直情的な在米華人を使う中国政府と、

右翼の暗闘の末…

朝日新聞 

「米で50万部『ザレイプオブ南京』 日本語版の出版延期」

1999年2月19日 朝刊

アメリカで50万部のベストセラーとなり、日本の雑誌でも紹介されたアイリス・チャンの「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」の邦訳本の出版が延期された。

内容は南京虐殺を相当こっぴどく批判しているものらしい。

これを出そうとしていた柏出版は、最近の日本での研究成果などもあわせて、「虐殺派」と「まぼろし派」の両論を紹介する形の本にしようとしていた。これにたいしてアイリス・チャンは「原著にない」訳注や解説などつけるなと反対したという。

アイリス・チャン 1968年アメリカ生まれの台湾系華人。シリコンバレーを中心に日本の戦争犯罪謝罪を求める運動をおこなう中華系アメリカ人(ABC: American Born Chinese)の広告塔的存在。

あるメディアのインタビューに答えて「(ユダヤ人大虐殺よりどっちがひどいということじゃなく)何が起こったのか真実を知ることが大切」といっているけれど、アイリス・チャンにとって自分が調べたもの以外は「真実」ではないらしい。

憎しみをあおるような扇情的な記事ばかりでは、たがいの感情を害することになるだけということを、この若いアメリカ人は判っていない。あるいはわざとそうしているかだ。

先ごろ発売されたSAPIO (小学館 1999.2.24号)に掲載された高濱賛氏の記事によると、アイリス・チャンらの調査研究費は中国政府や台湾の財団が支援しているとのこと。

アイリス・チャンが若いアメリカ人にありがちな直情さのために両論併記を許せないのか、それともスポンサーである中国政府の意向なのか、わかったものではない。

一方、柏出版には右翼団体から「出版すれば何らかの行動を起こす」という脅しがあったという。

そうなると柏出版としては両論併記もダメ、そのまま出版することもダメで、出版を延期するしかない。

血気にはやる在米華人をつかう中国政府 VS. ヤクザそのものの卑劣な右翼。

そのあいだにはさまれた柏出版にこころから同情する。


インターネット版朝日新聞
asahi.com に掲載された記事概要

「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」の日本語版の出版延期

日中戦争の1937年末から翌年にかけて、旧日本軍が多数の南京市民らを虐殺、暴行したとされる「南京事件」を告発し、米国内でベストセラーとなった「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」の日本語版の出版が延期された。原作の掲載写真の信ぴょう性や過激な描写に対して批判があり、東京の出版社が改訂を打診した。しかし、著者側が原作に忠実であるよう求めて応じず、出版交渉が暗礁に乗りあげたためだ。この間、出版社が脅迫されるなど不穏な動きもあった。

著者は68年生まれの中国系米国人ジャーナリスト、アイリス・チャンさん。原作は97年末に出版され、米紙大手の書評やテレビで激賞された。これまでに約50万部が売れているという。中国と台湾でも翻訳されている。

冒頭で「身の毛のよだつ数々の物語も、その残酷さで比較できるとすれば、第2次世界大戦中の南京大虐殺ほど大規模で苛烈(かれつ)な残虐行為も歴史上まれだろう」と記し、南京陥落までの経過や虐殺の模様を、元兵士の回顧録や内外の学者の見方などを交えながら描写している。

一方、昨年春ごろから、記載の犠牲者数やその根拠、掲載写真の真偽について日本の月刊誌などが批判を始めた。「首切り」のシーンや性犯罪に関する10枚以上の写真が「事件に関係ない」との分析もあった。4月には、斉藤邦彦駐米大使が「不正確で一方的な見解だ」などと発言。中国の在米大使館が「南京大虐殺は歴史的事実」と反論する事態にも発展した。

出版元の柏書房によると、チャンさんは固有名詞の間違いなど約10カ所の修正には応じたものの、訳注や解説を付けることについて「原著にない」などの理由で拒否したという。

そこで柏書房は、国内の南京事件の研究成果や、月刊誌に登場した批判を転載して別の本にまとめて同時に刊行し、英語版も出そうとした。

出版予定がチラシなどで広まると、柏書房に出版取りやめを要求する電話が寄せられるようになった。2月初めには「出版すれば何らかの行動を起こす」などと、右翼団体を名乗る差出人から脅迫状が届いた。

