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中野独人
『電車男』
新潮社、2004.10
身長172、体重68。
22歳、営業マン3年目。
ファッション:アキバ系
趣味:秋葉原、ネット、美少女アニメ
彼女いない歴:=年齢
そんな電車クンが、ある時ある女性にほのかな恋心をいだく。
それをかれが、ネットに書き込んだものだから、大さわぎ。
このチャンスを逃すな、しりごみするななど、激励なんだか興味本位のたきつけなんだかわからない書き込みが、どしどしかれに返ってくる。
電車クンも、それでいつしかその気になって、無謀にも、絶対不利な恋に挑みだす。
電車、がんばれ! オレたちがついているゾ!
と、その後は、応援の書き込みと、電車クンの報告が更新されてゆく。そしてネットを舞台に、電車クンの恋のアタックのようすがつぎつぎと展開される。
はたして恋の行方は?
…というのが、『電車男』のあらすじなのだが、これ、ふつうに散文で語られていくお話ではない。
ネットの書き込みのなかで展開していくから、ネット特有の誤字・脱字・絵文字のなかでお話がすすんでいく。
登場人物も、すべて仮名・匿名の不特定多数という、顔の見えない不思議な世界。
これがなんと、じっさいにあったお話らしい。
(さて、ここからは本を読んだ人に話してみたいことなんだけど…)
高校を卒業して数年というのは、男にとって人生最悪の期間だとおもう。ほんとに。
高校3年生まではそれなりに楽しくやってきた。でも、卒業と同時に、それまでチヤホヤしてくれた女友だちや後輩がいなくなり、同年代の女性たちはいつの間にか年上に目がいくようになっていて、自分なんか眼中になくなっていたりする。
だったら、そこでがんばって、カッコよくして相手にされるようになればいいわけだが、彼女たちに合わせて、おしゃれなバーやホテルに行こうにも、それに合う服を持っていないし、そういう服をどこでどう買ったらいいのかさえわからない。勇気を出して百貨店でブランドものを買おうとするんだけど、信じられないほど高くてびっくりする。そのうえ、店員の笑顔に気おくれして逃げ帰ってしまう。そんな自分がなさけない…
落ち込みながら、オレってなんてダメ男なんだろうなんて考え出すと、あらためて金もなく、将来もわからない自分を思い知る。
おちこみついでに(というかトドメに)、見た目がダメぽなことや、学歴的にB級だったりすることまでが、頭の中でオーケストラ状態。
自分は、なんて無力で無意味で、空虚で希望のない男なんだろう…
でもでも。
運がいい男には、いろいろな偶然が重なったりして、彼女ができたりする。
それが友人(この本だとネットの住人たち)のおかげだったりする。そんなしあわせなパターンもあるだろう。
そして女性のなかには、世慣れない男がなんとか必死に脱皮しようとするのを手助けしようとするタイプがいる。
母性本能が強いのか、ただ好奇心が強いだけなのかわからないけれど、そういうことがおもしろかったりするタイプ。
まぁ、うちに弟がいたりして年下の男の世話を焼くのに慣れてる場合も多いんだろう。あるいは、いわばママごとのような感覚なのかもしれない。
でも基本的に、世話の焼ける男性を大事にしたくなる、「愛しい」という感情のわかる女性。
そういう女性の助けをかりて、男はこの時期に、ひとつもふたつもみっつも、脱皮するのだと思う。
世間の多くの人たちには、多かれ少なかれ、この青春の脱皮の思い出があるのでは? 脱皮できた男性だったり、それを手伝った女性だったりして。
男にとってその思い出は、いま思い出そうとすると、やめて〜ッ! こっちくんな〜ッ! って叫びたくなるような恥ずいものだったりするけれど…
でも、そういう脱皮は、いつまでたっても心のどこかで憧れてるものじゃないだろうか。年齢、年収、既婚/未婚、童貞/非童貞とかに関係なく。
結局、そんなんで『電車男』を読んで涙にむせかえりながら笑ってしまったんだと、わたしはおもった。
ほんと、これサイコー。
ちなみに、わたし的には『電車男』のエンディングBGMは、岡本真夜の「Tomorrow」がイイと思います。
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