時評随筆(190)

「タテ社会」揺るがぬ50年


2017-7-6 佐 藤  晋


 表題のタイトルは5月17日付け朝日文化・文明欄トップの大見出しである。日本の社会が縦社会と言われ、その弊害が指摘されて久しいが、それが現在に至るまで殆ど改善されていないことを揶揄した表題である。

「揺るがぬ50年」というのは、1967年(S42年)に「タテ社会の人間関係」(中根千枝著)が出版され、当時世間では「タテ社会」の功罪が大きく取り上げられた。それ以来丁度50年と言うことで、著者の紹介と意見も述べられている。一部紹介して私見を述べてみたい。

著者は社会人類学者で日本の社会構造を学問的に論じ、戦後の日本の奇跡的な高度成長を支えた背景を理解する理論として海外でも注目されてきた。

 著者は、日本人が自身を社会的にどう位置づけるかに着目し、例えば職業を聞かれた場合に「タイピスト」や「エンジニア」という「職種」や「資格」よりも「○○社に勤めています」と言う返答が多いという。著者はこれを「場」の意識が強いと表現している。

職種や資格をベースにした集団を「ヨコ」の関係とすれば、日本は、集団や組織を重視した「タテ」の関係が強い社会とし、例として「親分・子分」の関係や入社年次などの「序列」がその典型だと論じている。

 著者は半世紀たった現在でも「一億人もいる大きな社会は、そう簡単には変わりませんよ」と最近の事例として、電通の女性社員の過労自殺事件を挙げ、「感情的な一体感を要請される職場では、運良く人間関係が良ければ思いやりある「場」になるが、悪ければ逃げ場のない「場」になる。会社を越えたヨコのつながりがなければ、外へ救いを求めることもできない」という。

近年日本の社会にも「確かに変化はおきているが、変わっているのは周辺であって、長い歴史のある大企業や公的機関などにはタテの仕組みが生きている。例として「原子力ムラの存在、天下り、長時間労働、・・・」などを挙げている。経済的な理由から雇用制度が変わっても、それはタテの社会構造と併存していくだろう」と指摘している(5/17朝日記事より)。

 上述より、日本はまだ立派な縦社会であり、将来も併存するであろうという著者の見通しは、低迷し続けている日本経済の要因を社会の側面から指摘し、更に将来課題解決の難しさを暗示するものであろう。 縦社会にも横社会にもそれぞれ長短がある。一般論でいえば、経済が発展途上期で規模が小さく良いリーダーに恵まれれば縦社会が断然有利といえる。経済が成熟し規模が大きくなり、より開かれた社会が求められると横社会が有利といえる。

かつて日本は行政指導のもと集団行動で高度経済成長を達成し世界第二の経済大国になった(1992年前後)。その後、経済が成熟社会になると集団に内在する排他的で独善的な縦社会の弊害が顕在化し、既得権の温存に走り閉鎖社会になり、成長が停滞し、国際競争力でも低位低迷が続いている(1位から25位前後へ)。

政府には率先して、縦社会の弊害を諸悪の根源と位置づけ、現状を正面から受け止めて「働き方改革」と同様に「縦社会改革」を取上げて貰いたい(51、76号参照)。

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