中国で映画化決定! 

謝晋監督で2000年春、公開予定!

ジョン・ラーベ

『南京の真実』

講談社 1997.10

本書は「南京事件(南京大虐殺)」発生前後、つまり1937年10月から翌3月まで、現地に滞在していたドイツ人ジョン・ラーベ氏が書き残した日記、大使館への手紙、新聞記事、手紙、写真などをまとめたものである。

従順なナチス党員であったラーベ氏は、ドイツに帰国したのちゲシュタポから「いかなる講演も、いかなる書籍の出版もしてはならない」とされ、貧困のうちに1950年に亡くなっている。彼の日記である本書が孫の手により日の目をみることになるのは、つい1995年のことである。

ジョン・H・D・ラーベ氏

「南京事件」については、いまなお諸説紛糾している。事件はなかったとする「まぼろし派」と、あったとする「大虐殺派」のあいだで論争が絶えず、犠牲者数も中国の発表では30万人、東京裁判では20万人、「いや数万だ」という説もあり、一定していない(ラーベ氏によれば「およそ5万から6万人」と推測されている)。ちなみに日本の教科書では「推計20万人」になっているらしい*1。

「事実」は政治的な意図によりさまざまに作り替えられており、わたしたちがよく目にする写真ですら合成されたものであるふしがあり、安易に信じることができない(小林よしのり『ゴーマニズム宣言』p151-167)。

なにを信じたらいいのかわからないなかで、日本人でもなく中国人でもない、欧米人による報告ならいくらか客観的といえるかもしれない。そのなかで、中国に武器と軍事顧問団を送り、日本と防共協定を結んでいたドイツ人による日記という点では、本書は独特の位置を占める。

発見されたラーベの日記

ラーベ氏は陥落した南京において外国人と中国の非戦闘員を囲う地域として「安全区」をつくり、日中両国と本国のヒトラーに、その安全の確保を懸命に訴えつづけた。また日本兵によるレイプが行われそうだと聞けば駆けつけ、卍の腕章を見せつけ、日本兵を蹴散らす。難民のために食料や、防空壕を提供する。こうしてラーベ氏は多くの中国人の命を助けた。

本書に登場する日本兵は、ひたすら姑息で醜い。レイプしかけたところをラーベ氏にみつかり、あわててこそこそ逃げ出すさまや、塀を乗り越えて侵入したところを、どなられて、また塀をのりこえてかえっていくのはいいほう。略奪の証拠を消すために来る日も来る日も放火をつづけ、気まぐれに強姦・殺戮をするようすは、憤りがこみあげる。これが自分の国の祖父たちかと思うと、涙が出る。

そこで考える。祖父たちの蛮行を読み、涙が出るのは「自虐的」だろうか。祖父たちの罪を責めるのは「不孝」だろうか。中国の人に謝りたいとおもうのは「プライドがない」のだろうか。

*1について

1999年2月23日の国会で、自由党の泉信也が文部省官僚を呼びだし、「南京事件の犠牲者が教科書に推計20万人とあるのは根拠がなく、嘘ではないか。いろんな説があるなら『わからない』と書け」といっていた。要するに20万人は多すぎて、子どもがこれを学ぶと愛国心に影響するということらしい。

教科書を審議している人たちの7割は、現場の先生だという。つまり日教組のメンバーだ。

南京の犠牲者数の公式発表は、保守と革新のつなひきのすえ、20万人で落ち着いているということか。


本書は、中国で映画化されることが決定した。監督は「アヘン戦争」の謝晋氏。公開は2000年春の予定。

ラーベ氏は、おなじくナチス党員で多くのユダヤ人を救ったシンドラーに匹敵するとされ、「中国のシンドラー」と呼ばれる。

スピルバーグの『シンドラーズリスト』の中国版であるが、わたしたち日本人にとって今度は他人ごとではない。