新世紀 EVANGELION

 ――PROVIDE――

 第4.5話・Rパート:スキ、ということ
 
第三新東京市立第壱中学校・・・・昼休み。
この時間、多く・・・殆どの生徒は昼食をとり、友人達と談笑する。
しかし、どんなことでも例外は必ずある。
今回はその例外・・・『綾波 レイ』の視点で世界を見てみることにする。
 
 
 
朝。
一日の始まり。
何も変わらない一日の始まり。
「・・・・・・・・・」
鳥の鳴き声。
私とは違うモノの声。
声。
≪綾波≫
・・・・・・・・・・声。
碇君の声。
私の心をくすぐる声。
心?
ヒトにあるモノ。
ヒト?
・・・碇君。
サードチルドレン。
碇司令の息子。
でも、
それだけじゃないヒト。
「・・・・・・・・碇、君」
―――綾波 レイ、起床。

学校。
義務教育。
意味のない場所。
でも、
今は違う気がする。

「あ、綾波。おはよう」
「はよう、綾波」
「おはようございます、綾波さん」
碇君。
夜霧君。
蘭さん。

学校に意味を作ってくれた人達。
きっと、大切な人達。
大切な・・・トモダチ。

昼休み。
意味のない時間。
みんなはお昼ご飯を食べる時間。
私は食べない。
必要、ないから。
でも、
今日から変わることになった。

「あ、あのさ、綾波・・・」
碇君が話しかけてきた。
「何?」
どもっている彼の目を見る。
「綾波って昼は何も食べてないよね?」
「えぇ・・・」
何故、知っているの?
「じゃ、じゃあさ、これ、作ってきたんだけど・・・食べてくれるかな?」
目の前に差し出された、四角の箱。
これは・・・何?
「えっと・・・駄目かな?」
碇君の表情が暗くなってくる。
なんか、嫌。
「綾波、シンジは昼飯を食べてないお前に弁当を作ってきたんだ。
何か、言うことがあるだろ?」
夜霧君・・・
お弁当、そう・・
私のために?
脈拍が高くなってきてる。
でも、
嫌じゃない。
「あ・・・ありがとう」
感謝のコトバ。
最近、使うようになったコトバ。
言うと、ココロが暖かくなる。
「う、ううん!一緒に食べてもいい?」
碇君の顔が明るくなった。
また、脈拍が高くなってきてる。
何か、
何故か、
暖かくなってくる。
心地、いい・・
そう、碇君の笑顔は心地いい、暖かくしてくれるモノ。
「構わないわ」
だから、そう言った。
「じゃ、俺はお邪魔だろうし・・・セラフ、屋上にでも行くぞ」
夜霧君はそう言った。
私と一緒に食べるのが嫌なのだろうか?
わからない。
でも、
嫌な気分。
「さ、サトル・・・」
碇君が困った顔をしている。
「待って・・」
碇君が困った顔をするのは、嫌。
「ん?」
「貴方達も、一緒に・・」
「ん〜・・わかった。じゃ、あと数人連れて屋上で食べるか。
先に行っててくれ」
「サト・・「わかったわ」
また碇君が困った顔をしそうになった。
だから、その前に手をとり、引っ張っていくことにする。
「あ、綾波ぃ・・・」
教室から何か叫び声が聞こえる。
だけど、無視することにする。
何故か、
今は、
こうしていたいから。

屋上についた。
微風が私の髪を梳く。
「綾波・・・その、手・・・」
碇君の手。
脈拍が高くなっている。
少し汗を掻いている。
私と同じ。
何故か、
ずっと、
こうしていたい。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・わかったわ」
でも、困った顔をされるのは嫌。
だから、手を離した。
「う〜ん・・・あ、あそこでいいかな?」
碇君が日陰になっている場所を指した。
「構わないわ」
私がそう言うと、碇君はその場所に向かって歩き出した。
私もついていく。
「あ、と・・・ちょっと待って」
碇君はそう言ってハンカチを広げて敷いた。
これは、何?
「何?」
「あ、スカート、汚れるかもしれないだろ?この上に座ってよ」
「・・・わかったわ」
碇君のコトバは不思議。
意味のないことのように思える。
でも、
逆らいたくない。
だから、私は言われたとおりに座った。

「お、なんだ・・・先に食べてよかったんだぞ?」
夜霧君が四人連れてきた。
蘭さんと・・
ジャージ・・・・・名前、わからない。
メガネ・・・・・・名前、わからない。
委員長・・・・・・名前、洞木さん。多分、いい人。
「あ、綾波と碇が・・」
「こ、これはスクープだぞ!」
何か言ってる。
怖い?
そう、これが恐怖なのね・・・
「綾波さん、一緒にいい?」
洞木さんが確認をとってきた。
「碇君達が構わないなら、いいわ」
私も誘われたから。
そう言うと、洞木さんが嬉しそうに笑って座ろうとした。
ダメ・・・
「ダメ・・・待って」
怪訝そうな顔を浮かべる洞木さん。
でも、ダメ・・・
スカートが汚れるわ。
だから、ハンカチを敷いた。
碇君が私にしてくれたように。
「座って・・・」
「え、えぇ・・・」
驚いている。
何故?

