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80年代、中国を変貌させたのは
テレビだった…
ジェームズ・ラル
(田畑光永訳)『テレビが中国を変えた』
岩波書店、1994.02
1966年から10年つづいた文革によって、中国人民は心身ともに疲れきっていた。
そこで、中国を再生するため人民を奮い立たせようと、トウ小平が選んだのは改革開放政策であった。市場メカニズムと競争原理を導入し、自由主義社会のように経済発展を志そうというのだ。
それには、イノベーティブな発想が必要である。企業家精神を育て官僚主義から脱却するには、思想の解放も必要となる。
また、思想の解放は、文革時の思想統制に対するアンチでもある。
トウ小平は「改革開放」によって、しぼんだ中国人民の心に開放精神を吹き込もうとした。
こうして始まった1980年代の中国は、「現代中国でもっとも開放的で政治的エネルギーに満ちていた」時代といわれている*。
1980年代、中国は開放とひきしめの大きなゆれのなかで、新しくさまざまなものごとを導入する。そのひとつがテレビだった。
それまで海外の情報を見ることは犯罪的なこととされていた。しかし、80年代には、そうした規制も大きく緩和された。
たとえば、TVシリーズ「姿三四郎」、山口百恵の「赤い…」シリーズ、高倉健主演「君よ憤怒の河を渉れ」、「おしん」など、日本製ドラマなども見られるようになった。
テレビで海外の情報に接し、また、国内製の体制批判ドラマなども眼にする。さらに、ゆたかな商品のコマーシャルを見る。
そのうち、中国人民は、他国の豊かさや国内の所得格差などを知る。そのため、民衆のなかに不満がうずまいてゆく…
そして、とうとう1989年、天安門事件となって爆発するのだ。
本書では、アメリカのコミュニケーション学者が、その間の中国社会とテレビの関係を、コミュニケーション論と、中国人へのインタビューによるエスノグラフィー、中国に関わる地域研究的な下調べを総合して語っている。
*毛里和子「中国一九八六−八九」日本国際政治学会編『国際政治』第125号、2000.10月、14頁ほか。
これが原著。裏表紙には以下のような賛辞が添えられている。
中国の驚異的な経済成長や、それと同時進行した政治改革の悲劇的な失敗を追いつづけた者たちも、テレビの演じた役割は見逃してしまっていたかもしれない。いまもこの部分は置き去りのままだ。ジェームズ・ラルは、それを指摘するにとどまらず、中国でテレビが果たした役割をもっともわかりやすく語ったものとして、学者、ジャーナリスト、知識人にとりあげられることになろう。これはじつに重要な書だ。
サンフランシスコクロニクル紙・アジア−中国特派員、フランク・ビビアーノ本書は、ある大国へのテレビの普及について、もっとも新しいケーススタディであるだけではない。おそらく、最高のものである。
アムステルダム大学、デニス・マクエール現代中国文化へのテレビの役割について、すばらしい解釈がされている。マクロとミクロレベルのメディア分析を、みごとなスタイルで統合している。
ロンドン大学・ゴールドスミス・カレッジ、デビッド・モーレー
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