送の前日にNHK幹部を呼んで「偏った内容だ」などと指摘、このためNHKは番組内容を変えて放送したと一面上段で報じました。
 政治家の圧力により、NHKの番組が改変されたというのです。朝日報道は「事実を歪曲」したものとNHKは猛反発、朝日対NHKのゴタゴタ騒ぎとなりました。ご記憶の方も多いことでしょう。
 この問題は、NHKが偏向番組を放送したこと自体が問題の核心であることを忘れてはいけないと思います。
 

3 多数の慰安婦報道

 NHKはこのほかにも慰安婦に関連する番組を多数、放送してきました。下もその一例です。

これらの放送が重なり、やがてアメリカ下院本会議で、「慰安婦制度は日本政府による軍用の強制的な売春で、20世紀最大の人身売買の一つ」 などとする対日非難決議案が可決され、日本政府に「公式謝罪」を求めてきました。この腹立たしい出来事の責任の多くを、NHKは朝日などとともに負うべきものと思います。

・ 「吉田証言」では素知らぬ顔
 ところで、吉田清治証言について、NHKはどう報じたのでしょうか。今回の朝日の記事撤回に関連して、何らかの釈明があるかと思いましたが、間違った報道はなかったとして、「謝罪」はありませんでした。
 おそらく、吉田証言を肯定する報道はなかったのでしょう。ですが、私が問題と思うのは、これだけ吉田証言が「虚偽である」 との指摘がでていたのにもかかわらず、NHKは吉田証言に対する検証報道をしなかったことです。
 このことは、批判されなければならないでしょう。要するに、狡いのだと私は思っています。

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