ミトコンドリアDNAが明かす 「わたしたち日本人はどこから来たのか」
宝来 聰(ほうらい さとし)
岩波 科学ライブラリー 52
『DNA人類進化学』
岩波書店 1997.7
NHKの「驚異の小宇宙・人体III・遺伝子、第3集、日本人のルーツを探れ 人類の設計図」を観ていたらびっくり! 日本人の起源がDNAの分析でわかってきたというのだ!
しかも!
これまでは、渡来人「弥生人」が先住民「縄文人」を辺境においやってしまったぐらいで片付けられていた「日本人」像が、じつは大陸から渡ってきた多様な人たちから成り立っていることが実証されたのだ。すごい!
というわけで探してみたのが、この本。
宝来センセイによると、韓国や中国にはそれぞれドミナントなミトコンドリアDNAがあるのに、日本本土では、とくにドミナントなものがない。つまり系統的にさまざまな人たちから成り立っているのである。
また、これまで、大陸から渡来した弥生人によって分断され、北に追いやられたのがアイヌ、南に追いやられたのが琉球人といわれてきた。しかし、アイヌと琉球は少なくとも1万2000年以上まえに分岐しており、紀元前3世紀以降に渡来してきた弥生人によって分断されたんではないという。
1万2000年前にそれぞれ日本に住み着いたアイヌと琉球人。そこへ紀元前3世紀以降になって渡来し、稲作をはじめた中国・朝鮮系の人びと。こうした人たちの子孫がわたしたちなのだ。
それにしても紀元前3世紀以降の大陸からの渡来って、それ、秦の始皇帝のころの、徐福伝説じゃない?
ドクター 宝来 聰
医学博士。専門は人類進化学、人類遺伝学。
国立遺伝学研究所助教授、総合研究大学院大学助教授。