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武田雅哉 『清朝絵師 呉友如の事件帖』 作品社 1998 中国の歴史のなかには、とりわけ興味をひく時代というのがいくつかある。変革に揺れる19世紀末もそのひとつ。 清朝の統治が力を失いつつあり国内で動乱が相次いでいたところへ、イギリスが強引に不平等な貿易を要求する。イギリスばかりではない。ロシア、フランス、ドイツ、日本など産業化に成功した諸国がこぞって中国に不平等条約を押しつけ、勝手な帝国主義的競争をやりだす。 その結果、清朝の閉鎖的な朝貢体制はずるずると開放経済に引きずり込まれ、海外の物資が輸入され、それにくっついて、それまでに中国大陸では見たこともない未知の文化や情報が怒濤のように流れ込みはじめる。 これではたまらないと、宦官らエリートが統制をはかろうとするが、戦争にはことごとく負け、いっそう領土を削られていくばかり。あたらしい時代へのジャンプを目前にしながら、さまざまな変化の波をかぶりつづける大スランプ期の中国。 そんな時代に、庶民はどうしていたのだろう。その手がかり(?)となるのが本書『呉友如の事件簿』だ。 本書には、1884年から1893年に毎月3回発行されていた画報『点石斎画報』と『飛影閣画報』から、113のエピソードが紹介されている。 テレビもラジオもなかった時代。庶民にとって世界を知る窓であった「画報」。そこには当時のニュースが満載されている。 あたらしい発明品や国内外の事件、ちまたのゴシップから天災のようすまで、なんでもありだ。 ▼電気は人の魂から作られると聞いた男が、親の位牌を電報局に売り込もうとした。 ▼ロンドン〜パリ間の電話が通じた。 ▼巨大なクジラや亀が出現した。 ▼古代に作られた人工のニワトリが発掘された。呪いで体じゅうに人面が現れた。 ▼てんそくをした美貌の怪盗が出現した。 ▼夫が妻の情事をみつけ、間男ともども斬り殺した。 ▼南京上空にUFOが現れた!、などなど。
南京上空にUFOが現れた! 9月28日夜8時、金陵城(現在の南京)の南に、 スノッブな好奇心を満たす、きわめつけ荒唐無稽のエピソードが続々と登場する。 とはいえ情報がない時代のこと。もっぱら絵師の想像で描かれているから事実かどうかは、まったくあてにならない。 著者武田雅哉氏は北海道大学文学部の助教授らしいが、本当に大学のセンセイかと疑うほどの芸の持ち主。 絵師の飼い猫の口を借りた語りは、すこぶる饒舌で立て板に水。惹きつけられるままに読み進むと、あっという間に巻末の参考文献リストにぶちあたり、あ、ほんとうに学者さんなんだと驚かされる。 |
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