そんな中で、チャンさん側が最近、「別の本が出ることは承知していなかった」と出版差し止めを求めてきたため、柏書房は「不十分な形では出したくない」と2月末に予定していた刊行を延期した。

朝日新聞はチャンさんに経緯を問い合わせたが、18日夜までに回答はなく、関係者には「(柏書房側から)解釈に関して書き直したい個所があると言ってきたので、翻訳の枠を超えていると返事をした」と説明しているという。


1999年2月23日の国会でも、自由党の泉信也が文部省官僚を呼びだし、「南京事件の犠牲者が教科書に推計20万人とあるのは根拠がなく、嘘ではないか。いろんな説があるなら『わからない』と書け」といっていた。20万人は多すぎて、子どもがこれを学ぶと愛国心に影響するということらしい。

教科書を審議している人たちの7割は、現場の先生だという。つまり日教組のメンバーだ。

日本での南京の犠牲者数の公式発表は、保守と革新のつなひきのすえ、20万人で落ち着いているということか。


2004年11月11日(死亡は9日)
[著者の訃報]

色を変えた部分に、各紙の特徴がでています。

アイリス・チャンさんが死去、自殺か 「南京虐殺」告発
旧日本軍の南京大虐殺を描いた中国系米国人の作家アイリス・チャンさんが9日、米カリフォルニア州サンタクララ郡の道路脇に止まっていた車の中で死亡しているのが見つかった。地元警察が10日、明らかにした。銃で頭を撃っており、自殺と見られている。36歳だった。
AP通信によるとチャンさんは最近、神経衰弱で入院するなど、うつの傾向が見られたという。
旧日本軍が日中戦争当時、多数の南京市民らを虐殺、暴行したとされる事件を告発する「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」を97年に出版し、ベストセラーになった。
朝日.com (11/11 13:09)
http://www.asahi.com/obituaries/update/1111/003.html

「レイプ・オブ・ナンキン」の著者、自殺か
【ロサンゼルス=森田清司】AP通信によると、旧日本軍による南京事件(1937年)を題材とした「レイプ・オブ・ナンキン」の著者の中国系米国人アイリス・チャンさん(36)が、米カリフォルニア州ロスガトス近くに放置された自動車の中で死亡しているのが見つかった。地元警察が10日発表した。銃で頭を撃って自殺したとみられる。
米ニュージャージー州生まれ。AP通信の記者などを経て著述業に入った。中国系移民の歴史を描いた作品もある。最近はフィリピンでの日米戦を題材とした作品に取り組んでいたが、うつ病で入院し、退院したばかりだったという。
読売新聞(2004/11/11/19:25)
http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20041111i313.htm

アイリス・チャンさん死去、自殺か ザ・レイプ・オブ・南京
【ロサンゼルス=岡田敏一】日中戦争中の南京事件(1937年)をセンセーショナルに描き、その後不正確な記述や偽写真の使用が問題となったノンフィクション作品「ザ・レイプ・オブ・南京」(1997年出版)を執筆した中国系米国人女性作家、アイリス・チャン氏(36)が、カリフォルニア州サンタクララ郡で死亡していたことが10日、確認された。状況から自殺とみられる。
AP通信などによると、捜査当局者の説明では、自宅近くの路上に駐車していた車の中で9日朝、死亡しているのを通りかかったドライバーが発見した。
検視の結果、頭部から銃弾1発がみつかり、捜査当局は自殺と判断した。
チャン氏はサンノゼで夫と2歳の息子との3人で暮らしていた。関係者によると、最近は、第二次世界大戦中、フィリピンで日本軍と戦った米兵の物語を執筆するため取材活動を続けていたが、体調を崩して一時入院。退院後もふさぎ込むことが多かったという。
チャン氏は1968年、ニュージャージー州プリンストン生まれ。米イリノイ大学(ジャーナリズム専攻)やジョンズ・ホプキンス大学の大学院で学んだ後、AP通信やシカゴ・トリビューン紙で短期間、記者として働いた後、25歳の時に初の著作「蚕の糸」を出版。97年11月に「ザ・レイプ・オブ・南京」を出版した。
産経Web (11/1116:47)
http://www.sankei.co.jp/news/041111/dea073.htm