土方医院通信 
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| ◆ 土方医院通信 11 (2009年10月12日) |
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今日から実践 痛みの漢方治療 今年も早、後2ヶ月で師走を迎えることとなりました。 本当に加齢とともに時間の経つのも何と早いことかと溜息が出てしまいます。 さて、私事ですが、最近、“今日から実践 痛みの漢方治療”(医歯薬出版:土方康世監修)という本を出版致しました。「痛みに漢方薬が効くなんて嘘でしょ」という知人の言葉がきっかけになりました。痛みと言いましても私は、一般外来の痛み治療、他の著者達はペインクリニック専門医師によるものです。私のパートは医師以外の一般の方に分かり易いように書きました。 最近、2刷りが発行されるという連絡を受け、やはり皆様興味を持って下さるのかととても嬉しく思いました。ご興味のある方は読んで頂くと幸甚です。 本文から、漢方が効果のある疾患と一部症例を抜粋引用します。 漢方薬は、慢性頭痛、肩こり、関節痛、舌痛、リウマチ、ゴルフ肘、打撲・捻挫、帯状疱疹、尿路結石、腰痛、下肢痛(閉塞性動脈硬化症)、ある種の癌痛などに有効です。 帯状疱疹痛(急性) 急性帯状疱疹は細胞性免疫力が低下したとき、たとえば、加齢、過労、免疫抑制剤、抗癌剤などの化学療法中などに発症する激しい痛みのある疾患である。バルトレックスなど抗ウイルス薬が有効であるが、治療開始が遅れると無効であることも多い。痛みが長引くヘルペス後神経痛(PHN)には有効な治療法がないと言われている。 中山は藤瘤(Wisteria floribunda)、菱の実(Trapa natans)、訶子(Terminalia chebulae)、薏苡仁(Coix lachryma-jobi)(WTTC)の熱水抽出物の末期消化器癌に対する有効性について報告している。我々は、このWTTCの加減法である、WTMCGEPP(藤茎:Wisteria floribunda、菱の実:Trapa natans、肉豆蔲:Miristica agrans、薏苡仁:Coix lachryma-jobi、霊芝:cultivated Ganoderma lucidum、梅寄生:Elfuinga applanata、オタネ人参:tissue cultured Panax ginseng、石榴皮:Punica granatum)を急性帯状疱疹に1日に6 dose投与すると速やかに鎮痛し、治癒に向かうことを報告した。これを服用すると、NK細胞活性が上昇することが多い。患者にあった体質改善薬と共に投与すると、体力増強とWTMCGEPPの作用との相乗効果が期待される。又、本処方を投与する際、神経ブロックなど現代医学的諸治療をした後或いは併用で投与するほうが、WTMCGEPP単独投与よりはるかに有効であった。恐らく神経ブロックなどによって、患部の血流が増加しており、生薬が効率よく到達吸収されているためであろう。PHNになると高齢者では生涯痛みに苦しむ例が多い。PHNに移行しないためには、現代医学的治療とともに漢方治療を併用するとPHNに移行が殆どない。漢方治療の併用はPHN予防の有用な選択肢と考えられる。 症例 73才男性(158 cm、65 kg) 急性帯状疱疹(眼部帯状疱疹) 数日間のバスツアーに出かけ、睡眠不足と過労状態が続いていた。帰宅後眼部に疼痛を感じた。どんどん悪化していき、水泡と湿疹をきたし痛みとともに、左顔面半分が腫れ上がり、6日目には眼部帯状疱疹と診断され、鎮痛剤と抗ウイルス塗布剤を投与された(VAS=8)。しかし更に悪化し、8日目に当院を受診した(VAS=10)。 ヘルペス発症9日目から本処方WTMCGEPP(5 dose/日)投与を開始した。投与開始2日目から改善し始め、眼裂が開き始めた。患部は痂皮化し始め、4 dose/日に減量した。痛みも減り(VAS=3)12日までには慢性鼻炎による鼻汁が著減し、疼痛も消失した(VAS=0)。18日目には就寝中に痂皮がとれ、皮疹も完治した。 普通は急性帯状疱疹の完治には3週間以上かかることが多く、本例では、WTMCGEPP投与後12日で無痛となっていることから、WTMCGEPPは抗ウイルス薬同等以上の効果が有った。なお複数症例で同様の経験をした。(VAS:考え得る最強の痛み:10,無痛:0 としたときの患者の訴える痛みの程度を数値であらわしたもの) 捻挫打撲の痛み 捻挫、打撲症は、痛みのために日常生活が非常に妨げられる。