今度は北京が戦場だ!

谷崎 光
たにざき ひかり

『北京大学てなもんや留学記』

文藝春秋 2007.06

前作『中国てなもんや商社』とかわって、本作では、北京が舞台。

この本を読みながら、映画『ダイ・ハード3』ばりの宣伝コピーを思いついた。

世界一、運の悪い奴。今度は北京が戦場だ!!

今回もわれらが主人公は、よせばいいのに逃げもせず、孤軍奮闘の大あばれ。傷つきまくりのはずなのに、へっへっへっと笑ってみせる。

いったいコイツは、どこまでタフなんだぁ〜!ってとこで。


さて…

この本は、中国留学経験者にとっては、にがい思い出をほじくりかえされ、かさぶたをはがされ、塩をすり込まれる苦痛に満ちている。

というのも、中国に留学すると、中国人のいいところもたくさん見るけれど、許せない面もじつにたくさん知ることになる。

この本にあるような、賄賂、ドタキャン、ぼったくり、無責任官僚体質、嫌日感情、不衛生、公共精神の欠如などなど。

だから、留学経験者は、フツーの日本人よりも中国のことが何倍もスキなはずなんだけど、じっさいは何倍もキライにもなる。

そう。スキかキライか、ではなく、何倍もスキで、何倍もキライになる(ひとによっては何百倍)。

しかし、ここまでカネとヒマをかけて中国に関わってしまった以上、いまさらプラマイの収支を「キライ!」で済ますわけにいくかと意地になる気もちもあるから、イヤなことはなんとか忘れ、ちょっと距離を置いたりして、どうにかこうにか「スキ」を保っていたりする。

そこで、この本を読んで、忘れていたイヤ〜なあれこれを思い出させられると、けっこうツライ。


ただ、この本は同時に、勇気をあたえてくれる本でもある。

この著者には、トラブルから目をそらさず、むしろそれをとことん観察し、ネタにして笑い飛ばしてやろうというポジティブさが満ちているからだ。

それは、腹を立てるより笑い飛ばせという、中国人とのつきあい方における極意の伝授でもある。

しかも、この著者のスゴイのは、中国人がわたしたちにとって非常識な行動をとるのもそれなりの理由や背景があるはずだと信じて、ひたむきに相手に問いただし、相手の立場に立って共感的・内在的に理解してみようと奮闘することである。

そのねばり方が、とにかくスゴイ!

まったくブルース・ウィリスなみのタフさだとおもう。

ただ、ちょっと難をいえば、中国人のナショナリズムに触れ、それにつられて「日本人」に目覚めてしまったというところは、ユニークなこの著者にしてはフツーすぎて、ちょっと…だった。

現地でイライラすることが多いとそうなるのは重々わかるし、それがこの著者の芸風であることもわかるんだけど、もうひとアクロバット欲しいような気がした。



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