中華って何?

茂木敏夫

『変容する近代東アジアの国際秩序』

山川出版社 1997

「中華」って何? ふだんよくぼくらは「中華」という言葉を使うけど、この言葉ってよく使うわりにはアイマイな概念だ。「中国」は中華人民共和国という意味だろうが、「中華」というと、文化的には儒教と道教、場所的には中華人民共和国に加えて台湾とか香港とかシンガポールとか、さらにはベトナムやタイも韓国も含まれてくるし、世界的に見れば日本も含まれていると思われるが、よくわかんない。

本書によると、近代以前の中華世界とは、中国およびそれに形式的に帰属する周辺諸国のことをさす。中国への帰属を認めた国家の首長は中国皇帝のお墨付き与えられ、中国にとっては、これら属国が、遠方の国家からの攻撃に対する防壁になるので一挙両得のシステム(朝貢-冊封体制)だった。

中国の皇帝は周辺諸国に対し、朝貢の儀礼をさせて「属国」という立場を明確にさせた。そのかわり朝貢の貢物よりも上回るお返しをあたえた(朝貢と回賜)。これは上帝の恩恵を蛮族に施してやるという意味がこめられている(徳治)。

西洋列強に対しても始めはそういう気持ちでやっていたものだから、不平等条約を締結しても、蛮族に恩恵を施しているというぐらいに考えて、あまり気にしていなかったらしい。でもだんだん、ボコボコに殴られたあとで「今日はこのぐらいで勘弁してやる」と捨てぜりふをはくギャグさながら、シャレにならない状況に追い込まれてくるのだった。

中国が、自分のおかれてている危うい立場にようやく気づくのは、属国のひとつと考えられていた日本が近代化に成功し、中国本土を脅かすようになってからである。

近代以前の「中華」はこうして崩壊していったわけだけれども、しかし中華世界の残像は今でも色濃く残っているというわけだ。

本書は教科書で有名な山川出版社が出している「世界史リブレット」シリーズのひとつ。近未来の歴史教科書改編に備えるために作られたのだろう、このシリーズには最新の歴史研究の成果がふんだんに盛り込まれているので面白く、かつわかりやすい。ちなみに『アジアのナショナリズム』もこの「世界史リブレット」シリーズ。