野田正彰 

『戦争と罪責』

岩波書店 1998

第二次大戦から50年以上たったにもかかわらず、戦争時代のことが、内外問わずますます問題となっているのはどうしてであろうか。

東西対立の冷戦構造によってそれまで棚上げされていたものが、ここへ来て噴出しだしたということがよくいわれる。

しかしそれだけではない。

先の世代だけで水に流すことは決してできない、次世代へ脈々と引き継がれてしまう「歪み」のようなものがあるのだと、50年という長い歳月を経てようやく人々に気付かれ始めたからではないだろうか。そしてそれを冷静に議論するのにも50年という歳月がかかったということではないか。

被害者側でいえば、アウシュビッツを生き延びた人々が、年をとるにつれて不眠、フラッシュバックなどに悩まされる「ホロコースト症候群」というのがある。そしてそれだけでなく、その次の世代である二世、三世まで情緒障害や抑鬱状態になる者が多い。

加害者である日本の戦後世代もまた「精神的に強張っている」。確かに戦後世代は親の世代の文化を摂取して育ったとはいえ、批判や反抗をしてきた。

しかし、戦後世代は親の本当の姿を知っているのだろうか? 戦前軍人だった親の世代のほとんどが、戦争で何をしたか、戦争でいかに精神的に歪んだか、振り返って子供に伝えようとはしなかったのである。

そのために戦後世代の精神はどこか表面的な浅薄さが付きまとっている。そして現在にいたってそこに悩む人が増えている。

精神医学が専門である著者は、戦争は今も続いているということを「こころ」という見地から見事に分析した。ちなみに、「戦争」のさらなる理解のために、これと逆の立場で書かれた小林よしのりの『戦争論』とあわせて読めばその認識はさらに深まることであろう。