今年はメルセ祭の時期をバルセロナで過ごすことができました。この時期、旧市街にある私の住まい周辺には群衆が押し寄せ、あらゆる機能が停止してしまうのですが、それを補って余あるほどの様々な催しを楽しむことができました。中でもサン・ジャウメ広場で行われた「Castellers(人間の塔)」は圧巻でした。
人間の塔を見物する際は、観衆も傍観者でいるわけにはいきません。人間の塔が作られていくに従って、そこに居合わせた人々の間には緊張感が漂い、まるで観衆の視線や願いによって塔が安定し、最初は不可能だと思われていたことが成し遂げられるかのように、皆が人間の塔に参加しているような気分になります。
これほど人々を惹き付ける人間の塔ですが、もしその準備や実行の際に「seny(知恵)」をもって築かれなければ、単なる「空中にそびえる塔」にすぎないでしょう。一本の人の柱の重みは、仲間一人一人の大変な「Forca (力)」なくしては支えきれません。特に、塔全体や「folre(補強)」のメンバーを支える「pinya(団結した集団)」の力は大変なもので、柱となっている人々や「pinya(団結した集団)」の上に築かれる人の輪をしっかり安定させるためには相当な力が必要です。
メンバー全員が力を出し合い、互いに信頼し合って塔を築きますが、「equilibri(バランス)」も塔を安定させるための大切な要素です。また、塔が高くなるにつれ、「valor(勇気)」も必要になります。特に、てっぺんの「casteller(塔の一段)」となるために人の柱をよじ登っていかなければならないメンバーがそうで、またメンバーの中で最年少の「anxaneta(塔の頂上に登る子ども)」は、塔の最上部に立ち、また柱を構成している人々の背中を滑り降りなければならず、手腕と勇気を示さなければなりません。
「gralles(カタルーニャのオーボエ)」の音楽は「castell(塔)」を築き上げる過程を表現しますが、瞬間瞬間の緊張感を保ち、そのリズムとメロディで「castellers(人間の塔)」をサポートします。
「castell(塔)」の一段が「降りてくる」と、観衆はぐっとこらえていた息をつくことができ、拍手と歓声が響き渡ります。それはまるで、個人の功績など存在せず、自分の安全は他者の手中にあり、自身の手には他者の安全が託されていることを知っている男たち、女たち、そして子どもたちに対して敬意を表する儀式のようです。力と物理的、精神的なバランスが共有された時に、人間の塔は築き上げられます。美しいものは常に複数からなり、失敗や成功も決して孤独なものではないのです。
目的を持って何かに「参加し」、共通のプロジェクトを「作り上げ」たり、「美を感じ」たりする感情は、他の人々との調和の中に息づく何かであり、遠い昔に「colla de sardanes(サルダナスの輪)」に入った時に感じた何かなのですが、「Castellers(人間の塔)」は、カタルーニャ精神のドラマチックな表現であると言えるでしょう。
「人間の塔」について、さらに詳しく知りたい方は、下記のサイト(カタルーニャ語のみ)をご参照下さい。
http://www.altcamp.info/castells.htm
http://www.mallorcaweb.net/castellers/wp/
http://www.moncasteller.com/
http://blogs.ya.com/falques/