このミュージカルの作曲者であるジェリー・ハーマン(Jerry Herman)はニューヨークの生まれ。「ハロー〜」以外にも"La Cage Aux Folles"や"Mame"でもトニー賞を獲得しています。彼が17歳のとき、野心家だった彼の母親がFrank Loesser("Guys & Dolls")とのミーティングをアレンジ、彼はソングライティングの道に入ることを決めました。1985年には彼の曲を集めた"Jerry's Girls"というミュージカルレビューがブロードウェイで上演されています。
映画版のスコアと指揮はLennie HaytonとLionel Newman。Hayton氏はジャズ・ミュージシャンとして20年代後半から活躍していた人物で、Lena Horneの旦那またBing Crosbyの音楽監督としても知られている人です。またNewman氏は「紳士は金髪がお好き」や「エイリアン」の音楽監督でも有名な人物。作曲家としても「ドリトル先生不思議な旅」でアカデミー主題歌賞("Talk To The Animals")を受けています。
ところで筆者がこのミュージカルを再認識したのは"Timeless"のロサンゼルス公演でのこと。アンコールで"Before The Parade Passes By"が歌われたとき、あまりに衝撃的だったので思わず声を挙げてしまいましたが、James Brolinという伴侶を得て、残りの人生を幸せに生きて行きたいと願うバーブラの気持ちが痛いほど伝わってきて、そのコンサートで最も心に残る曲の一つとなりました。またラスベガスのInternational Hotelで収録されたエド・サリバンショーでのメドレーも総毛立つほど素晴らしいことを付け加えておきましょう。
ビルボード最高位49位。ゴールドディスク未獲得。
1.JUST LEAVE EVERYTHING TO ME [3:22] (J. Herman)
邦題「私にまかせて」。映画化に際してバーブラのために作られた新曲で映画の冒頭で歌われます。ドーリー(Barbra)の商売上手さがうかがえる、ミュージカルの王道といった雰囲気の曲。
2.It Takes A Woman [3:03] (J. Herman)
邦題「女がいなければ」。身の回りの世話を焼いてくれる美しい女性と結婚したいとホレス(Walter Matthau)たちは大合唱。結婚する男のホンネは所詮こんなもんでしょう。
3.IT TAKES A WOMAN (REPRISE) [2:13] (J. Herman)
アイリーン(Marianne McAndrew)にホレスを紹介しつつ、内心自分がホレスと結婚するつもり満々のドーリー。か弱いと見せかけつつ実は裏で男を操ろうとする強かな女をバーブラが余裕たっぷりに歌っています。結婚する女のホンネも所詮こんなもんでしょうね。
4.PUT ON YOUR SUNDAY CLOTHES [5:27] (J. Herman)
邦題「日曜は晴着で」。ドーリーはホレスが経営する店の店員、コーネリアス(Michael Crawford。あの「オペラ座の怪人」の若き日の姿です)とバーナビー(Danny Lockin)にニューヨークで素敵な女性に会わせることを請け負います。その女性がアイリーンとその助手ミニー(E.J.Peaker)とは知らず、ヤンカースの駅で胸をときめかせ歌い踊る若者二人。休みともなると新しい出会いを求めて都会に繰り出すのは昔も今も同じなんですね。映画のダンスシーンでは今や監督・俳優・振付師として大成したTommy Tune演ずるアンブローズのノッポぶりがひときわ目立っています。
5.Ribbons Down My Back [2:26] (J. Herman)
邦題「リボンをつけて」。アイリーンの帽子店で歌われる曲。
7.BEFORE THE PARADE PASSES BY [4:50] (J. Herman)
邦題「パレードが通り過ぎる前に」。人の世話ばかりしていずに自分も幸せになろうと改めて心を決めるドーリー。映画中最大のスペクタクルシーンで歌われる曲で、このシーンの取り直しをバーブラが要求したため、20世紀FOXの屋台骨が揺らいだと噂されるシーンですが、大味感は否めません。
9.LOVE IS ONLY LOVE [3:07] (J. Herman)
邦題「恋なんてものは」。ドーリーはどうすれば効果的にホレス夫人に収まれるか夜の作戦を練っています。この曲はもともと「ハロー〜」のために書かれたものではなく"Mame"のために書かれたものですが、バーブラは美しくドラマチックに歌い上げています。
11.It Only Takes A Moment [4:07] (J. Herman)
邦題「ほんの一瞬のこと」。アイリーンとの逢瀬がホレスにバレ、首を言い渡されるコーネリアスとバーナビーですが、既にコーネリアスとアイリーンの間には愛が芽生えています。バーブラは歌ってませんが、個人的にはこのミュージカルで一番好きなナンバー。
12.SO LONG DEARIE [2:36] (J. Herman)
ホレスに求婚されてもいないのに、いきなり自分から「結婚するなんてまっぴらよ」と言い渡すドーリー。大向こうを張ったバーブラの演技性たっぷりな歌唱が面白い一曲です。