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王 永寛
『酷刑(こくけい)』
徳間書店 1997.06
よく中国は「人治」の国だといわれる。しかし、あの広大な領地を占めるのは、ずっと圧倒的多数の無学な農民だった。そこに秩序をつくり統制するためには、世の中には守らなければならない「法」というものがあり、それを破ると厳罰が待っているのだということを、だれでもわかるように示すことが必要である。
それにもっともふさわしいのは、ドラマチックでむごたらしい刑罰だ。
中国の歴史上、「法」を犯したものへの刑罰は峻烈苛酷をきわめた。
本書はそうした酷刑のオンパレードだ。
この手の本には珍しく図版がないので、本文を読みながら刑を想像するわけだけれど、それでも十分こわい。
たとえば「剥皮・はくひ(皮はぎ)」。
「まず受刑者の首の後方にメスを入れ背骨にそって肛門までまっすぎ切りおろし、そのあと皮膚を両側に切りはがしてゆく。背中と両肘のあいだの皮膚はつながったまま左右にはぐため、まるでコウモリが翼をひろげたような具合になる。こうして皮をはがれた人間は、ほぼ一日にして息をひきとった。もし皮をはいだその場で受刑者が死ぬようなことがあれば、皮はぎ執行人もまた即座に死刑に処せられた」
ほかにも「生きたまま腸をひきずりだす」とか、「両腿の白骨が露出するほどムチ打ちに」など、絵を見るまでもなく十分おそろしい。夢に見るかも知れない。
これを読むと、昔に生きていたら、自分は為政者には絶対服従しただろうなとおもう。まちがっても革命などおこそうなんて気にはならない。失敗して生きたまま皮がはがされて苦しみながら死ぬかも知れないんだから。
そう思うと、孫文ら、中国の革命家たちの勇気がいかに常人をこえたものかがわかる。ペイフー、ペイフーである。
1998年12月5日、香港と中国本土をまたにかけて誘拐や武器輸出を重ねた犯人(張子強ら7人)に、死刑判決が宣告され、即日(!)執行された。
裁判権が香港にあるのか、大陸にあるのかで耳目を集めた事件。
香港には死刑制度がないらしく、香港と大陸の自主権のつなひきのかげで、犯人たちの命が左右されたが、ついに悪運尽きて全員死刑となった。
執行は銃殺刑。広東省内にある雑草生い茂る荒山で、手足をしばられ頭を黒い布で覆われ、背後から射殺されたという。
1994年ごろの報道によれば、中国では毎年千数百件の単位で死刑が執行されているらしい。アメリカから人権をうるさく言われて数を減らしているかも知れないが、10年ぐらい前までは公開処刑をやっていたというし、数年前も地方に行けば処刑が見れたという。上海の人民広場の南京路がわ(国際飯店前あたり)の掲示板にも、以前は死刑の模様が掲示されたときく。やや古いところでは、魯迅の短編「薬」に公開処刑のようすが描かれている。
そもそも、「個人の犯罪はそれを生み出してしまった社会の責任である」とする欧米の考えとちがって、中国では犯罪はその犯人が悪いんだと割り切るから、あっさりしたものだ。
酷刑こそなくなったものの、死刑は当分なくせないだろう。
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