特に老人の場合、改善に時間を要し、寝たきりになることも多い。交通事故後遺症などにも有効で、現代医学的治療と併用すると治癒に要する期間が短縮することを経験した。 上述のように本病態には色々な処方が有効であるが、以下に我々の報告を概説する。 症例 67才女性 治打撲一方と八味地黄丸併用例 軽度骨粗鬆症を指摘されていたがある日交通事故に遭い、右臀部にひどい打撲傷を受けた。同日にこの2処方を服用し始めたところ、7日後にはVAS=10がVAS=2となった。事故後28日目にはこの2処方のみで無痛となった。看護師であり鎮痛剤を投与されたが、不要であった。 腰痛 症例 69才女性 某年5月14日初診:前年2度目の帯状疱疹で入院した。腎嚢胞がある。瞼、下腿から下が腫れぼったい。6年前、頭部強打し以後鬱状態が続いている。尾底骨、腰から膝裏にかけてジンジンした痛みが数年前からずっとある。つまずくと膝裏がピリッと痛む。5ヶ月前にバスのステップに足をかけたとたん、足裏激痛で動けなくなった。以後立ったり座ったりが出来ない。食欲正常、中絶2回、閉経は45才、子供は4人である。腰から膝裏にかけての痛み(VAS=8)があり、ときおり、頻拍発作がある。疎経活血湯合当帰四逆加呉茱萸生姜湯を投与。2週間後、腰から膝裏にかけての痛みがVAS=6、同処方継続約2ヶ月後VAS=4、 100日後VAS=3、140日後VAS=1と激減した。 尿路結石 尿路結石は尿の通路(腎臓内、尿管、膀胱、尿道等)に出来た小さな石が、尿路のどこかにつまり、激痛が起きる病態である。激痛のため、著しく日常生活の質(QOL)が低下する。痛みが強い時は救急車で運ばれたり、救急外来を受診することも多い。しかし入浴して温まると鎮痛することからも、温まることにより尿管など管腔臓器が拡張し、尿が流れはじめるからと推察される。よく使われる処方は、猪苓湯、五淋散などである。血尿を伴う場合は四物湯などを併用する。激痛には解急蜀椒湯がよく効く。 猪苓湯は頻回に尿意を催す、尿量減少、排尿痛、血尿などの症状に使う。処方中の猪苓、沢瀉、茯苓は利尿作用を持ち、物理的につまった石を流し出す効果がある。阿膠は腎・膀胱系に作用し止血する。滑石は消炎利尿する。 五淋散中の茯苓、沢瀉、木通、車前子は利尿し、当帰、地黄、芍薬は補血し、阿膠で止血するので血尿にもよく使われる。黄芩、山梔子、地黄は消炎効果を持つ。 解急蜀椒湯の蜀椒、乾姜、附子は温まることにより、石による尿路の通過障害が除かれ止痛効果が出るものと考えられる。いずれの処方も排石されるまで充分量、時には多めに例えば常用量の2倍量ほど服用することが、完治への近道と考えている。 症例 46歳男性(165 cm、57 kg) 初診:某年9月21日。現代医学による治療より漢方治療を希望し当院を受診した。 1ヶ月前から左下腹部鈍痛(朝10時から午後1時まで)が続く。痛みは鎮痛剤で治まるが、検査にて尿路結石(尿管中央部に石:8×1.5 mm)と診断される。猪苓湯加四物湯合五淋散、八味地黄丸で尿量増加し、半日後には腹部鈍痛が消失した。以後1~2年に1度、尿が出にくくなったり、尿線がほそくなったりしたがその都度、上記処方を各3分の1日量ずつを約1週間服用することにより違和感が消失した。引き続き2ヶ月間服用を継続して無症状になって休薬した。更に、最初の尿路結石発作から3年後に又再発したので、同じ処方の常用量を3ヶ月間服用して大きな石(5×15 mm)を排出した。 尿路結石には多めの漢方薬を服用して、尿路を温めて多量の利尿をつけて速く石を排出することに尽きるのではないかと考えている。 |
| ◆ 土方医院通信 12 (2009年11月19日) |
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風邪対策 風邪の季節になりました。風邪は疲れたり、冷えたりすると罹りやすいですし、人からもらいやすくなります。 風邪には葛根湯が良く効きます。胃腸の弱い人や、平素から冬でもじわっと汗ばんでるような人は、葛根湯の代わりに、桂枝湯や桂枝加葛根湯などが効きます。大切な点は、体質に応じた風邪薬を選ぶことです。 私自身、風邪をもらったかなと感じたときは、葛根湯を規定量の倍ほど飲みます。又、風邪が流行っているときは、予防的な服用で、葛根湯の朝1包服用を続けます。時には、怪しいなと思ったときは2包、3包と服用しますと不思議に罹りませんでした。やはり状態に応じて、時には沢山服用するのが風邪に罹らないためのコツかと感じています。 この話を患者さんにしますと、同じように実行されて、「家族中が今年は風邪で寝込まなかった」と感謝されることがあります。最近も当院の患者さんの子供二人がインフルエンザにかかり寝込みましたが、二人の世話をしている母親は、かかりませんでした。其の患者さんいわく「やはり先生、漢方薬効いているんですね。私、漢方服用以前はよく子供から風邪をもらいましたよ」とのことでした。 悪性の流感の様なときは、適切な治療が必要となります。私は、このようなときも漢方治療を併用すると、後遺症無く早く治ることを何度も経験しました。風邪には漢方薬が本当に重宝すると痛感しております。 |
