村上兵衛

『再検証「大東亜戦争」とは何か』

時事通信社 1992

中国にいると、日本人として必ず出てくる気まずい話題が「戦争」だ。

「この前の戦争をどう思う」とか「日本は戦争で悪いことをしました」とか言われると、何と答えていいのか戸惑ってしまう。「すいませんでした」と言えばいいのだろうか。

べつにあやまるのはいいけれど、しかし、「この前の戦争」の一体どの部分をあやまって欲しいのか。全部なのか部分なのか。そもそも彼らは「この前の戦争」についてどう認識しているのだろうか。歴史における正義とは? 倫理とは?

もしかして中国人にせよ朝鮮人にせよ、自国政府のプロパガンダのために歪んだ歴史教育をされてはいないか? それを知らないで謝るのは何だか嫌な感じがする。

同じようにそもそも私たち日本人は「この前の戦争」についてきちんと認識しているのだろうか。なぜ南京で虐殺をしたのか? なぜアメリカと戦ったのか? なぜ中国を侵略したのか? なぜ日清、日露戦争をしたのか? なぜ開国して明治維新がおこったのか? 我々もまた、日本が行った侵略・虐殺行為の前で、あいまいな認識しか持ちえていないのではないか?

『再検証「大東亜戦争」とは何か』はそんなあいまいな「この前の戦争」を改めて考えるための良書だ。この書はどうして日本が「大東亜戦争」をおこしたか、「大東亜戦争」でなにをしたか、そもそも「大東亜戦争」とはいったいなんだったのかを検証していく。

ハワイのカメカメハ大王の国がアメリカのごろつきにサクッと滅ぼされてしまう「食うか食われるか」の時代にあって、世界で唯一、西洋と対抗しようとした黄色人種がいたという事実はアジア各民族に独立への勇気をもたらしたのは多分ただしいであろう。

日本人というアジア民族がいなければ、西洋民族による非西洋民族への蔑視や侵略は現在と較べてもっとひどいことになっていたかもしれない。無論、だからといって日本が戦争でした侵略行為が正当化されるわけではない。ただこの書を読むと当時の日本人は特に愚かでも鬼畜でもなく、今の日本人と同様、普通の理性の持ち主であったということがわかる。そして今の日本人と同様に聡明でもなかったということがわかってくるのだ。

「なぜ日本人は先の戦争で中国人にあんなひどいことをしたのか?」と中国で問われたら、こう問い返したい。

「自国の文化の中に生きていると、かえって自国のことが分かりにくい。あなたが考えたほうが正確な答えが分かるかもしれない。ただ、その場合、日本人はあなたと同様に鬼ではないし、愚かでもない、そしてあなたと同様に聡明でもなかったことを前提にして考えて欲しい」と。