Yellow People meets Black People!

ジャッキー・チェンの最新作『ラッシュアワー』

高校時代に交換留学生としてアメリカに行ったことがある友人がいる。むこうの学校での最初の授業のとき、挨拶代わりに何か出し物をやらなければならなくなった。しかたなく彼は薄い板を何枚か用意して、しかも真ん中にあらかじめ切れ目をつけておいて、それを壇上でブルース・リーよろしく「アチョー!」といって割ってみせると、クラスの生徒たちはドッとわいて大ウケ。そのおかげで彼はアメリカの学生と打ち解け、楽しく留学生活を送ったのである。

たぶん彼のカラテは我々が見たらすごいインチキ臭いものだっただろう。しかし「日本人=カラテ」というイメージを持つアメリカの学生にとって、彼のカラテにはすごいリアリティーを感じたはずだ。そしてイメージ通りのことをやったせいで、得体の知れない東洋人であった彼が急に身近なものに感じてきたのである。

つまり彼は図らずも日本人に思われているステレオタイプなイメージを逆手にとってそれを利用していたわけだ。

ジャッキー・チェンの新作『ラッシュアワー』は、アクションのジャッキーと、話術のクリス・タッカーというふたりの芸達者が繰り広げるドタバタアクションコメディー。

東洋人刑事ジャッキーと、西洋人刑事クリスがチームを組む。はじめはお互い衝突しあうが、やがて理解しあい協力して事件を解決するというストーリーは、『ブラックレイン』のマイケル・ダグラスと高倉健がやったパターンにそっくり。

さらに、カンフーをやり実直で融通が利かない東洋人、ダンスがうまく行動力はあるが協調性がない黒人という設定は、それぞれの人種に対して感じるイメージ通りで、もろステレオタイプ。

だからといって『ラッシュアワー』がダメだといってるわけじゃない。こいつらふたりともすごい芸人だから、そんなストーリーの稚拙さなんか全然気にならないし、設定の単純さがかえって彼らの芸を引き出してくれている。

たしかに、人種や民族や文化に対するステレオタイプなイメージというのは、偏見の助長にもなりうるわけで、ほとほとうんざりする人間の習慣だ。

しかしジャッキーはクリスにカンフーを教え、クリスはジャッキーにダンスを教えるうちにお互い気持ちが打ち解け、協力しあうという『ラッシュアワー』でのシーンを見ると、異文化間での対話においては、むしろちょっとした潤滑油にもなりうるかも知れないという気がしてきたのである。

われわれも日本人のたしなみとしてカラテとか柔道とかやっておくといいかも。外国に行ったとき、彼らのイメージ通りのことをやってみれば、意外にほっとして心を開いてくれるかもしれない。