上海留学の偉大な先輩たちに学ぶ。

西所正道

『「上海東亜同文書院」風雲録』

角川書店、2001.05

1901年から終戦まで、上海にひとつの「ビジネススクール」があった。

合格率は16倍。

東大や海軍兵学校、陸軍士官学校などとならぶ、超エリート校。

それが上海東亜同文書院である。

当時の人の上海への憧れは、いまの若者がニューヨークに対して抱くより大きなものがあったというから、さしずめ、ニューヨーク大学のMBAコースといったところか。

そこでは、簿記や会計学、銀行論、商法などはもちろん、徹底的な中国語のトレーニングが行われていた。

それだけではない。

日中友好の建学の精神にのっとり、中国人との同胞意識が育てられていた。

また、国内では許されないマルクス主義の本なども自由に読むことができた。

そうしたリベラルな精神を持った学校だった。

残念なことに、学生の語学力が軍部に利用されたり、中国各地の経済事情などを綿密に調査するミッションが与えられていたため、スパイ学校だと誤解されたりもした。

しかし、実状はまったく違っていた。

上海東亜同文書院は、在学中の徹底的な語学トレーニングを通して、また中国人との日常的なつきあいを通じて、中国人の立場に立ってものをみる人材を育てていた。当時にしてはめずらしく、日本人の身勝手なナショナリズムを越えて、中国人と真に同胞意識をもつ人々が巣立っていった。

卒業生たちは、戦中だけでなく、むしろ戦後において、その能力をフルに発揮し、日中の架け橋となって活躍した。

ジャーナリストとして、民間貿易のアドバイザーとして、外務官僚として。

本書は、そうした上海東亜同文書院の魅力を知ることができる。

上海に留学している人、したことがある人に、ぜひおすすめです。