深夜に酒でも飲みながら読めば、

気分はアジアに飛ぶこと間違いなし!

中島らも

『エキゾティカ』

双葉社 1998.3

アジアを舞台にした短編小説が12編。

うち4編が上海を舞台としている。

現地の人間を主人公に、そこに起こるちょっとしたハプニングが、澄んだ叙情性とともに描かれている。

主人公は琵琶弾きや、いかがわしさを求めて「大世界」を訪れる日本人、里弄(北京でいう弄堂。古い集合住宅)住まいのサラリーマン、和平飯店のサックス吹きなど。

これほどディープな上海を、著者はどうやって知ったんだろう。ここに描かれている上海人の生活感は、びっくりするほどリアルだ。数ヶ月の滞在や、ちょっとした想像力でつくれるものではない。

酒でも飲みながらこの本を読めば、気分はもうアジアに飛ぶことまちがいなし。


上海と聞いて、多くの日本人はいまでも、1930年代のいかがわしさと繁栄に輝く都市を連想する。

でも、いまの上海はそうじゃなくって、でも昔に劣らず面白いんだよって、ずっと思ってた。

中国といえばサントリーのコマーシャルで見た「桂林」…

中国人といえばトムとジェリーにでてきた、両袖に手をたがいに差し込むチョビひげ男。かたわらでジャーンって、銅鑼が鳴る。

いまでもそういう古いステレオタイプで中国を見てる人が、すごく多い。

そういう人たちにいいたい!

くさい郷愁やアナクロな先入観で、いまの中国見るのをやめようよって。

たぶん中国に留学してる人で、ぼくみたいに思ってる人は多いと思う。

1996年に井上陽水作詞、奥田民生作曲の「アジアの純真」がヒットしたとき、たしかにキワものっぽさはあったけど、でも、なんかとてもうれしかった。少なくとも「桂林」や「銅鑼」より、ずっといまのアジアだと思った。

この「エキゾティカ」も、そういう意味で、とてもいまのアジアだと思う。それがとてもうれしかった。