ふたつの、「チャイナタウン」
米西海岸のチャイナタウンを舞台に、中国人と白人が争う、しかも中国人側の主人公はジェット・リー。

設定がこういっしょでも、中国人がつくるのと、アメリカ人がつくるのでは、まったくちがったチャイナタウンになる。

中国人がつくったのはツイ・ハーク製作で、デブのサム・ハン・キンポーが監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ』1996年作品。

アメリカ人が作ったのは、メル・ギプソン、ダニーグローバー主演の『リーサル・ウェポン4』

『ワンス・アポン…』には、ゴールドラッシュに惹きつけられて海を渡った中国人たちが、異郷の地で、白人の差別に耐えながら肩を寄せ合いたくましくコミュニティを形成するようすが、笑いとともに同情的に描かれている。

いっぽう『リーサル…』に描かれる中国人は、中国人マフィアに非人間的な条件で働かされる密航者か、冷酷非道なマフィアかでしかない。ひところまでナチ・ドイツやロシア人がになわされた役どころが、いまはすっかり中国人になってしまった。

『リーサル…』が娯楽映画なのにまったくいたたまれないおもいがするのは、ストーリーばかりではない。クレジットのところで、背後にスタッフたちのアットホームな「記念写真」が映し出される。けれど、あれだけ出演者がいるのに中国人はほとんどでてこない。スタッフの家族的ムードは、中国人を排除したところでおこなわれていたかのよう。たのしげなようすが、かえって、薄ら寒かった。


ツイハーク&サム・ハン・キンポーのコンビが描く『ワンス・アポン…』には、黄色人種への差別、いわゆる黄禍論のようすが描かれている。

しかも、主人公黄飛鴻(ファン・フェイホン)が華僑に民族主義をたたきこむところもあっておもしろい。

ちなみに、かれらは孫文と同世代人の設定である。つまり、中国が他国からの遅れを痛感し、民族意識に目覚め、革命・建国へとむかう時代の一コマでもある。