| ◆ 土方医院通信 13 (2010年2月20日) |
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2つの体験談 立春が過ぎましたが、凍てつくような寒い日があったり、春のような温かい日があったりとこの時期は気候が不順ですね。 久しぶりの土方医院通信で本日は2つの体験談をさせて頂きます。 1)ビタミンCについて 非常な冷え性の私は漢方薬を常用していますが、もう一つ好きな物はビタミンCです。でもビタミンCはアスコルビン酸ですからとても酸っぱいのです。さらに私は胃腸が弱いせいか、一寸違和感もあります。1度に3gを服用すると胃痛すら感じることがあります。 困っていたとき、ある患者さんが、ビタミンCとパントテン酸Caの合剤のシナール1錠を3gのビタミンCと併用すると胃に全然堪えなかったと報告してくれました。私も早速真似をして、100%ビタミンC 3gとシナール粉末 1gを合わせて服用すると本当に何の違和感も無しに飲めました。 それからというもの、患者さんで100%Cで胃に堪えるという方にはシナール併用を勧めていますが、ほとんどの方が胃腸症状が無くなって飲めるようになったと喜んでいます。試しに3gずつ、朝昼晩と3回 9g服用しましたが、無症状でした。シナールの成分をみるとパントテン酸カルシウム、トウモロコシデンプン,白糖,カルメロースカルシウム,ヒドロキシプロピルセルロースなどが入っており、これが胃の中でビタミンCの作用を緩和しているのでしょうか。その患者さんに感謝しました。医師とはいいましても患者さんから教えられることは沢山あります。 2)ヨガの効用 私が40才を過ぎた頃から何故か体重が増え出し、洋服が窮屈になってきました。母に相談すると、祖母も母もそうでしたが、家系的に40才を過ぎる頃から肥満になるという話でした。さあ大変、洋服を全て作り替えるとなると出費も大変です。そこでヨガを考えました。 ヨガ教室に通うのは無理です。書店に行って、一番分かり易そうな本「3週間でできる初めてのヨーガ 佐伯和彦著 新星出版社」を選びました。それを一通りやって見たのですが、全部はやれません。ウエストさえ細くなれば目的は達成です。そこでウエストを細くする効果のありそうな、ポーズ3つを選びました。(1)三角形のひねりアーサナ、(2)ワニのアーサナⅠ技、(3)ひねりのアーサナⅠ技のポーズを30回づつ続けてやりました。すると2週間後にはウエストが6cm減っているではありませんか。でも体重は変わりませんでしたからウエスト周辺の筋肉の付き方が変わったのでしょう。以来しばらくはヨガを続けておりました。お陰で洋服の作り替えは不要となりました。 しかしこのようにつめてやるのは使い痛みで腰痛を起こす可能性がありますから、1ポーズ終われば10分休憩といった具合に休み休みする方が安全だと思います。 それから20年経過後のある学会発表2日前に、宿泊ホテルで発表用のワンピースを試着しようとしたところ、腰のあたりが窮屈で試着しにくいのです。慌てました。振り返るとその当時はヨガをほとんど休んでおりました。しらぬまに体重が増えていたのでしょう。翌日洋服を購入する予定で、ヨガの上記3ポーズ30回づつを30分間隔で3回やりました。翌日あの窮屈だったワンピースがすっと入って自分なりに納得のいく姿で、無事学会発表を終わりました。本当に驚きました。まさか一晩で腰の周りの肉付きが変わるなんて!!! でも、あまりつめて回数を多くやると腰骨を痛めるかも知れませんから休憩をとりながらすることが大切です。 |
| ◆ 土方医院通信 14 (2010年12月03日) |
