書 評

牧野武文著『Googleの正体』を読んで


2010.01.29

茶谷 達雄

schaya@ba2.so-net.ne.jp


はじめに
グーグルの数多くの疑問に親切丁寧に答えてくれる書である。これを読んで、なるほどと膝をたたく場面も多い。専門知識がなくても読みやすく、現代の情報社会の入門書としても推奨できるものある。
著者の謎めいた仮説「グーグルの未来を考えることは、私たちの未来を考えることである」も、読み進むごとに理解されてくる。

グーグルの無償提供
まず疑問の筆頭は、グーグルの無償サービスである。ウェブ上での広告収入と一般に言われているが、採算がとれるのだろうかということである。
グーグルの広告は、利用者にも広告主にもたいへん都合よく作られている。利用者が入力した検索キーワードと関連のある広告が、わずか三行で示されることである。自転車を検索キーワードとした場合、自転車の広告が出されるのである。このような検索方式を、検索連動型広告といっている。
これにより広告をみられる確率は、一般の広告方式に比べると一段と高くなる。しかも安い。広告をクリックされると1回数十セントから1ドル程度の広告料がグーグルに入る仕組みになっている。その総計は2兆円以上という。これが、無料サービスの元金になっているとのことである。正に、塵も積もれば山となるである。

モバイル機器の提供と拡大戦略
グーグルの成長は、収益構造からみて、インターネットの利用者を増やし、グーグルの検索回数を増やすようにすることである。単純明快だ。
インターネットの利用者を増やすためにも、海外も含めて非利用者に低価格の携帯電話や低価格のパソコンを提供していくことが有力な戦略になる。このためにも機能のシンプルでネットの強い「クロムOS」などを開発し、無償で提供しようというのである。機器の提供とグーグルの拡大戦略は表裏一体の関係である。

世界中の人がグーグルを使うようになったらどうなるか
グーグルの新規事業は、すべて「情報整理」「アクセル可能」という基本技術なのだという。これらの進展によりグーグルには個人別に「検索履歴」が沢山蓄積されつつある。
グーグルのいう自らの使命として「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセルでき使えるようにすることです」になった場合、それによる検索履歴の個人別蓄積は膨大なものになる。これをグーグルが悪用したら、悪の帝国に豹変してしまう。

現在のグーグルは、例えば道路を建設し、その道路沿いにさまざまな広告を出すことにより利益をあげているのに似ているという。これがドライブインまで、直接経営しようとなれば話は一変する。
なにしろ個人の性向が蓄積されているので、その情報を意図的に操作したらビジネスも消費もグーグルを通してしか活動できなくなるともいう。このためにも、グーグルは、ビジネスと消費の間に立って情報の流れを交通整理していることに限定する必要があるようである。本書は、インターネットが未来を約束してくれるかは、それはもはやグーグルの動向にかかっているとの極めて重い命題を投げかけてもいる。



注 牧野武文著『Googleの正体』マイコミ新書 2010.1.29
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