時評随筆(191)

2017国際競争力とタテ社会


2017-09-19 佐 藤  晋

 
 これまで度々紹介しているが、例年5月にIMD(スイス)より63ヶ国・地域を対象とした国際競争力ランキングが発表される。日本は向上が期待されたが結果は昨年と同じ総合26位で低迷している。首位は香港、2位スイス、3位シンガポールと続き、米国は昨年の3位から4位に後退している。韓国は昨年と同じ29位であったが、中国が25位から18位に大躍進したのは注視すべきである。

IMDによる日本の評価を、ここ5年の傾向で見ると新しいことが分かる。総合評価では、2013年24位、2014年21位、2015年27位、2016年26位、2017年26位であり、2014年の21位より上昇が期待(169号)されたが、ここ3年は再び低位低迷している。182号「世界賃金ランキングと労働生産性」で、生活の豊かさの指標はIMDの指標に傾向が類似しているので、現状の延長では国民の生活レベルも低迷と言うことになる。

大分類四項目の5年間の評価推移をみると、
1.「経済状況」は25、21、29、18、14位と上下しながら改善の傾向にある。
2.「政府の効率性」は45、42、42、37、35位と大分改善はしたが、まだ低位低迷で諸策を必要としている。
3.「ビジネスの効率性」は21、19、25、29、35位とここ3年で急速に順位を落としたのは大問題である。
4.「インフラ」は10、7、13、11、14位と低下傾向にあるが他に較べ比較的上位安定といえる。

上述から従来は、IMD評価の低位低迷の主要因は「政府の効率性」にあるので政府(内閣、国会、行政)の改善課題(183〜188号)を取上げてきたが、更に「ビジネスの効率性」の改善が加わることになる。本来国の財政を支えてきた優良製造業の経営不振(東芝、シャープ、三菱自動車、タカタなど)は深刻で重大問題と言える。政府として早急に共通要因を解析し製造業体質の強化策を打ち出す必要があろう。

前190号「「タテ社会」揺るがぬ50年」でタテ社会の著者中根千枝さんは「現在でも歴史のある大企業や公的機関などにはタテの仕組みが生きている」と述べている。著者のこの発言は長期低位低迷の要因を示唆するものではなかろうか。即ち、タテ社会の弊害がIMD国際競争力ランキング向上の弊害との考え方である。

もともと行政や企業の組織運営には決定・命令・任命などタテの要素がつよい。特に日本の場合は、かつてタテ組織の集団行動で経済成長に成功している。例えば、その功労者が院政を行っていても本人は弊害とは思わないだろうし、また集団で既得権温存のケースもあるので、改革はかなり難しいと思われる。従って、タテ社会の著者のいう「場」を対象に討議するのが一つの解決策であろう。その対象となるタテ社会の弊害をイメージする用語としては、長老、院政、独裁、権力、密室、序列、集団、閉鎖、派閥、根回し、縦割り、縄張り、談合、忖度、排他、独善、不透明など沢山あり、その弊害の度合いは、その時代の国や民族の社会通念で判断されるものであろう。

「場」の解釈はかなり広く、あるときは国や社会、行政、企業、部、課、職場などが対象となるだろう。この種の弊害は政府の「働き方改革」で「タテ社会の改善」という明確な旗印の下に国民的議論にし、結果を社会通念として定着させることが大切になる。この弊害が上手く解決出来れば、豊かな国民生活も期待出来るのではなかろうか。



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