夜のヒコーキ

飛行機は逆風が無いと飛べません。
臆病を知るところから、勇気は始まるのでしょうか。


 この歌詞を始めてみせてもらった瞬間、

僕の中にメラメラとビリビリとイメージが音をたてて膨らんでいくような感じがしました。

そう、飛行機が逆風を受けて高く高く飛び立っていくその勇姿。

それは君の勇気だったんだ。

そんな力強くも、ファンタジックな詩に僕の心はまず舞い上がってしまったのです。

ライブでミュージシャンたちとセッションするのもエキサイティングなのですが、

もちろん歌を作る時も言葉とセッション、ビリビリ闘争心が燃えるのです。

そんな時僕は、他の事がなんにも見えなくなるほど、 何も聞こえなくなるほど不審者チックになるのです。

そしてそのイメージかしっかりと頭の中で音になった時ピアノの前に無心で座るのです。

 闇に飛び立つその一つの光。それは音の何も無いところからアカペラで始まる。

そして星がまたたき出す。そして力強く逆風をバネにする。

どの楽器が星の瞬きなのか。どの楽器が逆風なのか。そしてその世界をどう包むように歌うべきなのか。

そんな事を考えていると日々はあっという間に過ぎていきます。

 3拍子で始まったこの歌は2番になってリズムが入ってくると、不思議と4拍子に聴こえて来ます。

これもなんともリズムを入れてみた時の偶発性ですが、3拍子と4拍子が同時に存在する、

左手で三角形を描きながら右手で4角形を描くよな不思議な感じになりました。

いつもつくりながら新たな発見をする。そんな瞬間にめぐり会えるから楽しくて先がつくりたくなるんです。

  そうそうこのピアノをスタジオでレコーディングしていたあの日。

曲が終わりに差しかかったその時。

マイクやピアノやスタジオのブース自体が右へ左へ大きく大きく揺れ始めたのでした。

訳も分からず止まるわけにもいかず、途中であっ、これって地震?

とか思いながら show must go on だとか思いながら、

あ、もしかしてピアノを弾きながら死ぬのかも、 ま、それはそれで幸せなのかも、

とか思いながら最後まで完奏した頃、ようやく揺れはおさまっていました。

2005年7月23日 午後4時35分頃、震度5強の地震でした。

さすがにかなり揺れたため、マイクもノイズがのってそのテイクは使えませんでしたが、

海の上のピアニストのあのシーンのようでした。

今でもこの歌を弾き語る時、横に揺れてるような気がします。(嘘です)