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工学部から心機一転医学部に、そして漢方治療専門医師に 今、私は自費診療で診察していますが、私の漢方薬治療を求めて来られる患者さんの治療に充実した日々を送っています。そして、ささやかな幸せを味わっています。 思えばやっとたどり着いた感もぬぐえません。昭和36年、大阪大学工学部に入学した頃から、大学紛争は盛んになっていきました。大学院に進んだ頃は、機動隊が常駐しており、ある時など電気工学部の建物の一部を全共闘のメンバーが占拠し、それを解除しょうとした職員の方が亡くなられました。教授もお一人自殺されました。千里キャンパスも、白地に赤字で“企業の犬○○教授は出て行け”などピケが張られ、何故こんなことになっているのか意味が分からないという、ストレスいっぱいの毎日でした。企業と大学の共同研究など、今なら全く普通に行われていることが、問題にされたなど隔世の感があります。 早く学位を取得してけじめをつけるにしかずと研究に集中すると、この紛争のさなかに?と、研究室の人達から白い目で見られるといった、異様な雰囲気に包まれていました。学位を取得し、助手になりたいと希望しましたが、助手のポストは沢山余っていたにも拘わらず、ある教官から、暗に駄目であると示唆され諦めました。私が無能だったかもしれませんが、その後当分は女性研究者で助手になった人はいなかったこと、一般に阪大で女性が助手に残れるのは極めてまれであったことからすると、当時矢張り女性の進出は阻まれていたと思います。その年の夏、心機一転し、女性開業医なら男女差はないだろうと、関西医科大学を高校生と一緒に受験し29才で入学しました。 同時期、母が難病になり、漢方薬治療で助けられたのを機に漢方の勉強も始めました。記憶力の低下にはほとほと困りましたが、若い友人達にも助けられながら無事医師になることが出来ました。 医師になって間もない頃、従兄弟が倦怠感を訴え相談に来た為検査を進めたところ、GPT(ALT)が500以上あり直ぐ入院と言われました。しかし仕事の都合で数日身動きが取れないということで、必ず再診すると約束させ漢方薬を処方しました。数日後「非常に楽になったので検査をうけたらB型急性肝炎でGPTが200台に下がり入院の必要は無いと言われた」と報告しにきました。その後漢方薬のみで3ヶ月後の検査で完治していました。これが私自身が漢方薬の効果を実感した初めての経験でした。入局後肝臓病の入院患者を沢山受け持ち、まだ漢方薬の効果は認識されてなかったため、治療に使えない歯がゆさを2年間我慢して、思い切って漢方専門、東洋堂土方医院の開業に踏み切りました。 しかし一介の名も無い漢方専門医のところに、新患がどんどん増えるわけで無く、漢方の認知度は低く、如何にして医院経営を続けて行くかに悩みました。やはり現代医学の医師としての医学の研磨、漢方治療の効果の発信しかないと考え、学会発表、論文投稿をする決心をしました。幸いにして阪大でのトレーニングが役立ち、人生無駄は無いことを実感しました。 大学病院でたまたま肝炎が大流行した時期に当たり、随分データの集積ができ、学会発表に直結しました。ひょんなことから、自分の無知で学会場で大恥をかきましたが、その研究を進めるうちに、相手の研究方法に誤りがあることが判明し、更に進めて学位取得につながりました。この間随分色々な先生方にお世話になりました。禍福あざなえる縄の如しを実感しました。 漢方研究もやはり学会発表、投稿、又、日本だけが医師が漢方治療をしている特異な国であるため、世界に漢方の効果を発信したいと思い続けていたため、海外での発表、投稿も心がけました。顕著な結果が得られたわけではありませんが、日本漢方の世界への紹介の小さな一歩となれば良いと考えました。 最近では優秀な先生方の海外での発表も相次ぎ、嬉しい限りで、最近はむしろ同伴者として海外旅行を楽しんでいるのが実情です。 最後になりましたが、漢方薬治療の適応に対する私自身の考えをまとめます。 ①現代医学で速やかに病気が改善する患者さんには、未病の治療を希望しない限り不要。 ②現代医学的治療で副作用が出て、他に治療の選択肢が無いとき。 ③現代医学で改善しにくい、例えば難病指定疾患(時に劇的に有効)。 ④漢方薬の副作用の頻度は現代医薬に比べ少ないが存在するので、投与後の経過観察が重要。時に検査が必要。中止すれば原則治癒する。違和感など感じたときは連絡してもらう。しかし、副作用の出ない人の方が多いので、必要な処方の投与を遅らせてはいけない。 ⑤出来るだけ血液検査などで効果を確認する。 ⑥うまく行かないときは精査をやり直し他医、他施設への紹介を怠らない。 常々、慢性疾患で現代医学的治療効果がはかばかしくなく、なすすべなしと諦める前に是非漢方薬をお試し頂きたいと願ってます。 |