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孫文はダメ男? 最新の研究成果で思索者たちを見る
佐藤慎一編 『近代中国の思索者たち』 大修館書店 1998.12 本書は近代中国を生き、そして中国近代の形成に尽力した思想家20人をピックアップ、日本の気鋭の専門家が最新の研究をふまえて解説したものである。 その20人とは、魏源・康有為・楊文会・譚嗣同・厳復・梁啓超・章炳麟・孫文・師復・蔡元培・陳独秀・李大しょう・胡適・魯迅・戴季陶・顧維鈞・梁漱溟・馮友蘭・顧頡剛・毛沢東である。 このラインナップをみると、有名どころから、これまであまり注目されなかった人まで幅広く押さえてあるのがおわかりであろう。そして有名人であってもこれまでのイメージ通りの解説でなく、別の一面にスポットライトを当てているので得るところが多い。 たとえば孫文は建国の父として誰からも尊敬される人物というイメージがあるが、本書ではダメ男ときっぱり言っている。孫文は革命家としても彼の指導する起義はことごとく失敗しているし、政治家としても南京臨時政府は全国を統一できず、袁世凱に権力を譲らなければならなかった。思想家としても矛盾に満ちたものであって、民主主義者として位置づけるには頭を抱える主張が多かった。 楊文会・戴季陶・顧維鈞・梁漱溟・馮友蘭・顧頡剛といったこれまで注目されなかった人々も、仏教・民衆運動・外交・儒教・哲学等の見地から、今日と未来の中国を形成する上で欠かせない重要な思索を行っていたことが明らかにされている。 いずれにせよ近代を生きた彼らは、東洋と西洋、新と旧、停滞と進歩といった近代中国にまつわる問題を、それぞれの立場から真摯に考え、これらをどうとらえていくか悩み抜いていたのだ。 現在から過去を見た場合、結果を知っているだけに、現在に至るまでの道を単純に、直線的に見てしまいがちな我々の認識を、本書は戒めてくれる。と同時に、これから研究者が抱えてゆくであろう問題意識の所在も本書は示唆しているので、知的な余韻の残る良書といえるだろう。 |