「にしても綾波がなぁ〜」
「驚くべき事態だったね〜・・・」
食後、名前の知らないジャージとメガネが何か言っている。
「・・・・・・・誰?」
そろそろ疑問を聞いてみてもいいと思ったから、聞いてみた。
・・・・二人共固まってる。
「あ、綾波さん・・・・」
洞木さんが困っている。
私の、所為?
「綾波さん、こちらが『ジャージ 鈴原』、こちらが『メガネ 相田』です」
蘭さんが私に教えてくれた。
「そう・・・」
ハーフ・・・?
クォーター・・・?
純日本人に見えるのに。
「ちょ・・・何言っとんのや!蘭!?」
「そ、そうだ!」
ジャージ君とメガネ君が怒っている。
何故?
「マスターがそういう名だと・・・」
マスター・・夜霧君のコト。
蘭さんだけ、そう呼ぶ。
何故?
主人、使い手、修士・・・・・?
そう、夜霧君は蘭さんのご主人様なのね・・・
「ククククク・・・冗談だったんだがな〜」
夜霧君が笑っている。
何か楽しいことがあったの?
「「サトル!貴様は〜!」」
ジャージ君とメガネ君がもっと怒った。
碇君が困った顔をしている。
何故?
・・そう、二人が原因なのね・・・
「ジャージ君、メガネ君・・・怒らないで。碇君が困っているわ・・・」
そう言うとみんな固まってしまった。
何故・・・・・?

放課後。
私は碇君と一緒に歩いている。
≪シンジの飯、食わせてもらいな≫
そう、夜霧君が言ったから。
ここは商店街。
私には意味のないトコロ。
「綾波は何か好きな食べ物は?」
好き・・・・?
「・・・・・・・わからない」
「う〜ん・・・じゃあ、嫌いなモノは?」
嫌いなモノ・・・・血。
血の味がするモノ。
・・・・・・・・・・・・肉。
「肉・・・・」
「そうなんだ・・・・・・よし、頑張って作ってみるよ」
碇君は微笑みかけてくれた。
この気持ちは・・・・・・・何?
わからない。

でも、

多分、

きっと、

これが、

これが・・・・『好き』ということ。

私は・・・碇君の笑顔が好き。

夜。
碇君達の家で夕ご飯をご馳走になった、その帰り道。
隣には、碇君。
「あのさ・・・今日、楽しかった」
「そう・・」
楽しい?わからない・・・けど。
「・・・・・・多分、私も楽しかった・・・・」
碇君が驚いた顔で私を見ている。
でも、すぐに微笑んでくれた。
脈拍が・・
心臓?
身体の中心が痛い・・・
でも、
心地いい・・・
何故・・・?

私の部屋。
今まで、碇君がいた部屋。
今は・・・・・・・・・・・・・・いない。
何?
ココロが痛い・・・
・・・ココロ?
私に、あるの・・・・・・?
「碇、君・・・・・・」
帰り道の時とは違う。
嫌・・・・
嫌・・・・・・・・・・・・
嫌・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「嫌・・・・・・・・・・・・・・・・・・碇君・・・・・・」
これはきっと、私のココロ。
『寂しい』という気持ち。
昨日と同じなのに、
昨日とは違う気持ち。
わからない、
わからない・・・
わからな、い・・・
―――綾波 レイ、就寝。

いつもと違う一日。
それは、少年が湖面に投げた小さな石。
その波は・・・
確実に、
彼女に影響する。
そして、
それは、セカイにも。
それがどのような結果になるかは、わからない。
しかし、
今は、
戦士達(チルドレン)に一時の休息を―――


To be continued…?


後書き――――

 ども、不星視です。
この話は・・・まぁ、本編には直接関わりません。でも、重要な話なので・・・・・
実際、『綾波 レイ』という少女は、感情を「知識(し)っている」けど、「わからない」のでしょう。感情がないのではなく。
まだ感情の成長度合いは幼稚園並なので、『嫉妬』という感情は強くありません。
きっと、そのうち、強くなるでしょうが・・・・
このパターンで外伝風味を書くかもしれません。
では、また。


メニューへ      前へ     次へ