劉 傑 『漢奸裁判』 中公新書、2000.07 歴史上の人物の評価というものは、どの立場に立つかによって大いに違ってくる。 日中戦争当時、中国は日本に対して徹底抗戦したのだという立場からいえば、日本軍と結託し日本政府の言いなりになって政権を作った中国人は逆賊、すなわち漢奸である。 日中戦争後、漢奸として起訴された者は3万人にのぼる。そのうち半数が、死刑をふくむなんらかの刑罰を受けた。 しかし、かれらのすべてをほんとうに漢奸と呼べるのであろうか。 かれらの真意が、日本の屈辱的な要求に耐えしたがうことで人民を戦禍から救うことにあったのだとしたら、そういう者をばっさり裏切り者と決めつけてよいのだろうか。 中国人が抗日の歴史を語り伝え自国のナショナリズムを育むため、かれらのようなスケープゴートを必要とするのはわかる。しかし、日本人までそれに便乗してよいのだろうか。 本書の魅力は、そうした善悪二元論の歴史から脱しようとするところにある。 当時の戦況や政治状況のなかで和平交渉のようすを描くことで、漢奸と呼ばれた者たちの苦悩や葛藤を明らかにする。 歴史書に「裏切り者」と書かれてきた者たちのありのままの姿とはなんだったのか。その一端を垣間見させてくれる。 なお、73ページにある写真のキャプションは、誤植。
あかるい色のスーツでふたりならんでいる
左のはじにいるほうが汪兆銘。
中央に座っているのはホンコン。
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